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異世界生活始め1ー1

前回のあらすじ

異世界に行くことにしました。

森の人として生きていきます。

 サイと手を振りあった後、朱里の足元がぱかりと開いた。文字通り。


「はっ?」


 朱里は落ちた。真っ直ぐに。


「え、えぇえええぇ?」


 穴の入り口はすでに塞がり、真っ暗でなにも見えない。風もないので、ともすれば、灯りの消えたエレベーターで一階へ降りている途中のような感じさえもする。

 だが朱里は落ちていた。

 暗闇の底らしき所まで落ちると一度体が跳ねた。トランポリンの様だった。


 心も弾んだ。わくわくした。


 次に底に降りた時は、暗闇からペッとばかりに吐き出された。

 朱里は地面に転がった。

 固い土と小石と背の短い雑草が生えた大地は朱里の体を受け止めるに十分なクッションにはならなかった。


 痛い。


 少し痛みに呻いて、朱里は起きあがった。

 昼だった。

 空は青かった。

 風も緩やかに吹いている。

 暑からず寒からず。

 いい天気だ。


 首を回して周りを見た。


 左側の遠くに、青く空に溶けそうな高い山が見えた。

 反対側にはやっぱり遠くに緑が見える。たぶん森。その向こうに民家っぽい赤い屋根で茶色の壁の家も見えた。

 正面は雑草が減り岩が増えていっている。昔、授業で習った。なんと言ったろう、砂漠の手前の風景だ。

 後ろを振り返れば草が広がっていた。草原だ。

 

 人も獣も、もちろん魔物もいない。


「異世界……?」


 答えてくれる人もいない。


 ひとまず自分の状態を確認しようと朱里は立ち上がった。


 目線の高さは変わっていなかった。

 ありがたい。

 いきなり高くなっていたら車幅感覚ならぬ人幅感覚が狂ってしまい、最悪歩けないところだった。

 髪も元の長さと同じだった。肩までのざんばら。自分で切っていたから。美容院にはここしばらく行ってない。

 色も変わってない。抜いてない色のまま、真っ黒だ。

 髪と一緒に耳に触れた。

 伸びていた。エルフ耳だ。エルフじゃなくて森の人だけど。

 服は、麻っぽい布の白いシャツと茶色いハーフパンツ。RPGの村人のようだ。


(ぐっじょぶ管理者さん!)


 朱里は早くも薄らぼんやりとしか覚えてない管理者を誉め称えた。

 朱里は死んだときパジャマだった。そのままだったら何も始まらずに終わっていた。

 さすがにパジャマで歩き回りたくないし、人前に出られなかった。


 靴は底に木の板が敷いてある布の靴だ。底板が足の関節に合わせて動かせるように三分割に割れているが、履き心地が考慮されている気配はない。

 こちらの一般的な靴なのだろうが、普段履いていた靴に比べると、固い。歩きにくい。長時間は歩けなさそう。

 そんな靴だ。

 旅立つ前に草履にしよう。朱里は心に決めた。


 昔、小学校の頃、学校行事で習った草履の作り方を未だに覚えている。アレンジもばっちりな程毎年作りやりこんだそれを、今、生かさない手はない。


 肩には身につけた覚えのない肩掛けのバックが斜めに掛かっていた。

 気になった朱里は、バックを外し、座って袋の中身を調べてみた。

 上から叩いてみた感じ、何も入っていない。薄っぺらいただの布袋だ。ひっくり返してみても何も出てこない。

 

