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5話目

「そんなファンタジーみたいな事があるのか!?」


 光太郎はようやく正しい驚き方をした。正常な反応だろう。それまでの常識を覆されて、はいそうですかとすぐに受け入れられる人間などそうそういないだろう。


「ファンタジーは無いかなぁ。もっと宗教的に考えてくれるのかと思った。まぁ、この国は宗教には緩い様だから、私もゆるーくやっていきますけどねー★」


 アナエルは背の羽を軽く羽ばたかせた。


「天使って言われても、僕は無宗教だぞ!」

「そこはご安心ください。昨今の世界情勢を見まして、宗教活動に熱心な者に加護を与えるだけでなく、ふさわしいと思った者にも加護を与えましょうと天界の方針が変わりましたんですねぇ。そんなわけで、今日から私は君の守護天使☆」


 アナエルは指をびしっと光太郎に向けてポーズをとった。


「守護天使って・・・・・・なんかスピリチュアルなあれか・・・・・・」

「スピリチュアル的なあれですが、もっと明確に守護する奴です! ドウゾ後期待ください☆」


 光太郎は唖然としている。


「そんな天使が僕に何の用なのさ」

「端的に申しますと、君の人生をケアする為に現れました。任せてください。二十四時間三百六十五日無給でサポート☆」

「ちょっと待った。話す言葉でわかるのもあれだけれど、無給は流石にひどいんじゃない?」

「あれっ、間違えた。間違いでもないんだけれど。無休でサポートだった★」


 アナエルはてへっと軽く笑った。


「天使の労働環境にとやかく言うのもなんだけれど、君は僕のことにかまけるよりも、自分の人生についてをもっと考えた方がいいと思うな」

「有給って言葉の響きもいいよね。悠久の時をあなたとともに、とか言ってみたり☆」

「結局悠久とはならずに無窮ってオチだろ」

「元から無給だからね・・・・・・」


 アナエルが切ない表情でたそがれる。


「無償労働とか、君はまず人の事より自分の事だろう」

「私のほうが人生相談必要!? でもご安心ください。これはボランティアみたいなものなんですよ。私は一向に構いません★」


 アナエルは胸を張ってそう答えた。


「・・・・・・とか言って、実は神様に罰を受けてやらざるを得ないとか言わないよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何とか言ってよ!」

「そういう天使もいるけどね。私は違います。人の善き隣人となるために、地上に自ら来たんですよ。愛と平和をこの世にもたらすのが私の使命☆」


 アナエルは瞳を輝かせながら力説する。


「この世に神がいるならば、どうして世の中この有様なのさ」

「うっ!」


 光太郎の心無い言葉がアナエルにクリティカルヒットした。


「暴力、悪徳、不正が蔓延り、まともな人はわりを食ってばかりじゃないか!」

「そんな世を正すべく私達がいるのでした★ 神様も頑張っているんだよ? 本当に世の静謐を祈っていらっしゃる! 私も微力ながら御手伝いさせてもらっているのさ☆ しばらく書を封印してサボっていたけれど・・・・・・」


 もごもごと口ごもるアナエルを、光太郎はしらけた目で見た。


「実はすごいようで全然すごくない奴だろ、お前」

「どきっ!」


 アナエルが驚いた表情で自分の胸を抑えた。


「なんだよ。図星かよ・・・・・・期待して損した。神様や天使がいても世の中がこんなのなら余計に夢も希望もないじゃないか」

「聞いてくださいよー。それもこれも邪神とか悪魔とか、そういう輩のせいなんですよ! そんな奴らを成敗するべく私達は戦っているのです☆」


 光太郎があからさまに嫌そうな表情をした。


「そんな話を聞くと余計にこの世に希望が持てなくなってきた・・・・・・。それにしても君は善悪二次元論でこれまでやってきたわけ?」

「そうです。神様絶対正義。歯向かう者は悪。悪は許すまじ。討つべし、討つべし!」


 光太郎があーあと呆れて両手を広げた。


「君の世界観は単純だなぁ・・・・・・。神様の言うとおりにやっていれば大丈夫とか思って気楽にやってきたんじゃない?」

「うっ! するどい! なぜ見てきたように語れるのかしら!?」

「なんとなーくだよ。愛の平和だの謳うようなのなんて、元から平穏な世界に生きてきた奴に決まっているだろ」

「なんだろう。すごく存在を否定されてばかりな気がする。さては君、友達いないな?」

「うっ!? そんなものいなくたって困らないだろう!?」


 今度はアナエルの言葉が光太郎にクリティカルヒットした。


「だめだぞー。人の事を否定してばかりじゃ、そんなことじゃあ人に認められるような人間にはなれないぞ★」


 アナエルが片目を瞑って人差し指を立てた。


「そんな者になってどうするのさ!」

「陽の当たる場所を生きたまえ。堂々と胸を張って生きられる道を選びたまえ」


 アナエルはまじめな表情でそう語った。


「急にまともな事を言い始めちゃって! なんなんだよ! ラノベで小難しい話をするなよ!」

「残念! これは君の成長物語なんだから、これからたくさん試練が降ってくるぞ★ 予言しとく」

「うわっ、そんなはた迷惑な! 頼むから帰って! 主人公的にお前みたいなヒロインはいやだし」

「正ヒロインの座は私のもの☆ なみいる強豪もとい競合は始末しますから(宣言)」

「待った。メタな話になっているけれど、これってギャグ?」

「いいえ、正統なジュブナイル小説です☆」

「どこがだよ!?」

「大丈夫。作者が最後にそれっぽく終わらせるので」

「最後だけそれっぽいだけじゃないだろうな?」

「ぎくっ!」

「なんだよ! ダメダメじゃないか!」

「ハードル上げる様な真似はこれくらいにして、そろそろ話を進めますか☆」

「あっ、話をそらした」

「本題。君の人生をすばらしいものにする為に私は訪れた。さぁ、主の道を歩むべし。今日からあなたはご主人様」

「だからなぜそうなる!」


 光太郎が胡散臭そうな物を見る目でアナエルを見る。アナエルはそんな光太郎を見てほほ笑んだ。


「それが私の設定だからです☆ じゃなかった。私は君の人生をサポートし、フォローし、導く為に現れたんだから当然でしょう」

「そんなこといって、実は後から魂を要求するとかじゃないだろうな!?」


 光太郎は手を振りぬいてアナエルと距離をとった。


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