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16話目

 ・・・・・・光太郎はチンピラに絡まれたのかと警戒した。


「な、なんのようでしょう?」

「お前、古い書物を集める趣味はあるのか?」


 ガラの悪い男は変わった事を尋ねてきた。


「えっ、ありますが、それがなにか?」


 光太郎はカツアゲでもされるのだろうかとびくびくしている。


「お前、魔術書と言う物を知っているか。どこかで見かけた事は? 写本でもイイ」


 ガラの悪い男から出てきた魔術書と言う言葉。その言葉に思い当たったので、光太郎はびくんと予想外の反応を見せてしまった。


「なぜ魔術書の事を・・・・・・、い、いや知らないです!」


 光太郎は咄嗟にでかかった言葉を飲み込み、知らない振りをしようとした。


「お前、何か知っているな? ちょっと面貸してもらおうか」


 光太郎はガラの悪い男に捕まり連れ去られていく。

 光太郎が案内されたのは薄暗い半地下のお店だった。壁には髑髏ガラのタペストリーが掛けられている雰囲気のやばそうなお店だった。置いてある物のカラーリングは黒とか赤とかそんなのばかりだ。

 店内にいる者どももまっとうな輩ではなさそうだった。モヒカンや鼻ピアス。タトゥーをしている男や女だらけの中に、光太郎が放り込まれた。


「さぁ、ボウズ。聞かせてもらおうか? 魔術書の事を」


 光太郎を連れてきたガラの悪い男はどかっとソファーに座った。


「そんな事を言われても・・・・・・ヘルハウンドと言うのを見かけたくらいで僕は何も知らないよ!」


 光太郎は知っている事だけを話すつもりだった。だが、それがよくなかった。


「ほぅ、魔術書にヘルハウンドを召還する術があるのを知っているな? なぜそれを知っている、お前も魔術書を見たのか?」


 ガラの悪い男は怖い目つきで光太郎をにらみつけた。


「し、知らない! 魔術書なんて知らないよ! 本当なんだ!」

「ただの人間がヘルハウンドの名を知っているわけがないだろう。さてはお前も写本か何かを持っているな? あらためさせてもらおうか」


 そう言うとガラの悪い男が立ち上がった。と、その時、店のドアが勢いよく開けられた。


「光太郎! ここにいるのね! 何があったのか知らないけれど、光太郎の運命に介入しようとしている者の存在を検知したわ☆」


 飛び込んできたのはアナエルだった。


「なんだ、あの女は。お前の知り合いか。どうやってここを嗅ぎ付けた?」


 ガラの悪い男がやれやれと頭をかいた。


「そこのお前、お前は人間じゃないね? お前の運命が読み取れない!」


 アナエルはガラの悪い男を指差した。


「ほぅ・・・・・・それがわかるとは、お前も何者だ?」


 ガラの悪い男が目を細めてアナエルを値踏みするように見据える。

 アナエルが急に光り輝き、本来の天使としての姿となった。光輪と翼が光り輝いている。


「愛と平和の使者、アナエル登場☆」


 アナエルが練習していたのであろうポーズをとる。流れることなく自然と振舞う決めポーズ。


「やれやれ。このボウズ。魔術書の保持者ではなく預言書の保持者の方だったか。運命が見えなかったことから何かしらの関わりがあることはわかっていたが、面倒なやつを拾っちまったもんだ」

「お黙りなさい! うけよ、ルミナス・アロー☆ シュート★」


 アナエルが得意の光の矢を放つ!

 パシン! 何かが弾かれる音。光の矢はガラの悪い男の手でかき消された。


「名乗るのが遅くなったな。俺の名はアスモダイ。悪魔の頭をやらさせてもらっている。恥ずかしながら魔術書を人に盗まれちまったもので探している。お前たちに問う、魔術書を見かけなかったか?」


 アスモダイは強烈な威圧感を放つ。アスモダイはあっという間に黒い翼を背に持った姿に変貌していた。光太郎にもわかった。アスモダイは決して軽視していい存在ではないという事を。アスモダイの周りの空間が歪んで見えていた。

 しかし、アナエルは怯んではいなかった。


「悪魔と語らう舌など持たない★ この場で成敗してくれる!」

「やれやれ、聞く耳なしか。最下位の天使風情が序列三十二位の魔王に挑もうというのか?」


 ギン! とアスモダイの目が光り輝くと、アナエルは黒い茨のような光で捕縛された。


「なっ、身動き取れない★」


 アナエルはもがくが黒い光は破れなかったようだ。


「さて、ちょっと話を聞かせてもらおうか。お前達、ヘルハウンドに会ったんだな?」


 アスモダイは威圧感をそのままに尋ねてくる。


「はい、そうです。そこのアナエルが退治しようとしたけれど退治できずに逃げられました!」


 光太郎は重圧に耐えかねてぺらぺらと話し始める。


「ヘルハウンドも倒せないとは、昨今の天使は地に落ちたものだ。俺が智天使をやっていた頃はもっとマシだったぞ」


 アスモダイは軽蔑するような視線をアナエルに向けた。


「僕達も魔術書の行方は知らないんです! 知っているのはこれだけです! だから帰して下さい!」


 光太郎はアスモダイに懇願した。


「ちっ、見れば人間も天使もまだガキじゃねえか。ガキ相手に本気になっていられるかよ。さっさと帰れ」


 アスモダイはパチンと指を鳴らした。そうするとアナエルを捕縛していた黒い光も消えた。


「さっ、アナエル。もう帰ろう!」


 光太郎はアナエルの手を引いて店を出て行く。アナエルはまだ闘志は消えていなかったようだが、アナエルに勝てる相手には見えなかった。


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