 朱里はおかしいさに首を傾げた。


 管理者との話で、生活費を持たせてくれるという話があった。量にして百日分の生活費。

 地面にはない。手にも持っていない。

 なら、この身につけた覚えも、ここに来る前に買った覚えもない、自分の持っていたものでは確実にない布袋に入っているんじゃないかと思ったのだ。

 というか、入っていなければ、全くこの世界の銀行とか金庫とか預かり先とか知らないまま、探す所から始めなければならないので、是非入っていて欲しいのだ。


 朱里は袋に手を突っ込んでみた。

 何かに触れた感じがした。麻の布っぽい。

 引っ張りだしてみる。

 麻の袋だった。


 中身はお金だった。多分。

 見たことのない金色のコインが入っていた。


 目に写せば、管理者が与えてくれた常識の知識だろう情報が脳裏に浮かんでくる。それらは映画のエンドロールのように脳内を流れていった。

 朱里はこの世界のお金の種類と価値を理解した。

 頭の疲れと引き替えに。


 出てきた麻袋に入っていた硬貨が、聞いていたより少なかったので、もう一度袋を漁った。

 お金の入った麻袋は十個出てきた。

 十日分×十袋=百日分。

 分かりやすく使いやすい。


 薄っぺらい通学鞄のような白い麻布の肩掛けによく入っていたもんだと思った。入っている感触すらなかったのに。

 他にも何か入っているかもしれないと漁ってみたら、手紙が出てきた。


「この鞄はそちらの世界で少し高級な魔法鞄マジックバックというものです。鞄をタップすると中に入っているもの一覧と空き容量が確認できます。」


 やってみた。


 管理者のキャラ紹介、もとい種族説明の時に見たような黒い画面が鞄の少し上に浮き出てきた。


「中身:空、空き容量:1ガロン」


 容量の単位がわからない、ということにはならなかった。

 ありがとう、異世界基礎知識。


 1ガロンとは結構な容量だった。どれくらいかと言えば、簡単に言えば、体育館一軒入るぐらい。だいぶ大型の倉庫を持ち歩けるということだ。


「重さはいくら入れても入れてしまえば袋の重さだけです。また入れた物は時間が止まるので腐りません。袋の口以上の大きさの物も入ります。

 魔法鞄はサービスです。

 よい異世界生活を。

 サイ」


 朱里はあっと思った。

 そう、サイだ。管理者の名前。忘れていた。早すぎる。ちょっと恩知らずっぽい。


 十秒ほど落ち込んだ。


 まあ、人が覚えられないのは前からだし、もう会うこともないだろうから、十秒で回復したが。


 出したものを袋に片づけながら考えた。


「まずは買い物」


 最初に何を買うべきか。


 調味料か。

 獲物を捕っても料理に味がなければおいしくない。おいしい物が食べたくて来たのに、それでは来た意味がない。


 旅支度か。

 しかし、前の世界でも旅行に行った事は数えるほどで、それも設備が整った日本のホテルを利用しての旅だ。異世界で何もない旅に何を持って行けばいいのか分からない。


 草履の材料か。

 そりゃ、早々にほしいが、一番真っ先に買うものでもない気がする。町に行けばもっと良い靴があるのかも知れないし。


 しばらく悩んでいたが、朱里は立ち上がり、最初に民家っぽい建物を確認した方へ向かう事に決めた。


 まずは草原の人の町を目指す。


 この世界、町を作っているのは草原の人と砂の人だけだった。

 買い物が出来るのもそこのみ。他はこちらが欲しい物を持っている人を探して個人交渉だ。

 めんどくさい。

 そもそも今の状況では朱里には探せない。


 砂の人の町は砂漠の中に点在するオアシスだ。当然、何の装備もないまま砂漠越えなど出きるわけがない。異世界人の朱里でも分かる。だから今の時点では行けない。

 必然、草原の人の町を目指すことになった。


 故に、朱里は民家を目指した。

 そこで道を聞くのだ。


 異世界基礎知識の中にこの世界の地図はなかった。近所周辺の地図もなかった。地図自体がなかった。文化レベルがヨーロッパの中世で、地図が無いわけはないはずなので、地図が一般に浸透していないのだろう。

