表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/27

新人類戦記第三章聖域第4回 アコンカグワ山を目指す2人。それを取り巻く超能力部隊に関与する米国、ソビエト、日本の政府機関が、英領南西アフリカポートモレスビーでうごめいていた。

新人類戦記 第三章 聖域 第4回 ●校正中です。

作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)



中国人の陳と秀麗がなぜアコンガクワ山に


向かうのか、誰も知らなかった。

ビサゴス共和国は革命戦線との争いの中にある。


英領南西アフリカのポートモレスビーから

ジャバ川を河舟でさか登るのだ。




■ 他の種族が出入りするのを拒むイアテ族が


住む魔の山アコンガクワ山。おまけにその山


にたどりつくために通らねばならないジョバ


川はちょうどビサゴス共和国のポグラ政府軍と革命軍の戦闘地


域にあるのだ。




■ トルワイユの船イデア号を出て行くのを隣


の桟橋からなかめている男がいた。そのア


ジア人リフはトルワイユと陳が密会したバー、ポ


セイドンで二人を見張っていた男だった。男


は望遠鏡をおろし、上司に報告のため、近く


に停めてあったシトロエン2CVに乗り込ん


だ。



 ポートモレズビーの中心街にそびえるホ


テル・ジャネイロにもどった男は、すぐさ1


7階のスペシャルルームを訪れた。


 「リフ、伽苦労だった。どうだ。奴らは出発


したか」


 「間違い々く、彼らはアコンガクワ山に向か


いました」


 「それで。乗り込んだ男の写真は出きたか」


 「これが陳の写真です」         


 リフと呼ばれた男はバー・ポセイドンで秘


かに写しとった写真を机の上に拡げた。


 「それにもう一人、船に乗り壇した。出発間’


