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Boys In Knifemare  作者: コム
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01.Welcome To Knifemare

一般的に『誕生日』という言葉はポジティブな単語として解釈される。

『誕生日』に嫌な記憶を持っている者もいるだろうが、それは「誕生日』という祝福されるべき日であるにも関わらず、悪いことが起きたという逆接の修飾に過ぎない。基本的には大勢が己の「誕生日』を望ましいものとして捉えているだろう。


反対に、大多数の人間にとって『命日』は悲しみ悼むべきものだ。それが、肉親のものなら尚更…。回忌を重ねるごとに少しずつ受容できればよいが、生涯他人の『命日』を引き摺ってしまう人々も居る。


生没同日。

『誕生日』と『命日』が同じことを指す言葉。

閏年などの瑣末な要素を考慮しない場合、生没同日になる確率は1/365だ。

だがデータ上、生没同日の割合はその確率を上回る。

人為的なものが死因に介入するからだ。

『誕生日』が衝動のトリガーとなり、自殺・他殺が増加するのである。


「よう、あんたらはどっちだ?」


だからKnifemareで一般的なこの質問は、「お前の死因は自殺・他殺なのか、それともそれ以外なのか」という意味を持つ。前者に当て嵌まる人間は不安定な精神を抱えている場合が多い。第一声で相手の死因を確認することは、Knifemareで無用なトラブルを避けるためのコミュニケーション手段の一つである。


だが、今男の口から発せられたこの定型文は、トラブルを避けるための処世術として用いられたものではなかった。むしろ、徹底的な対立を予測させるニュアンスを孕んでいる。決して陽の昇らぬKnifemareの極夜の中、微かな電灯の光に当てられて、男の持った刃物が煌めきを放つ。その煌めきは刃物に染み付いた血痕を反映し、朱色を宿していた。


「俺は他殺だ」

「ボクは自殺だね」

「ぼ、ぼくは…事故で…うぅ…」


男の問いかけに対して、対峙した少年3人が各々返答をする。男は取り分け、「自分は他殺された」と答えた少年に興味を持ったようだった。少年は銀髪のウルフヘアに革ジャンを着込んでおり、睨みつける眼光がその攻撃的な印象を更に際立たせている。


「他殺、ねぇ…。なぁそこの銀髪、お前の死亡時の年齢は?」

「0歳0か月。今テメェが手を掛けようとしているその子と同じだ」


0歳0ヶ月。

これもKnifemareで特別な意味を持つ単語の一つ。

生没同日で最も多い死因、それは諍いや希死念慮によるものではない。生後間もない新生児を間引く、嬰児殺である。親を嬰児殺に至らしめた原因が経済的要因にせよ、社会的要因にせよ、皆一様に親から望まれず、その日のうちに産湯に沈められた遺児たち。狭義ではなく、本当の意味での『生没同日』である。その呪われた境遇はKnifemareの住人たちですら忌避する者が多い。

…Knifemareの住人たちは皆、このどちらかの『生没同日』に当てはまる。



「その子から離れろ。すぐに処置しないと命が危ない」


「断る。こいつは俺が看取る。いや、天国に送ってやる。こんな薄暗い世界じゃなくてな」


男は刃物をひらひらと振り回し、その切っ先を息も絶え絶えな新生児に向けた。表情には陶酔が浮かんでいる。ある種宗教的な使命感と、自身の下卑なサディズムをごちゃ混ぜにした笑みだった。自分よりも圧倒的に弱いものを虐げ、それを崇高な行為と位置づける悦び。


「銀髪、邪魔するならお前から殺す。薄汚え"0・0"が」


『0歳0ヶ月』に対する最大級の侮蔑を吐き、男が笑いながら血塗られたナイフを向け直す。男のナイフは、刃渡り20cm程度の包丁だ。


それに対し、ウルフヘアの銀髪少年が、腰元からサバイバルナイフを引き抜いた。

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