 脳内で土地勘をゲット出来なかった朱里は人に聞くしかなかった。なので人がいる民家を目指す。


 しかし、思惑は外れ、民家は民家ではなかった。道は知れたが。


 民家はその向こうにある湖の渡し船が停発する乗り場の受付小屋だった。

 受付小屋の中にあった観光案内所で聞いた話によると、西側の草原の人達が暮らす平野部は河川が多く、渡し船による交通網が発達しているという。

 湖は船の停留所だった。

 全ての船はここから南下して海へ、北上して王都へと散る。


 そんな訳で人のあふれる渡し船乗り場の受付小屋で、朱里は物や人が集まるという湖の向かいのリンドという街に向かうことにした。


 ちなみに湖のこちら側に町はなかった。

 聞けば、国境が近いのと、国境である山脈に魔物が出るので、軍の管轄地帯となっており一般人は居住できないという規則が草原の人の国にあるそうだ。

 もっとも、山に近づけば森の人がいるらしいし、山を登れば山の人もいるらしい。

 彼らは戦闘民族なので魔物が出ようが関係ないそうだ。

 一方、草原の人はそんなに基本強くはないので、軍が魔物を寄せ付けないように警備している。

 怪しければそれなりに尋問されるが、行き来は自由とのこと。ハンターによる狩りは勿論、一般人による薬草の採取なども行われているそうだ。


 知識はあるとはいえ、物慣れず右往左往していて慣れた旅人にも、かといって地元の人間にも見えず、怪しい人物の自覚のある朱里はこれを聞いて、軍人に会わなくて良かったとほっとした。


 船の料金は安かった。

 比較対照は脳内知識に入っていた地上を行く馬車料金だ。


 船を待つ間に聞いた話では、川がない区間で使われる馬車は馬の餌代という経費が掛かる分、船より割高になるのだとか。船も人件費が当然必要だが、風や魔法の利用で馬の餌代などより低く押さえられているという。


 人が多ければ、話をしている人も多く、にぎやかで、聞くともなしに朱里は情報収集していた。


 魔物の王が生まれたのをギルド本部が認めたとか襲撃されたとか、王宮で王が何者かに何回目かの襲撃を食らったとか、勇者が南にある迷宮を突破し聖剣に見事認められたとか、聖女の結婚が決まっただとか。


