5年前の告白と未練
春、桜が満開だったある日。
「かずくん。いっちゃうの?」
彼女は泣いている。
「うん。俺だけ残るわけにもいかないからな。」
俺は笑って言う。
「・・・」
「・・・」
しばし無言が続く。
「なあ、ちょっと付き合ってくれないか。」
俺がそう口を開く。
「いいよ。」
「ここは?」
そこはある神社の境内だった。
「ここはさ、俺と穂波が初めて会った場所だよ。」
「あの時、いじめられた私をさっそうと現れて助けてくれたもんね。かっこよかったな。」
「そういわれると照れるな。」
お互い顔を真っ赤にしてうつむく。
「なあ。」
「なあに?かずくん。」
「俺、お前のことが好きだ。初めて会った時からずっと。ひとめぼれだったな。そのあとずっと穂波といて、内面も好きになった。その、穂波の全部が好きだ。」
「かずくんっ!いったい何を!」
「まあ、返事は今度会った時に聞かせてくれ。じゃあな。」
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「またこの夢か。あいつが俺のことを覚えてるわけないしな。もう5年たってるし。まあ、未練があるからあの町に戻ることになるんだけどな。」
そう、俺はあいつに会いたいがためだけにこの町の高校に入ったのだ。中学校の教師にはもっと偏差値の高い高校を進められた。だがあいつの返事を聞きたい。聞いて終わりにしたい。その思いが俺の中をうずめいている。なかなかあきらめるってむずいよな。玉砕したわけでももないんだし。
「清和~。起きなさい。早くしないと入学式に間に合わないわよ。」
下から母さんの声がする。
「わかってるよ。」
俺はそういいながら階段を下りる。
俺が朝食のパンを食っていると
「清和。入学式いけないけどごめんね。あなたの引っ越しを手伝わないといけないの。」
「全然来なくていいぞ。っていうか来るな。あと、段ボールの中絶対覗くなよ。」
「わかってるわよ。覗けってことね。」
「ちげーわ。あの芸人の真似じゃねえ。んで、俺はどこに引っ越すんだ?」
「ないしょ。楽しみにしといてね。入学式が終わった後住所、送っとくわね。」
「へいへい。じゃ、行ってきます。」
清和が家から出てった後、母はつぶやく。
「あの子がこれを知ったときには、どんな顔をすることか。今から楽しみだわ。
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