際、陳が連れてきたのです」


 「何、どん男だ」


 「いえ、女です。顔ははっきりとは見えませ


んでした。東南アジア人の女性で、20歳前後


です」


ホテル・ジャネイロ17階のスペシャルルーム

の金のかかったイスにすわっている男は陳の写真

を手にとね、じっとながめている。


「ルイ。トルワイユはCIAのアランと関係


があるとお前は言っていたな」


「そうです。トルワイユは陳をアコンガクワ山


に連れていくことに関して相談しています」


 「わかった。引き続き、アランの方を見張っ


ていてくれ」


 アジア人のリフはスペシャル。ルームから


出ていった。一人部屋に残った男は安楽椅子


に横たわり、チボレオンを飲みながら、独りン


ごちた。


 「我々の工作員の力に頼る他は


ないだろう」


 しぱらくの間沈思黙考していた男は、ホテ


ルの交換を呼び出した。


 「こちら七三〇号室だ。日本を呼び出してく


れ」


 日本につながった電話に男は山梨のある番


号を告げていた。


「翁ですか。お久しぶりです」


 電話はしぱらくして、つなかった。


「桜木です。ええ、私は例の東洋商事の仕事


でポートモレズビーにいます。例の仕事は


順調にいっているのですが、一つトラブルが


発生したのです」


 翁は考え深げ左声で言った。


 「そのトラブルとは何かね。桜木くん」


 「東郷竜がこのポートモレズビーに現われ


たのです」


 「何、東郷竜だと」


 山梨に住む、この翁と呼ばれる男は日本の


黒幕の一人であった。さらに翁は日本政府直


属のアクションサービスの実質上の長であ


った。


 彼はアメリカ大統領の依頼によhン、日本政


府アクション・サービスの一員である東郷


竜をベトナムヘ派遣していた。


 竜の目的は、アメリカの偵察衛星ビッグバード

によって発見されたアメリカのベトナム戦争時の

残留兵器の破壊である。





 その兵器とは。超能力戦士のジウであった。


 しかし、どういうわけからか、ジウを発見


しながらも、竜は彼女を殺さなかった。


 竜は翁の命令を無視したのだった。それは


すなわち竜の死を意味した。


 ボート・ピープルの一員としてベトナムを


脱出したということはトロピカル・ニュース


レポートの写真とUP1通信からつかんでい


たが、マレーシアの難民収容所が地震によっ


て壊滅した時から消息をつかめなかった。


 ただ、途方もない後立てが存在しているら


しいことは翁もうすうすわかっていた。


 沈黙があった。


 桜木は電話が故障しているのではと思い、


大声で叫んだ。


 「翁、翁、聞こえていますか」


 「聞こえている。桜木君、機会があり次第、


竜を抹殺しろ」


「御心配なく、手はいろいろ打っております。


彼の乗っている船には私の手の者が乗り込ん


でいます。さらにクリスチャン号と遭遇した


時は、船もろともジャバ川のもくずと消える


事でしょう」


 「いいか、桜木君、竜の抹殺も重要だがグ


リスチャン号の積荷も大切なのだからね。わ


かっているだろうね」


 「わかっております。翁。御心配なく。おっ


つけいい報告をお送りできると思い1す」


 「期待しているよ。桜木君」


 翁はこの時、腕ききの一人をポートモレ


ピーに派遣することに決めていた。


 「お元気で、翁」


 日本政府のアクション・サービスの一員桜


木が受話機を降した時、リフもテープレコー


ダーのスイッチを切った。


■リフはホテルの交換台にいた。席の隣りに


はリフのお気に入りの交換オペレーターのス


ンダ嬢がすわっていた。


 リフはスンダ嬢にウィンタをした。


「ありがとうよ。ペイピイ。助かったよ」


 スンダは黒い笑顔を向けていった。


「いいのよ。リフ。これからもこのサタラギ


とかいう日本人の電話には気をつけているわ


でもこの人がしゃべっているのは日本語でし


ょう。あなたわかるの」


「頼んだぜ」


 リフはその質問には答え々かった。語学の


天才リフは日本語も完全に理解できる。


 リフは桜木の部屋を出たあと、すぐ交換台


へ飛びこんできたのだ。


 「さて、これから、俺は桜木の命令通り、CIAのア


ランと接触を持つか」


 数分後、リフはポートモレズビー駐在の


CIAのエージェント、アランとホテル・リッチモンド

のバーで会っていた。


 リフはダブルエージェントであつた。


 古びた天井の扇風機が騒音をあげながら、


風を二人に送ってきている。


 「そうか、やはり桜木も竜に気がついたか。


それにトルワイユの船イデア号に工作員を送


り込んだと言っていたな」


 「あの船には船長のトルワイユ、乗各の二人


の他、七人乗り込んでいます。ヌノ、ラリ、


ファイ、マルコ、チャウ、ヌーラ、ロッセ、


いずれも一くせも二くせもある奴らばかりで


す」


 「誰が、桜木の工作員かだ。とりあえず、ト


ルワイユには警告しておこう」


 アランはテーブルの下で秘かに札束のはい


った封筒を雑誌「ニューズウィータ」にはさ


み、リフに手渡した。


「船の積荷は何かまだわからんのか」


「残念々がら。ただ、東洋商事がアメリカの


過激派と接触したとの情報ははいっているの


ですが」


「そう、それが我々が一番恐れていた事だ。


日本は現在まで、武器輸出の実績がない。し


かるに日本政府は韓国にダミー会社を、つま


り東洋商事を作り、武器輸出に力を入れ


ようとしている。このビサゴス共和国で実績を作ろ


うとしている。それも我々のアメリカ本土で


過激派によって盗み出された武器を売か込も


うとしているのだ。もし、その兵器が解放戦


線側にでも流れたら、えらい事になるからな」


 「例えぱ、どんな兵器ですか」


 「原爆の可能性がある」


 「原爆」


