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48話目

「流石は上級魔王! 神の拳を殴り返すとは!」


 ザフキエルが驚愕している。力技で自分の技を破られるような事は、ここ1万年くらいは久しかったのだ。


「神の力を頼りやがって、なまっちょろいんだよ、お前ら天使はなぁ!」


 アスモダイの爆発的跳躍。ザフキエルとの距離が一気に縮まる!


「なんとっ!」


 ザフキエルは咄嗟にガルガリンの光輪を出そうとする。


「遅い、遅いねぇ! オラオラオラオラァ!」


 アスモダイが突きのラッシュを放つ! 拳がザフキエルに叩き込まれていく。


「ぐっ、がはぁっ!」


 ザフキエルが吹き飛ばされた。高速道路下の積み上げられている資材に突っ込み、ガラガラと崩れてくる資材の下敷きになったようだ。


「あわわわわわわわ★」


 アナエルがうろたえている。アナエルとアスモダイの間の距離は、もう弓でどうのこうのという間合いではなかった。


「ガキだからといって前は逃がしたが、今日はそうはいかねぇぞ?」


 アスモダイの拳がアナエルを捉えた。


「きゃっ★」


 胸部に強烈な突きを喰らい、アナエルは吹き飛ばされた。コンクリートの壁に叩きつけられ、アナエルはずるりと崩れ落ちた。

 立っている天使はいない。光太郎とゆえは追い詰められた表情で立ちすくむ。

 ご機嫌な表情で拍手をする冥堂寺。


「すばらしい。すばらしい力だよ、アスモダイ! こんな事ならもっと早くに君と契約をしておけばよかった!」


 アスモダイは地面につばを吐いた。


「『お前の力が知りたい。地球の裏側にいる知人から本を受け取ってきて欲しい』とか言うから、ひとっ飛び行っている間に姿を暗ましていたお前が悪いんだろう。まぁいい、お前の魂は俺のものとなる。さぁ、どんな事が御望みだ?」


 何かの昔話であるような展開の話であったが、それで一度はアスモダイも出し抜かれていたようだ。しかし、今は悪魔が誘惑する。人間の願望を叶えるようにささやく。


「そうだなぁ。あの天使達も使役したい。あのガキどもの持っている預言書を取り上げてくれるかな?」


 冥堂寺は光太郎達を見るなり舌なめずりをした。


「おっと、待ちな。預言書は天使に選ばれた者にしか使えない。天使達も自分達が認めた者にしか仕えない。魔術書の所持者となったお前には決して従わないだろう。あいつらがやっているように、預言書は焚書にするのが一番だ」

「おやおやまぁまぁ。それは残念だ。ならば破棄してしまおう。なぁ、光太郎君達。おとなしく預言書を渡してもらおうか。そうすれば君達は無事帰してあげよう!」


 冥堂寺が優しそうな声でささやきかける。


「なんだよ、お前。預言書なんざ力づくで奪えばすぐじゃねえか?」


 アスモダイが拍子抜けした表情で両手を広げた。


「わかっていませんね。彼らは天使達に見初められて選ばれた。そんな彼らに天使達を自ら捨てさせるのです。人間と天使の両方の意志を心を、砕きへし折ってやらねば私の気がおさまらない」


 冥堂寺はにんまりと悪魔的な笑みを浮かべた。


「ほぅ、確かにお前はわかっているね。お前は間違いなく魔術書の所有者にふさわしい」

「さぁ、君達。どうするね?」


 どうすると尋ねながら、有無を言わせぬ選択を迫る冥堂寺。


「あなたなんかに従うわけがないでしょう!」


 ゆえは屹然とした態度で歯向かった。

 光太郎は・・・・・・迷っていた。元はといえばこれは自分が巻き込まれた側の問題だ。預言書も手放してしまえば許されるかもしれない・・・・・・。


「光太郎君。どうだね。力こそが正義なんだよ。君も預言書なんて捨てて、僕の魔術書の写本を持ちなよ。そっちには何の制約もない。自由に振るえる力なんだ! 君と私とで理想的な社会をつくろうではないか!」


 光太郎は冥堂寺の言葉に心は動かなかった。何も響かない。空虚な言葉だった。そればかりか、自分の嫌いな人間と同じ何かを感じさせた。


「僕は、あなたには屈さない。力は力。正しい意志は正しい意志。正しさを無くした力なんかに僕は屈しない!」


 光太郎は冥堂寺もいじめっ子達と同類だと思った。だから引き下がらなかった。

 弱者の反抗。弱き者の強き意志に光は宿る。光太郎の意思が光となって預言書へと流れ込む。その流れ込む力は天使であるアナエルへと流れ込んだ。


「むっ、力の流れが天使へと注いでいる!」


 アスモダイは力の流れに気が付きアナエルが倒れた方角をみると、ぼろぼろになったアナエルが立ち上がるところだった。


「愛と平和と勇気の使者、アナエル。復活☆ 心の光が天の光。私の光は心の光。喰らえ、弱者の一撃。必殺のルミナス・アロー☆」


 アナエルの光弓がいつも以上の光を出して輝き始める。


「ぐっ、この光はまずい!」


 アスモダイが跳躍し、アナエルへと襲い掛かろうとする。


「シュート☆」



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