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24話目

 翌日の事。光太郎はいつもの如く学校に登校しようとしていたが、同棲中のアナエルと一緒に登校する事になった。本来なら時間をばらけさせて登校するのが望ましかったが、魔術書の行使者が家のそばにいたから危険という事で、アナエルが言って聞かなかったのだ。だから二人並んでの学校入りとなった。

 当然そんな様子を見ている生徒たちは光太郎達を囃し立てる。同棲中の男女が仲良く登校しているのだ。思春期の生徒達には刺激が強すぎる光景だった。皆がうらやましがるように二人を見ている。そもそもが男子生徒達の嫉妬心が強い。美少女レベルの外国人女性と一緒に学校に通っている光太郎が憎くてたまらないといった感じだった。五寸釘で藁人形を打ち続けている生徒までいる。

だが、生徒達の波乱はそれだけではすまなかった。それはアナエルがたまたま席を外していた時の事。


「ねぇ、光太郎君。いるかしら」


 クラスの入り口で光太郎を呼ぶ声。成城ゆえだった。ゆえはずかずかとクラスにあがりこみ、自席に座っていた光太郎のもとまで歩いてきた。


「な、なんですか?」


 光太郎が驚いている。


「あら、御一人? 後で話があるわ。放課後に屋上で待っています」


 ゆえは端的に話を伝えた。最小の用件だけを告げている。そして颯爽と去って行った。その姿は屹然としていて、気品さえ感じられた。

 クラスの生徒たちは騒然とした。学年一の美少女が光太郎を呼んでいる。一体何事かと周囲は騒然とした。「なぜ学園のマドンナがあんなやつに・・・・・・」そんな声まで聞こえてくる。

 そんな様子を快く思わないものがまた一人。為五郎。光太郎を良くいじめている不良であった。昨日は光太郎をおいて逃げ出したが、光太郎が無事でいることに驚いていた。

 為五郎は心底面白くない物を見るような視線で光太郎を見ていた。彼の視線の先には戻ってきたアナエルとのうのうと過ごしている光太郎の姿があった。

 そんな事に気がつかない光太郎はアナエルに問い詰められている。


「なぜゆえさんは私も呼ばなかったのかしら★ この間の話の続きならば私も呼ぶのが筋と言うもの」


 周囲の女子が光太郎の事をアナエルに告げ口したのだ。

 そのアナエルはまるで能面で貼り付けたような笑みを浮かべ、その背後ではゴゴゴゴゴゴゴゴと不穏な効果音を出し続けていた。

 周囲の生徒たちは遠巻きに「修羅場かしら」とささやきあっている。

 光太郎は辟易していた。学校中の噂になっているからだ。アナエルとは既にただならぬ関係と言う噂が広まっていた。それに加えて成城ゆえとの話も追加されそうな勢いなのだ。


「何の話だろうな。ともかく僕は帰りが少し遅くなる」


 光太郎は何の気無しにそう言ったのだが、周りの反応は違っていた。

 「アナエルさんを無下に扱うなんて可哀相!」そんな声がアナエルの取り巻きの女子達から上がる。アナエルは既に取り巻き女子が出来ていた。普段からアナエルの周りに衛星のように集まる女子の集団は、すでにアナエルの味方だった。面倒な事になったなと思う光太郎はそれ以降黙っていた。

 放課後。光太郎は先に席を立った。向かうのは待ち合わせ場所の屋上。だが、待っていたのは成城ゆえではなかった。


「よぉ、光太郎。こんなところで会うとは奇遇だな?」


 為五郎だった。為五郎は明らかに機嫌が悪そうな顔をしている。


「た、為五郎君。どうしたのさ」

「どうしたもこうしたもねーよ。お前がいつの間にか女と同棲しているわ、学校一のマドンナとよろしくやっているようだわで、お前が調子に乗ってネーか心配でよぉ」


 為五郎は指をぽきぽき鳴らしていた。光太郎は逃げ出したい衝動を抑えた。


「別に、普段どおり過ごしているだけだよ」


 光太郎は平常心を保とうとして、ぎりぎりのラインでそう答えた。


「お前のそういうとこ、気にくわねーんだわ!」


 不良の拳が容赦なく光太郎の顔面を捉える。


「ぐっ、本当の事だよ!」


 光太郎はよろめくが、クリーンヒットではなかったので倒れなかった。

現実的にはこの手の輩は相手にせず逃げるのが一番だ。しかし、逃げても無意味な相手の場合にはそうもいかない。

 光太郎は引き下がらなかった。


「おめー、やっぱ俺の事舐めてるだろ? なぁ?」


 不良はますます機嫌が悪くなった。光太郎が泣いて逃げ出すと思っていたのだ。


「舐めてなんかいない」

「きちんとわからせてやんねーとダメなようだな?」


 不良が追撃を入れようと距離をつめる。その時であった。


「お待ちなさい」


 凛とした声が場に響く。


「あん?」


 不良が屋上の出入り口を見ると、そこには成城ゆえが立っていた。


「お待ちなさいと言っています。あなたに何の権利があってそのような真似をしているのですか?」

「権利? んなものねーよ。俺を舐めやがったこいつを殴らねーと気がすまねぇだけだ」


 不良の言葉にゆえが笑った。


「いい年してお漏らしした人がいう事かしら!」


 ゆえの言葉に不良の顔が真っ赤になった。昨夜、ヘルハウンドに襲われた時に失禁していたのだ。後でその事を仲間たちに笑われて、彼は居場所をなくしていたのだった。


「どうしてその事を!?」


 不良は狼狽していた。彼を小ばかにしているのは、まだ仲間達だけのはずだった。


「その事は黙っておいてあげるから、今日は引き下がりなさい」


 有無を言わせぬゆえの言葉。不良はすごすごとその場を逃げ去って行った。


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