表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/49

25話目

「ありがとう。ゆえさん」

「あなたもあなたです。あんな面倒な人を相手にして、どうして逃げなかったのですか?」


 成城ゆえは真っ直ぐ光太郎を見つめた。


「逃げても無駄な相手だとわかったから、逃げなかっただけだよ」

「なるほど。だから天使は手出ししなかったというわけですね」


 成城ゆえはそう言うと屋上の物陰を見た。そこには霊体となって気配を殺していたアナ

エルが立っていた。


「お見通しでしたか★ さてはザフキエル様のせいか」


 アナエルが姿を現す。


「そういうことですよ。アナエル」


 成城ゆえの背後からザフキエルが姿を現す。霊体化をやめて実体になったのだ。


「あなた達天使は人の成長を見守る者。たとえ試練に遭おうとも、気安く手助けはしない。

逆に人が真に窮地に陥ったときには導いてくれる。そういう存在ですものね」


 ゆえは天使の事に詳しかった。ザフキエルもそのような感じなのだろう。


「しかし、驚くべきは魁光太郎君の成長ですよ。殴られても相手の雰囲気に呑まれること

もなく、決して意志も挫かれてはいない。男子、三日会わざればかつ目して見よと言うや

つですか」


 ザフキエルは光太郎に感心していた。さっきの一部始終は見ていたようだ。確かに光太

郎は随分変わった。一つの意思決定がその後の考え方も変えるという事だ。


「驚く事はないわよ、ザフキエル。天使が認めた相手なのでしょう。それくらいの事は当

然です」

「はははっ! 左様でございましたな。光太郎殿、見くびるような真似をしたこと、お許

しください」


 ザフキエルが深々と礼をした。光太郎は何に謝られているのかわからなかった。


「さて、魁光太郎。私が何の用であなたに話しかけたかは察しがついたかしら」

「いえ、まったくわかりません」

「あなたがたは先日、ヘルハウンドを退治しましたね」


 光太郎はゆえの言葉に驚いた。そういえば先ほど不良の相手をしていた時も何かを言っ

ていたような気がする。


「どうしてその事を知っているの!」

「あぁ、昨日あなた方がヘルハウンドと戦っていた時の事は、ザフキエルの能力によって

見ていました。何の手助けもしなかった事はどうかお許しいただきたく」


 ゆえが頭を下げて謝る。


「なぁ、アナエル。お前もそんなことできるの?」

「出来ないよ! それは神の監視者たるザフキエル様だからできることなの☆」

「やっぱりお前ただの下っ端じゃん」

「ひどいなもー。あちらの話の続きをちゃんと聞こうよ」

「話を続けてもよろしくて? それで、私達はあなた方に魔術書探しを手伝っていただき

たく思いまして、再びお声を掛けさせていただきました」

「わたくしザフキエルの能力だけでは地上を監視しきれないのです。どうしてもカバーし

きれない部分をアナエルに捜査していただきたく思いまして。あぁ、私は高次元の存在ゆ

えに召喚者の負担も重く、ゆえ様にあまりご無理をさせたくないという事情もお話しする

必要がありましたな」


 高位の天使だから良いというものでもなく、アナエルのような下位の天使だから光太郎

にも呼び出せたという側面があった。そして召喚後の負担もない。


「そういうわけで、私達は軽々に動けないという事情がありまして、そこで光太郎君の力

をお借りしたいの。どうかご助力願えませんか?」


 ゆえの頼み事。光太郎には一度断った事ではあるが、改まってお願いされた。


「・・・・・・いいよ。やるよ」


 光太郎は引き受けた。光太郎の心境の変化は大きかった。この問題を放置しては社会に

大きな影響があると考えての行動、と言うわけではない。ここでかっこいいところを見せ

てモテモテになるかも、というよこしまな考えがあった。それほどに昨夜のヘルハウンド

退治で気をよくしていた。


「むっ、邪念★」


 アナエルが光太郎の邪悪な念波を受け取っていた。


「そうですか、引き受けていただけますか。それは大助かりです」


 ゆえは素直に喜んだ。


「では、私達はいつもとあるビルの屋上に陣取っています。そこからならば地上を監視できる。あなた方は地上をくまなく捜査していただきたく。アナエル、あなたも魔術書の邪悪な力を辿る事はできますね?」


 ザフキエルがアナエルに問う。


「はい。できます。ザフキエル様」

「よろしい。ならばあなたには斥候をやっていただきましょう」

「と、いうことでよろしいかしら。光太郎君」


 ゆえが最後に光太郎に尋ねる。


「それが一番と言うならそれで良いよ」

「では、今夜から見回りをするという事でよろしいでしょうかね、ザフキエル」

「ゆえ様、それはいつもの事でしょう。あぁ、共闘体制は今日からですが」


 ゆえ達は今までずっとこんな事をやってきていたようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