空が足りない
太陽の光が地面を照らし、わずかに残った水溜まりに蒼い空が映る真夏のある日、君と僕は河川敷のまだしっとりと湿っている草の斜面で寝転がっていた。
「どうして雲は落ちてこないんだろうね。」
なんて君はつぶやいた。
どう説明したものか、と悩んでいると。
「あぁ、空に溶け込めたらいいのに。」
そう言った君の瞳には蒼い空が映っていて、まるで空が降りてきたみたいだった。
今、君の瞳には空がある。そう伝えると君は穏やかに笑った。
「そっか、そりゃあ良かった。」
そんなことを語り合った君はもう隣には居ない。
空と一つになった君。
私はまたあの場所で空を見上げる。蒼く澄んだ空に君を探しに。私の瞳に君は今いるのだろうか。空を感じたい、そう思って、願うほど。
嗚呼、空が足りない。