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4月1日 月曜日 晴れ

 思えば今まで、熱中するものなんて何もなかった気がする。


 趣味はもちろんの事、小学校から現在に至るまで、委員会も部活動にも1度も入ったことなんてない。

 逆をいえば、僕は帰宅部のエリートだと言えるだろう。誰だ今笑ったやつ!



 そんな空っぽな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。

 とにかく何かないかと、色々やった。

 書道や野球、卓球に水泳、果ては学習塾にまで行ってみた。

 しかしどれをとっても、


『楽しい』


『熱中する』


 とは思えなかった。


 高校入学を期に部活にも入ってみようとは思ったが、どの部にも魅力を感じられずにいた。

 無理に入部する事も出来るが、部としてもやる気の無い者が入るのは嫌だろう。


 僕の通う伊勢山高校は部活動が盛んなことで有名で、全校生徒の全員がなにかしらの部活に入部している。

 僕もこの高校ならば! と淡い期待を抱いていたが、どうやらぬか喜びに終わったようだ。


 と、入学したてホヤホヤの学生にあるまじき暗い考えを巡らせながら廊下を歩いていると、


「へいそこの君!」


 うわっなんだこの人!?


 いきなり声をかけられて思わず驚いてしまった。

 いや、驚いた理由はそれだけじゃない。

 その人は普通ではなかった。

 なぜかシルクハットをかぶり、一丁前に蝶ネクタイなんて着けていた。

 それだけならまだ良い。極めつけは、

 おもしろメガネ で通じるだろうか? を装着していたのだ。


「ダイジョブダイジョブ、怪しい者じゃないヨ~」


 黒淵のメガネに付いているプラスチックの鼻からこれまたプラスチックの髭を生やしている。

 

 充分に怪しすぎるぞ……

 

「僕、急いでるんで失礼します!」

「はい待った!」

「ぐえぇ」


 早歩きでこの場から逃げようとした矢先、この変人にワイシャツの襟を強く捕まれたので、結果的に首が思い切り絞められる形になった。

 こいつは僕を殺す気なのだろうか。


「な、なにするんですか!」

「ゴメンゴメン。なんだか逃げられた様な気がしたから」


 どうやらただの変人ではなく、勘の鋭い変人のようだ。


「キミ、ブカツ──  あーこのしゃべり方めんどくさ」

「そこはキャラを突き通して!」


 うーん…… 何なんだろうこの人?

 見たところ女の子なのは間違え無さそうだ。スカート履いてるし。

 これでもし男だったら、申し訳ないが警察を呼ばざるを得ない。


「君さ、部活入ってないよね?」


 唐突な質問を受けた。

 戸惑いつつも最初は正直に答えようとしたが、先ほどまでのネガティブ思考と、どうせそうだろ 的な感じで聞かれ思わずムッとしてしまった僕は


「いえ、入ってますよ。帰宅部にね!」





 あー、これはスベったな……



 彼女の方を見ると、驚いた様な顔をしている。

 しょうがない。ここは自分のボケを自分で説明するという不名誉この上ない行動に出るしかなさそうだ。


「えーっと、つまりこれは──」

「そうだよね! 帰宅部だよね!」

「……は?」


 急に訳のわからない事を言われて思考がフリーズする。


「いやー良かった良かった。君の様に意欲のある子は初めてだよ!」

「あのー?」

「まさかこちらが誘う前に自ら申し入れるとはねー」

「もしもーし?」


 だめだこの人。


 さっきから独り言ばっかりだし、何言ってるか分からないし、何より嫌な予感がする。

 僕は抜き足差し足でこの場から離脱しようと試みる。


「何処に行くんだい? 部室はこっちだよ!」「ぶ、部室?」

「さ! 案内するから着いてきてね」


 なんてことを言いながらも、彼女の手は僕の腕をしっかりと掴んでいる。強制じゃねーか!


 かくして僕は、謎の変人少女に部室なる所へ連れていかれたのである。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


今日の活動報告!    記録:神宮寺真紀


部員を1人確保した! 

見た感じちょっと目付きが死んでるけど、別に悪い人ではなさそう。

これからこの子を調教して、私の忠実な部員にしてやる!グヘヘ


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