42話目
そんなことも知らずに光太郎は神保町を目指している。いつも行く場所だから迷う事は無い。冥堂寺が教えてくれたお店は知らないお店だったが、現地で探せばよいと思っていた。
「それにしても、僕の知らないお店もまだあるんだなぁ。空耶さんは物知りだなぁ」
「長く生きている分だけ色々知っているだけでしょ★」
「アナエルは空耶さんへの当たりだけはきついんだな。こんなに親切にしてくれているのに」
「直感的なものよ★ 直感って大事な要素だからね。瞬間的に統計的に判断している事もあるんだから」
「女のカンってやつだろ? そんなものあてにしていられるかよ!」
「天使のひらめきってやつさ☆」
「その天使も半人前だからなぁ・・・・・・さて、ブックショップ・エトワールはこの辺りかな?」
光太郎が通りを探すがシャッターばかりで何もない。
「空いているお店はないよ?」
アナエルも探すが、開いているそれらしいお店はない。
「ネットでちょっと調べてみるか」
光太郎は携帯でネット検索してみる。・・・・・・エトワールと言う店名の情報は出てくるが、肝心の営業状態は書いていなかった。それほどに情報は出ないのだ。それに小さな個人店ならば地図に出ない事もある。ネット上に有力情報は無かった。
「しかたがない。通行人に聞いてみようよ?」
アナエルの提案に光太郎が頷いた。
「あの、すみません。このあたりにエトワールって言う本屋さんはありませんか? 古書店がこの辺りにあるはずなんですが」
光太郎が通行人に道を尋ねる。
「エトワールだって? その本屋なら大分前から閉まっているよ。つぶれてしまったんじゃないかな?」
通行人は去って行った。
首をかしげる光太郎とアナエル。
「お店が閉まっている? どういうこと?」
「あのお兄さん。嘘を教えていたりして☆」
「そんなわけないだろう! ちょっと聞いてみよう」
光太郎は冥堂寺にまたメールを送った。
「その本屋で買ったという情報はほんとなのかなぁ。なんだかそこから疑わしくなってきたね★」
「空耶さんが嘘をつく理由はないだろうよ」
「うーん。だって胡散臭いし★」
「そんなイメージだけで人を語られてもねぇ!」
・・・・・・しばらく待つと返信が返ってきた。
「あのお兄さんはなんと言っているのかな?」
「しばらく前に立ち寄ったときに買った物だってさ。それなら仕方がないかな」
光太郎は諦めたようだ。しかし、アナエルは納得がいっていないようだ。
「なんだか話の筋としてはおかしい気がするなぁ。後付けで作られた話のような・・・・・・」
アナエルは冥堂寺への不信感をあらわにしている。
「アナエルは空耶さんを疑いすぎなんだよ! 相手がああ言っているんだから仕方がないじゃないか。これ以上の捜索は無理。断念しよう」
光太郎が手をひらひらと振った。そしてお手上げポーズをしている。
「これだと手がかりなしだねぇ★ また事件が起こるまで待つしかないのかしら」
「天使なら未来視できるんだろう? それで探せないのかよ!」
「魔術書の影響で未来が書き換えられると、未来像は洪水のように怒涛の勢いで流れていくんだ。そんな状況で川の流れを読めといわれているようなものだよ★」
「天使の力もそんな便利なものじゃないんだなぁ」
「むっ、なんだか侮られているような気がする★」
「だってそうだろう! ・・・・・・この辺りで邪悪な気配とかは感じられないのかよ?」
「それも半径100メートルくらいの範囲しかわからないよ★」
「謎のレーダーも効果範囲がいまいちだなぁ! ザフキエルはなんだかかなり広範囲を見れるようなのに」
「だからあの天使様と比べられても困るって★ しょうがない。今日はもう帰ろうよ」
「そうだね。最近は魔術書関連の出来事に振り回されてばかりだし、今日くらいはゆっくり本を読んで過ごしたいな」
「じゃあおうちに帰りましょうか」
光太郎とアナエルは手がかりが何も得られず、家に帰るのだった。




