カップルでの初登校
「まず、私から質問してもいい?」
「いいよ。何でも聞いてくれ。」
俺と穂波は、この5年間にあった出来事をお互い話すため、俺の部屋で夜会をすることになった。今、俺は穂波のベッドに座っている。もちろん、隣には穂波がいる。途中で変なことをしないか心配だ。どうにか耐えといてくれよ、未来の自分。
「じゃあまず、かずくんって彼女いた?」
「えっ。いるわけないだろ。俺、穂波に告ってたんだし。お前以外のやつのことを好きになるわけがないだろ。」
「ふ、不意打ちはずるいよ~」
穂波が俺の答えを聞いてもじもじしている。俺、そんなに変なこと言ったっけ?
「他にあるか?」
「うーんと、そうだ!中学校の時のかずくんってどんな感じだったの?」
「どんな感じも何も普通の中学生だったな。まあ、ずっとボーっとしてたな。」
「なんで?」
「いわせるなよ。俺が考えている人なんて決まってるだろ。」
「えへへ。」
穂波の顔がだらしなくなってる。
「今度は俺からいいか?」
「何が聞きたいの?」
「学校のやつにお前"氷の女王"って言われてたよな。何があったんだ?いやなら言わなくていいぞ。」
「うーん。大したことないよ。告白してきた人、全員断ってたからじゃない?」
「なるほど。」
俺のために断ってくれてたのか?俺の彼女、かわいい。抱きしめたい、って何考えてんだ、俺。
「それと、私もかずくんのこと考えてて話とかそっけなくなってたかも?」
「うれしい。」
「かずくん。顔、赤くなってるよ。」
「うるさいやい。」
可愛い彼女が俺のことばっかり考えていてくれたなんて嬉しいに決まってるだろ。
「次の質問だが、大分イメージ変わったよね。なんか、小学生の時よりもその、可愛くなったよね。」
「可愛いって。かずくん、ほめすぎだよ。」
昔の穂波はもっと男っぽかった。髪は短髪で、小さかった。服もTシャツに短パンで初めて会った時には男だと思っていた。
「うーんとね。私、かずくんに愛想つかさせないようにって思って。もっと可愛くなろうって思って。私、可愛くなったかな?」
「可愛いに決まってるだろ。俺のほうが穂波に釣り合うか心配だ。」
ほんとにそう思うよな。俺なんかでいいのか?もっといい人がいそうなもんだが。
「私はかずくんに一途だぞっ。かずくん以外の人を好きになるなんてありえないよ。」
「う、うれしい。」
「頬が緩んでるよ、かずくん。」
「仕方ないだろ、そんなこと言われたんだから。」
「おーい。お2人とも早く寝ろよ。」
下から穂波の父親が呼びかける。
「じゃあ、また明日。」
俺は穂波の部屋の隣の俺の部屋に入った。この壁の向こうに穂波がいるって新鮮だな。それにしてもあのクソガキっぽかった穂波がこんな美少女になってるとはな。5年って長いんだな。俺は穂波と再会した喜びのあまり、よく寝付けなかった。
▲
「おはよう、かずくん。」
「んっ。」
俺が目を開けると目の前には美少女がいた。
「おはよう、穂波。」
そうだ、俺は穂波の家に住むことになったんだっけ。
「朝ごはん出来てるって。」
「りょ。」
ダイニングに行くと朝食が作られていた。メニューは和食だ。
「すげー。ここ最近、ずっと朝食パンだけだったからな。」
俺たちは朝食をあっという間に食べ終えて出発する。
「「いってきまーす。」」
「いってらっしゃい。」
俺の母親と穂波の父親が見送る。
「かずくん。手、つなごっか。」
「いいのか?その、学校とか。」
「いいんじゃない?私たちのラブラブっぷりを見せつけてやろうぜ。」
「ははっ。それもいいかもな。俺も5年分の我慢がたまってるし。」
俺と穂波は恋人つなぎで学校に向かった。
教室に入ると想像していた通り、俺と穂波の周りに人が集まってきた。穂波の噂は思ったよりも有名だったようだ。1時間目の授業が始まるまで15分ほど質問漬けにされた。まあ、氷の女王って言われてたやつが知らない男子と恋人つなぎをしてきたからな。誰でも気になるよな。
1時間目の教師が入ってきたことにより、俺たちはようやく解放された。
「ふ~。」
「大変だったね。」
俺たちがため息をついていると前の席の人が声をかけてきた。
「二人とも大変だったようだね。」
「えーと、どちら様?」
「ボクは春本陽菜。一応、隣の席の銀司の彼女をやらせてもらっている。ボクも初めて銀司と一緒に登校したとき、同じように質問攻めにされたよ。」
「お前らもカップルだったのか。道理でイチャイチャしてるわけだ。」
「それほどか?」
「うん。なかなかだったぞ。」
こいつら、俺がもみくちゃにされてる時も言葉にするのもおこがましいほどいちゃついていた。
「ふーん。かずくんもそういうことしてほしいんだ。」
穂波がいじってくる。反撃してやるか。
「じゃあまず、キスとかしてみるか。」
「えっ!」
「おいそこー。いちゃついてないで静かにしろー。」
穂波が突然大きい声を出したせいでクラスメイトからの視線が痛い。穂波は顔を真っ赤にしてうつむいた。
▲
「かずくん!一緒にお昼食べよ!」
ようやく4時間が終わり、待ち望んだ昼休みがやってきた。
「いいぞ。」
俺は弁当を食べようとする。すると、穂波がジト目でこちらを見てくる。
「ほら。」
そういって穂波は前を指す。その先では、陽菜と銀司が弁当を食べさせあっている。
「なるほど。あれ、したいのか。」
俺は弁当に入っている卵焼きをつまんで穂波の前に出す。
「はい、あーん。」
「あむっ。」
穂波は豪快に卵焼きを食べて顔をほころばせる。
「かわいい…。」
「えっ。」
「いや。穂波の笑顔がかわいいなって。」
「もうっ。今度は私の番ね。」
今度は穂波が卵焼きを差し出してくる。これを食べないといけないのか。周りの視線が気になる。もうそんなこと、いってられないか。俺は覚悟を決め、それを食べた。
「うまい。」
「そっかー。まあ、私が作ったってわけではないけどね。」
「穂波と食べてるからじゃないか。」
「ずるい…。」
穂波は今日何度目かわからないが顔を真っ赤にした。俺ってそんなに変なこと言ってるかな?
数回食べさせあったが周りからの目線に耐えられず、
「後はそれぞれで食べるか。」
と、提案した。
「そうだね。これ以上はまわりが。」
明日には視線で殺されてしまうのではないか。俺は残りの弁当を食べ進めた。俺が穂波に食べさせてやった箸で今、食べてるってことは…。
「あれ?これって間接キスじゃね?」
俺のつぶやきが聞こえたのか穂波がフリーズしている。
「穂波ー。穂波さーん。」
「はっ。私、かずくんと…。」
「まあ、気にすんな。これでもカップルなんだし。」
昨日から俺たちはカップルになったんだ。間接キスぐらいで何を騒いでいるんだ。
「そっかー。カップルかー。」
「そうだぞ。そのうち直接もしたいけどな。」
「ええっ!。」
穂波の叫び声と同時に昼休みの終わりのチャイムがなった。
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