 なんだか物騒で、剣と魔法の世界だということだけは再認識できた。

 地球の常識を持ち込んではいけない。

 魔物の王はともかく、何回も襲撃食らってる王宮の警備や、剣に認められるとかいう、あたかも剣に意識があるような言い回しにつっこんじゃいけないのだ。きっと。


 朱里はつっこまなかった。そもそも知らない人の話につっこめるコミュ力もなし、欲しくもない。


 時間が来て乗った船の上から見た湖はだいぶ大きかった。

 船がいくつも行き交い、対岸は見えない。けれども、風を感じない割に、船にスピードがあるのか、対岸にはすぐに着けた。


 乗り場を出ればリンドである。


 見張りの役人が立っているだけの出入り口を抜け、街に入れば、そこは石畳に煉瓦の家。写真やTVで見るヨーロッパの風景だった。


 ちなみに朱里は実物を見たことはないし、そもそも国外へ出たこことすらない。だから本当にそうかと聞かれると困る。

 まあイメージ的にそれだという程度だ。


 道端に競って出された店先には果物、野菜、肉や道具などさまざまな物があり、多くの人でにぎわっている。


 朱里はまず宿屋を探した。


 実はだいぶ日が傾いていた。そろそろ夕方だ。

 お金はあってもお金しかない朱里は、今日、一食も食べていない。

 前の世界のあれは今日の一食にカウントしたくない。

 今日の出来事なのかどうかも分からないし。

 つまり、朱里は、食べたいし、休みたいのだ。


 この街の宿の相場がわからなかったので、何軒か聞いて回ることになった。

 結局は乗り場近くの聞いた中ではやや高めではあるが個室のとれる内鍵付きの宿にした。

 初めてだし、買える安全は買っておくべきと判断したのだ。

 ここは今まで生きてきた平和な日本ではないのだから。


 宿屋に腰を落ち着けた朱里はまず夕飯をとることにした。

 この宿は夕食と朝食が出るらしい。

 初めての異世界飯だ。 

 朱里は期待に胸を躍らせた。


 一階の食堂に向かえば、すでににぎやかな声がする。

 テーブルの間を歩いている従業員に夕食をお願いすると快く席に案内してくれた。

 しばらく待てば湯気の立つ皿が朱里の前に置かれる。


「ごゆっくり」


 そう言って離れるお嬢さんにお礼を言って、本日最初のご飯と朱里は向き合った。


 メニューはパンとスープと肉の塊、少し葉物野菜を添えて。

 まずはスープ。

 コンソメなのか透明で茶色い。具は小さくサイコロ状に刻まれた人参とジャガイモ。異世界だから違うかもしれないがそう見えるからそれでいい。

 脳内の異世界基礎知識で食事のマナーを確認。


 いざ実食。




 ……味が薄い。




 貰った料理知識とスキルが足りない調味料名の挙げてくれる。が、ひとまずそれは横に置いておいて、次はパンだ。


 固い。


 スープに浸してみた。

 柔らかくはなったが、味が足りない。

 頭の中でまたアレンジ方法が流れてくる。

 少し鬱陶しい。


 最後に肉の塊だ。


 硬い。


 ナイフが切りにくい。筋張っている。日本の固まり肉とは雲泥の差だ。すじ肉だってここまで固くない。

 どうにか切り分けて口に入れる。


 味が薄い。


 茶色いソースがたっぷりかかっているから味が濃いのを期待していたのだが、見かけ倒しだ。


 これは調理法がまずいのではないかと朱里は目の前の料理を疑った。

 脳内で料理知識と異世界常識知識、めんどうだからまとめて脳内知識と呼ぶ、がこの肉についての情報をいろいろ流してくれる。

 その中に肉の価格と調味料の価格と今日の料理の一般的おいしさレベルもあった。

 常識以上の知識も入っているが、料理に関しては何でもアリのようだ。

 その情報によれば、草原の民の一般人的にはそれほどおかしな食事でもないようだ。


 まあこれがまずい食事なら、この食堂はこんなに騒がしくも明るくなく、沈痛と怒号に満ちているだろう。


 ただ、それは草原の人の間だけで、森の人や砂の人、雪原の人はもっと柔らかなパンを食べているし、肉だって山の人や森の人が食べる肉は固くない。スープや他の味付けについては、そもそもどこでも調味料は足りていない。高いので仕方ない。だが、それを差し引いても、どうやら草原の人の食文化は周囲の種族ほど高くはないようだ。残念。


 朱里は一生懸命、顎を動かし、食事を続けた。幼い頃からの一度取った食べ物は残してはいけないという教育のせいで残すことに罪悪感が伴うので、顎が痛くなるまでよく噛んで食べた。


 感想、明日は柔らかいものが食べたいです。


 部屋に戻った朱里は痛む顎を押さえながら再び考えていた。

 もちろんこれからの旅で必要なものをだ。

 だって旅支度はお金しかない。


「まず、調味料。ないとご飯はおいしくない。高いよなー。味噌とか醤油なさそうだし、……あぁ醤油は魚醤か……味噌ないな。麹も無さそうだしなぁ。あ?千年前にちらっと記述がある?でも新し目のレシピに麹使った物がない。残って無さそう」


 座った布団は固くて薄い。が、狭い部屋には机や椅子はなく、ベッドに座るしかなかった。


「あとお風呂。地下にあるって言ってたけど、着替えないしなぁ。

 着替え買わないといけない……?