 「そうだ。そう聞いた以上必死に捜してくれ」


 「わ、わかりました。それでは」


 ルンはこユーズウィータをわしずかみにし


てホテルから飛び出した。


 CIAのアランは「原爆」の言葉に驚いて飛び出し


たアジア人リフの後を追いかけるように外に


出た。


 ホテルからポートモレズビーのカブラル


本通りを歩き始める。路上駐車していたサンダーバード


の中の男が、アランを呼び止めた。


パナマ帽を真深かにかぶった男はアランに


一言、言った。その一言はアラ


ンを大喜びにした。


「カイザー部隊が明日到着する」


■カイザー部隊、アメリカの超能力戦士部隊である。デューク島井の進言に


言により、カイザー陸将によって創成された

特殊部隊である。


 デューク島井は東郷竜と同期のサイココー


ンドであった。


 島井はマレーシアのポートピープル収容所


へ竜とジウを尋ねた。そして竜の心の中から


島井は恐るべき事実を探り出していた。


 世界じゅうに抹殺したはずの超能力戦士存在すること。

そして彼らは自らを新人類と呼び、

彼らの背景には実体のない指導者がいる事を知った。


 同時に、島井の恩師ブラックウッド博士を


殺したのが竜であると知り、彼らを精神波攻


撃で殺そうとした。しかしその時、マレーシア

のポートピープル収容所を大地震が襲い、


二人は逃げ去ったのだ。


■ブラックウッド博士が彼ら超能力戦士部隊

の創成者であった。彼は素質のあるベトナム

の子女を誘拐し、教育し、超能力(ES

P能力)を武器とする兵士とした。


 しかしベトナム戦争に投入された彼らは充


分な成果をあげられないまま、輸送機の爆発


を装い抹殺されていたはずだった。


 しかし、アメリカの偵察衛星ビッグバード

超能力戦士の一人ジウの存在の証


拠を発見した事により事件がおかこったのだっ


た。


 二人の行途はようとしてわからなかった。


 その間、デューク島井は政府のあちこちに


働きかけ、大統領の決裁を受け、カイザー陸


将の力によりン、カイザー部隊を作りあげたの


だ。カイザーは野心家であつた。



■竜達の手掛りかなくなった島井は、マレー


シアへの旅行中に出会ったはハイジャッカーの


方を捜す事にした。タアランブールヘ飛ぶジャンボ

を乗取ろうとしたハイジャッカーの

三人の内ガリルとハイムは島井の精神


波に破れ、ジャンボ機外へ吹き飛ぱされていたが、首


領格のダレルはテレポートして逃がれ去って


いた、彼らはPLOの1員と名のっていた。


■PLO(パレスチナ解放機関)は七つの組


組に分けられる。アルファタ。DFLP


 (パレスチナ民主解放戦線)。サイカ。PF


LP(。(レスチナ解放人民戦線)。ALF


 (アラブ解放戦線)。PLF(ペレスチナ解


放戦線)。PFLP・GC(総司令部隊)P


SF(パレスチf闘争戦線)




 各組織の有名人物について、CIAの莫大


なデータを島井は利用したか、求める人物は


得られなかった。



しかし彼はダレルの顔をはっきりと覚えていた。


彼は念写を行い、コピーを全世界のCIAエージェントにばらまい


た。


■やがてアルジェのエーシェントから報告か


はいった。


アルジェは小リと呼ばれるフランス風の


町だ。小奇麗な通りが、海岸に沿った丘陵の


斜面にいくつとなり走り、各通りは海岸から


のかなり勾配の急な無数の石段でつながる。


 ガラペノフ(アラブ服)を着た子供達が遊


ぶカタパの中を島井はめざす得物ダレルをつ


かまえるためにいそいでいた。




 しかし、ダレルは危機を予知した。姿なき


物がダレルを呼んだような気がした。一瞬彼


は気を失なつていた。




■無意識の内にダレルは


アフリカ沖を航行中、ソ連の貨物船ノプゴロドフ号上にテレポート


している自分に気付いた。




ノプゴロドフ号は英領南西アフリカ、ポートモレスビーへ向かい、武


器を満載し航行している。




■やがて、一人の軍人が彼の前にあらわれた。

 「ようこそ、同志ダレル。自己紹介しよう。


私はKGB超能力戦線部、シェチェフキン大尉だ」






■ビサゴス共和国、森林地帯



イアテ族の族長は、啓示を突然受け、その


場に立ちすくんでしまった。ついにその時が


やってきたのだ。待ちに待ちのぞんでいたそ


の日が。




 彼ら、イアテ族の存在そのもの。が、その瞬


間にかかっているのだ。




 彼は、彼らイアテ族の都市の山頂部をあおぎみて、


さらに神殿の方へ目を移した。




イアテ族神殿の中には神体か横たわっていた。


それは宇宙船の生体チューブのようであった。


そして中に横たわっている男の姿は。




 族長はイアテ族全員、ついにの都市の住


民を広場に集めた。



 アフリカでは、鉄の都メロエ、石の都ジy


パブウエ、黄金の都トンブクトゥなどの古代


都市か著名である。




しかし、イアテの都市は

もっと神秘的であり、超古代から存在してい


るのだった。




「我々のフッカツの時が来たのだ」


イアテ族の族長エピネの一言は大効果があった


あちこちから歓声が上がり、やがて興奮のルツ


ボとなった。




「その前に、我々は、この世界の邪悪の総て


と戦わねばなら痙い。キッカケは二人の男女


なのだ。そしてより多くの男達だ。彼らには


イバラの道が待ちかまえている。我々は少し


でもそのイバラを取りのぞかねばならぬ」


 神秘的な山アコンカグアが背後にそびえ


立っていた。




(続く)

新人類戦記 第三章 聖域 第4回 ●校正中です。

作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)



      

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