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9話目

 翌日。光差す希望の朝、と見せかけて学校や仕事が地獄の者にとっては地獄の一日の始まりと絶望の到来を告げる朝。

 光太郎は陰鬱な表情で過ごしていた。前日に追い払った不良とは学校でまた会うのだ。その時に難癖を付けられたらどうしようかと考えていた。学校にアナエルを連れて行くわけにも行かないので、自力でどうするしかない。

 光太郎は仕方なく学校へ行く準備を進めていた。自室の学習机から教科書を取り出して、時間割と照らし合わせて並べてててゆく。

と、押入れのふすまが開いた。


「やぁ、おはよう。光太郎」


 眠たそうな目で押入れから出てくるのはアナエルだった。


「某猫型ロボットと同じところでよく寝れるんだな」

「ここが空いていたものでね☆ 中は意外と快適だよ。たまに空気の入れ替えをすればよいくらいだ」


 アナエルが背伸びをする。


「昨日アナエルが居候すると決まった時には家には空き部屋ないから、強引に僕と同じ部屋で寝泊りするといった時は驚いたものだけれど」

「だから押入れに寝泊りする事を申し出たのさ☆ ところで君はこれからどこへ行くのさ?」

「どこって学校に決まっているじゃないか」


 光太郎は鞄に教科書を詰め込んでいる。光太郎は出発する前に準備する派の人間だった。前夜のうちにやっておいたほうが、忘れ物などはなさそうなものであるが。


「私もついてっていいかな?」

「ダメに決まっているだろう!」


 光太郎はきっぱりと断った。


「別に減るものじゃないし、ついて行って見ていてもいいだろうにねぇ」

「学校に部外者を入れられるか。それにお前みたいな格好の奴を連れ歩けるわけないだろう!」


 頭に光輪をつけて背中に羽を生やした金髪碧眼の女の子を、連れて歩いているところを見られるだけでも問題だ。


「あぁ、姿が見える事が問題なら、私は姿を消す事ができるよ。霊体になって光太郎を守護するんだ」


 アナエルの姿がスーッと消えてゆく。


「あっ、姿が見えなくなった」

『これなら問題ないだろう☆』

「なんだか声だけするんだけれど」


 光太郎がきょろきょろと周りを見る。だが声の場所が特定できない。


『念話だよ。心に直接話しかけている。光太郎も外では念話で私と会話するんだ』

『こうかな・・・・・・これって僕の考えている事がお前に筒抜けって事?』

『その通り。今まさに私と君は以心伝心、一心同体のようなもの』

『それって最悪だな!? 僕には心の中の平穏さえも許されないというのか!』

『人の心の中については神様もお見通しだよ。だから気にしなさんな☆』

『ところで透明になったのは良いんだけれど、実際にはどこにいるのさ。ドアとか勝手に開いたりしたらポルターガイスト現象かと思われるだろう』

『透明な霊体になっている時は物質をすり抜けられるから大丈夫。今は君にとり憑いている状態だ』

『悪霊にとり憑かれているような気分だよ・・・・・・』


 光太郎は身震いした。自分の体内にアナエルがいるような気がして薄気味悪いのだ。


『私がいる間は悪霊なんかにはとり憑かれないから安心して☆ ここはうちのシマなんじゃ。誰に断って商売しとんじゃワレェってね★』

『やくざかなにかかよ!?』

『あっ、言葉にすると呼び寄せちゃうぞ★』

『口にはしていないヨ。心の中で思っただけさ』

『あっ、大変な未来が訪れる可能性があることがわかった。光太郎、やくざ屋さんの本拠地にカチコミする未来がある』

「やくざの本拠地に突撃するとか、そんなわけないだろう!?」


 光太郎は思わず思考が声になった。


『あーあ、口にしてしまいましたね★』

『今のはアナエルのせいだろう! 僕がなにをどうすれば、やくざにケンカ売るっていうんだよ!』

『あまぃなぁ、光太郎は。実に甘い。砂糖入れの瓶にコーヒーを注いで呑むくらいに甘い』

『糖尿病まっしぐらな飲み物だなおい』

『ともかく、人間に不可能はないって話さね。何が起きるかわからないとも言う』

『ありえない事はありえない。それだけだろ』

『予測しない事は起こるものさ。たとえば、今君は学校に遅刻しそうになっている事とか、予測していたかな?』

「あーっ!」


 光太郎は時計を見た。明らかにいつもの出発時刻よりも時間が過ぎている。とにかく手当たり次第に鞄に教科書を突っ込んで部屋を飛び出すのであった。


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