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第二話 婚約解消 2

 そうしているうちにエレナがレオナルドと私に近づいてきた。エレナは満面の笑みを浮かべてレオナルドに抱きつき、私にはとても冷たい目線を送った。

 だが私はエレナの冷たい目線に慣れている。いつも私から奪った後にする行動だからだ。相手には良い顔をして私には悪い顔を見せる。小悪魔とは言い難い言動だ。私は小悪魔ではなく悪魔と言った方が合っている気がした。


「エレナ…辛かっただろう?いつも従姉妹のアメリアに色んな物や人を奪われて……」


「えっ…」


 私の物を奪ったのは目の前にいるエレナだろう。なぜ私が奪ったことになっている。レオナルドはエレナに恋をしてこんな事をするような人間だとは思わなかった。ーーだが、現にしてしまっている。恋は人を変えるとは言ったもののここまで変えるものかと驚いてしまった。


 いつも私がレオナルドに必死にアプローチしても無視された。お菓子を作っても「どうせ使用人が作ったものだろう?それを自分で作ったものだと言うのはやめろ。見苦しい」と言われ私はとても傷ついた。

 だがそれでもレオナルドにアプローチをし続けたのはレオナルドのことを愛してしまったのが原因だろう。なぜこんなのを愛してしまったのだろうか。今になって後悔してしまう。


「エレナ。どういうことか私に説明してほしいのだけれど」


 次の瞬間、エレナは小悪魔のように笑った。一瞬の出来事だが私は見逃さなかった。エレナがこの顔をするということは良からぬことを考えている時だ。だから私は見逃さなかった……いや見逃せなかったのだ。

 エレナは抱きついた腕をギュッと強くして目を潤み始めた。私はエレナのこんな所が嫌いだった。泣けば何でも許してくれると言う思い込み。それは嫌いで嫌いでしょうがなかった。

 泣くと周りは私が悪いみたいな顔をしてくる。泣かした方が悪い、と。それに私だって罪悪感が生まれる。


「アメリア…私は貴方を訴えます!今までしてきた事を白状して下さいませ!」


 今までしてきた事を白状しろと言われても私はそんなことをして来たつもりも覚えもない。どちらかと言えばエレナがしたと思う。

 認めるのは嫌だ。だが目が潤んでいるエレナに勝ち目は無いと言ってもいいと思う。なぜならレオナルドだけでなく周りの貴族達もエレナに味方をする姿勢が見て取れる。


 今、私が反論しても弾き飛ばされるだけだろう。それならいっそのこと身分剥奪され平民になって残りの人生を楽しみたい。ここで私は心の傷を広げたくない。


 私は戦わず逃げる方を選択してしまった。ここで戦えば少しは人生が変わったかもしれない。そう思うのは駄目なのだろうか。だが現状、それ以外することは無いに等しい。

 なら私はエレナに暴力や暴言をしたことを白状せず身分剥奪され国外追放された方が楽だ。

 いつも私はエレナを前にして逃げてしまう。こんな自分は嫌だった。だが今回ばかりは事が大きいからしょうがないと心に聞かせた。


「エレナ、私はこの紙に書かれている暴力や暴言はしていませんわ。だけどーー」


「今更言い逃れするつもりか!?」


「人の話は最後まで聞いてくださいませ。私は平民になりたいので身分剥奪と国外追放の方は承諾させて頂きますわ。」


「それは認めるという事か?」


「いいえ。認めません。エレナは私を身分剥奪と国外追放されるのを望んでいるようですのでそれに従うまでです。レオナルド様、エレナをよろしくお願いします」


 私はレオナルドに頭を下げた。


 こんな事をするレオナルドに頭を下げるのは気が引けたがそうするしかなかった。

 私は暴力や暴言を認めて逃げる訳では無いと心に強く言い聞かせた。そうしないと今にも押し潰されそうでしょうがなかった。

 エレナには逆らえない。逆らうともっと恐ろしいことが起きてしまう。それだけはどうしても避けたかった。


「では私はこれで家に帰らせて頂きますね。平民になる準備をしないといけませんので。」


 いつもの私はこのようにすぐトラブル事を避けようとした。だが今は少し違う。今の私は前世の記憶をもった私だ。だからいつもと違う行動に出たのかもしれない。


「それとレオナルド様、エレナ。覚えておいてくださいね。私はこのまま負けるつもりはないですわ。その事を重々覚えて下さいね。」


 私は笑った。だが目は笑っていない。


 今までの私はこんな事はしなかっただろう。いつもは面倒なことは避けて何もしなかったがこう言ったのは前世の私が原因だろうか。

 なぜなら前世の私は今と違い負けず嫌いだったからだ。このまま負けるつもりはないと心に訴えている。


 そんな私を見てレオナルドはとてもビクッとなって一歩下がった。その一方でエレナは目を丸くして驚いている。いつもの私はそのまま帰っていたからだ。なのに宣戦布告まがいのことをしたからだ。驚くのは当然だろう。


 そして私はひとまず家に帰った。この出来事は私が生きていた中でとても辛くてとても泣きそうになった。早く家に帰ってベッドで泣きたかった。だがそれが、より心の傷を広げるなんてこの時は思いもしなかった。

意外と色々書けたので数日間は朝・昼・夜の一日三回投稿させて頂きます。朝は8時頃、昼は13時頃、夜は20時になります。


そしてブックマーク登録ありがとうございます!!一話だけでこんなにしてくれるとは思わず…結構嬉しいです。

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