 火と風の魔法で乾かせないかな?あ、あった。……うん、使える使える。これでお風呂の時服洗って乾かせば代わりの服いらない……あー洗剤がないっ。ついでに石鹸も。あ、ある。でもすっげー高級品。やばい手が出ない。生活費考えると手を出しちゃだめなレベルのやつだこれ。しかも、お風呂蒸し風呂ですか、蒸し風呂じゃついでで服洗えない!

 桶買わなきゃなぁ……魔法で水、出せるな。うん。

 石鹸の作り方なんか知らないしー、手作り石鹸って油をなんか海藻からとれる成分で固めるとか聞いたような……。詳しく調べときゃよかった。現代知識」


 必要な物を確認していく内、朱里は落ち込んだ。

 傍から見れば自分の思いつきにつっこみ、独り言をぶつぶつ言ってる怪しい女だが気にすることなく、一人で憤り一人で落ち込んだ。


「あ、待てよ、現代と言えば、ここ生理用品……ですよねー。うん綿高いよね。江戸時代だよね。理解した。

 種族的に生理ないとか……ですよねー」


 朱里は少し後悔した。

 青年期・壮年期が長いと言うことは、女性ならばそれすなわち生理や生理痛との付き合いも長くなると言うことだ。

 遠慮したい。

 特に生理痛。

 だが子宮がある以上、これは避けられない問題であり、女性が旅暮らしをする最大の障害と言ってもいい。


「なんか似たようなのないかなぁ。女性のハンターってどうしてるんだろう」


 剣と魔法の世界らしく、この世界にはゲームの冒険者制度のようなものがある。

 傭兵やハンターと呼ばれる彼らが所属するギルドもあり、大陸各地に出張所がおいてある。本部は東南の魔物の生まれる大渓谷と東の大山脈が突き当たる東側の山の裾野にあるらしい。

 魔物退治が主な仕事のハンター発生事由から考えれば妥当な場所だ。


「明日ギルド登録ついでに聞いてみよう」


 ギルドのある世界だから、当然、ゲームのように依頼の発注や受注、薬草や魔物の有用部位の買い取りが行われている。

 ただしこれらはギルドに登録し、ハンターとなっていなければならない。


 それにギルドに入れば、身分証が手には入る。

 この街はそうでもなかったが、王都や警備の厳しい国や街は場合によっては身分証カードではないがなければ入れてもらえないのだ。


 犯罪歴さえなければ、ハンターの身分証はすぐ手に入り、どこの国や街でもフリーに出入りできる便利なものだ。入会しない手はない。


 その他にもギルドの身分証には個体識別機能があり、持ち主かどうか分かるのでなりすまし不可だし、討伐歴も記録される。それによってランクが設定され、ランクによっては優遇制度もあるようだ。


 まあ、この異世界に生活基盤のない朱里にしてみれば、日々の生活に困らないだけ稼げればそれでよく、旅のついでに稼げる優良な就職先というだけだ。


 結局、大容量の魔法鞄があるのだし、多少高くてもこれからがんばって稼ごうと一気に必要な物を買うことにした。

 調味料各種を手に入るだけ、調理器具一通りに食器一組、それから服を暑い所用と寒い所用の各一着ずつ。その他ギルドで旅に必要と言われた物を用意することにして、朱里は地下の蒸し風呂へ向かった。

 地下の蒸し風呂には水風呂が付いていたので、魔法を使わずにすんだ。

 借りた桶を使い服を洗って、魔法で乾かして部屋に戻って、朱里はそのまますべてを明日に任せて寝た。


 ちなみに魔法初使用だったが、長ったらしい呪文も必要とせず、必殺技のように何かを叫ぶ必要もなく、使用時に派手に光ったり、力が視覚化して周囲を踊ったりもしなかった。

 二十歳にも近い年齢でそれらを行うには恥しかなかった朱里はただ便利だと喜んだ。

 朱里にはファンタジーに対する憧れはなかった。

 異世界転生し甲斐の無い女である。


 そうして、寝る用の服がいるなと最後に思い、朱里の異世界生活初日は終了した。



20.4.25改稿

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