水曜日のマカロン
週の真ん中ってめっちゃ疲れる。
週半ばってめっちゃだるい。2日分の労働による疲労。あと2日あるという先への気苦労。
そもそも2日しっかり気力をチャージしたとして、2日分しかないのだ。3日目も出社している時点で偉すぎはしないか。
もだもだ考えたところで目の前の入力が終わるわけでもなし、脳が死んでいてもできる作業でよかった。眠くなるけど。
どこかに出かけたなけなしの集中力を呼び戻すため、コーヒーをとってこよう。
淹れていると後ろから久藤先輩がやってきた。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
「なにやってんの」
「結構見たままかと思うのですが」
「素直に答えなさいよ」
「コーヒー淹れてます。先輩よくここでお会いしますね」
「お前もな、カフェイン中毒?」
「いえ、しいて言うならシュガージャンキー?」
「そういや甘党だったな」
「別にあれは甘党の飲み物ではないです」
「いやあんなほぼ砂糖水飲めるのは甘党だよ」
「先輩こそカフェイン中毒なのでは」
「いや眠気覚ましだよ」
「本当です?飲まないと落ち着かないとか、手が震えるとかではなく?」
「いうて俺そんなに飲んでるわけではないからね?」
「高確率でお会いするので」
「俺が来るとき8割の確率で山岸がいるだけ」
「となるととんでもない偶然ですね。行動パターンが似てるんでしょうか?いやでも部署違うし…」
「運がいいんだろ」
「良いと言うのでしょうかそれ?」
ピピっとコーヒーの淹れ終わる合図がした。
「じゃ、お疲れ様です」
カップに手を伸ばすとすかさず先輩の手に阻止された。
「えっなに」
「俺のも入れといて」
紙コップを握らされる。
「え、ボタン押すだけ「俺ちょっと用事思い出した。すぐ戻るから見てて」えー…」
さっさとどこかに行ってしまった。なんだ何かの嫌がらせか?なんで私2杯もコーヒー淹れてるんだ。
時間を持て余したので、砂糖とミルクを入れよう。入れなくても全然飲めるんだけど、入れたほうがおいしいじゃん。
入れて混ぜて、スプーンを洗ったあたりでコーヒーが淹れ終わった。淹れ終わったよせんぱーい、どうするのー。
人が来たら気まずいなぁ、サボりじゃないんですよーサボりたいけど。
心の中で言い訳しながらカフェオレを飲んでると、先輩が帰ってきた。
「ごめん、思ったより見つからなかった」
「意外と遅かったですね」
「ごめんて」
言いながら何か小さい紙袋を突き出される。
「はい、これあげる」
「なんです?」
「おやつ」
「なんで?」
「お客さんがくれたんだけど、なんかめっちゃ甘くて1個でギブ」
「あぁ、なるほど」
それならと受け取って、中を見てみると個包装のマカロンが4個。
「え、めっちゃある」
「後輩に配るには少ないし、一人で食べるには多すぎなんだよ」
「彼女とかでいいじゃないですか」
「いねーって言っただろ」
「そうでしたっけ」
しかしなぜ私なのか。部署も違うのに。
「どうせなら甘いもん好きな奴に食ってもらいたいんだよ。深読みせずにおいしくいただいてくれ」
「そこまで言うなら謹んでいただきます」
「今度感想教えてくれな」
「食べたのでは?」
「おいしいと感じるやつの感想が聞きたい」
「ふーん」
そんなもんか。
水曜なかば、思わぬご褒美に神様と久藤先輩を心の中で小さめに崇めといた。