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46話目

「空耶さんもずっと一人きりで生きてきたんじゃないんですか? 誰からも理解されず、だから・・・・・・」

「はっはっは! 面白い事を言うもんだ。誰からも理解されない? 天才とはそういうものではないのかね。凡人の理解を得ようとしてどうするんだ。君もつまらない価値観を持ち合わせているものだね。魁光太郎君」


 冥堂寺が度々見せていた高圧的な態度を臆面もなく見せる。光太郎は相手の上っ面ばかりを見ていたから冥堂寺の本質的な部分に気がつけなかったのだ。ただ、同好の士であるというだけで、同じように苛められていたと言うだけで共感し、相手を理解した気になっていた。ただ、自己投影していただけだったのだ。光太郎が冥堂寺空耶に向ける感情の正体は自己憐憫。


「一人ぼっちなんて、僕は嫌だ」

「人は孤独にして、私は孤高なのだよ。魔術書の写本を作っていたと言うのは当たっているね。僕は魔術書の力をあまり使いたくなかったものでね。使うと本来の持ち主の悪魔に見つかってしまう。だから魔術書を使うのは最低限にしたかった。写本を人に与えたのは魔術書の力を探る為と、手下を作る為さ。彼らが魔術書なしでは生きられないようになった時に名乗り出て、原典の力で彼らを支配する。そうか、君たちだったのか。私が写本を与えたやつらを再起不能にしていたのは」


 冥堂寺の顔から笑みが消えた。能面のような無表情になる。


「空耶さん。魔術書は危険なんだ。使えばあなたの魂を消費する!」


 光太郎は叫んだ。しかし、その言葉は冥堂寺には届いていない。


「そんなことは百も承知だよ! だから手下に使わせて、僕は彼らを支配する構図を作りたかったんだ。それを邪魔する君達は万死に値するね!」


 冥堂寺の様子が何かおかしい。アナエルが何か危険を察知した。


「光太郎、下がって!」


 アナエルが光太郎と冥堂寺の間に割って入る。


「魔術書よ、出でよ!」


 冥堂寺がそう言うと、彼の手に瞬間的に本が現れた。


「あれはアポート!? 魔術書を手にした!」


 光太郎が驚いた。さっきまで手ぶらだった冥堂寺が魔術書を手にしている。


「魔獣達よ、出でよ!」


 冥堂寺がそう叫ぶと、魔術書から怪しき光が漏れ出す。光は四つの渦となって広がり、やがて冥堂寺の前に塊となる。光が消えて出てきたのは三体のヘルハウンドと一体のグリフォンだった。


「この魔獣たちは・・・・・・」


 見覚えのある魔獣たち。写本よりもはるかに強力な召喚能力。間違いなく原典のほうだった。


「さて、さっさと済ませようか? いつまでもこの場にいると、悪魔に勘付かれる。君なんかよりもはるかに彼のほうが怖くてね。私は逃げ回っているんだ」


 魔獣達が光太郎とアナエルを取り囲むように動き出す。


「お待ちなさい!」


 物陰から飛び出す人影。成城ゆえとザフキエルだった。


「何だね、君達は。あぁ、光太郎君のお仲間か。彼は一人ぼっちが嫌だといっていたからね。それが女の子だと言うのだから彼も隅に置けないねぇ」


 冥堂寺の言葉はふざけているようで、顔は笑っていなかった。


「魔術書を悪用する輩は天が見逃しません☆ ここで成敗☆」


 アナエルが人間の擬態を解き、天使の姿になる。光太郎とゆえも預言書を手に構えた。


「その姿! さてはお前たちが悪魔の言っていた狩人である天使達ですか! ならば生かしておくわけには行きませんね」


 冥堂寺は魔獣達に命ずる。魔獣達がすばやく飛び出す。

アナエルとザフキエルも散開して迎え撃つ形を取った。ザフキエルがグリフォンをひきつけ、アナエルはヘルハウンド三体を相手にする。それは適切な陣形だったはずだった。


「ちょうど三体☆ ならここが必殺技の見せ所☆」


 アナエルが手を天に掲げて光弓を呼び寄せようとする。

 しかしその瞬間に何かがアナエルの前を高速で横切る! ステュムパリデスだ。光太郎達はこの魔獣の存在を忘れていた。あとから呼びだした様子はない。どうやら来る前に先に召喚して潜ませていたようだ。

 アナエルがステュムパリデスの爪で衣服を引き裂かれる。


「きゃっ★」


 アナエルは思わずよろめいた。その隙にヘルハウンドたちに飛び掛られる。


「むっ、いけません! 神の御手は救いの御手。その手は迷える者を救う!」


 ザフキエルが詠唱する。即座にアナエルの周りに空間のゆがみが現れて、アナエルを包むように神の手が現れた。ヘルハウンドたちはその手に行く手を阻まれる格好となった。


「ぐるるるるる!」


 そのザフキエルの一瞬の隙をグリフォンは逃さなかった。強烈な突進がザフキエルに炸裂する。


「くっ、この程度で! ガルガリンの光輪よ!」


 ザフキエルは両手を突き出し、大きな光の輪を作る。グリフォンの衝突を光輪で受け止める。


「ああっ、ザフキエル様が! ええい、この犬っころ共、離れろ! ルミナス・アロー☆ シュート、シュート、シュート☆」


 アナエルが光り輝く矢を三連射する。瞬く間にヘルハウンド三体を撃退した。犬の魔獣達は塵にと還ってゆく。


「ヘルハウンドが消えていくだと!? ええい、ステュムパリデス。グリフォンとその男を挟み撃ちにしろ!」


 冥堂寺が魔獣に命ずる。ステュムパリデスはグリフォンを両手で押さえ込もうとしているザフキエルを背後から襲い掛かる!


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