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その7 新聞部の結論

 引退式はあっという間に終わった。不思議と匠達三人には全く不安そうな顔が見られず、私達は何だか安心したのを覚えている。引退してからも私は匠と会った時に新聞部の話を教えてもらっていた。

  そして私達は3年生に進級し、新歓も無事に終わった。栞は部活の手伝いに行っていたけれど、私とガクは敢えて行かなかった。

  匠から、新入生が何とか3人入部したという話を聞いて1週間後。私は何の気なしに部室の前を通りかかった。


 「あ、杏先輩」


  また背が高くなったように感じる市来くんが声をかけてきた。隣には匠もいた。


 「遊びに来たんですか?」

 「いや、ただ覗きに来たっていうか・・・・・・」

 「今年は女子が二人入りましたよ!奏がめちゃくちゃ喜んでます。な、嵯峨っち」


  ああ、と匠は答えた。奏と言われてふと思い出した。


 「今は嵯峨さん達がいるから、全然寂しくないです。・・・・・・これからもずっと、仲良くして欲しいなぁ」


  いつだか呟いていた奏の言葉。部室の向こうからは私の知らない後輩の声に混じって、奏の弾んだ声もした。私は自然と言っていた。


 「二人にお願いがあるんだけど」

 「何ですか?」

 「奏のこと、よろしくね」


  二人は互いに顔を見合わせると、匠が言った。


 「今更頼まれる事でもない。結構前からずっとよろしくしてやってるからな。もちろん、任せてください」


  そう言って二人は部室に戻っていってしまった。私達がたった1年世話してきた後輩達。皆とってもいい子。

  ある日、私は栞と一緒に帰り道を歩いた。この美少女とは3年間一度も同じクラスにはならなかった。いや、逆にそれはそれで良かったのかもしれない。美人部長にはかなり振り回されてきたものだ。


 「長かったようであっという間だったわね、部活。まだ名残惜しいなぁ」

 「まあまだ新歓から一ヶ月も経ってないからね」

 「私ちゃんと部長できてたかな」


  ぼそりと呟いたその言葉は何だか予想外だった。あんなにも今まで堂々と部長を務めてきていたのに、こんなことを考えていたなんて。ちょっと見直したかも。


 「できてたと思うよ。栞はよく頑張ってたよ」

 「杏が言うとお世辞にしか聞こえないのよね」

 「ひどい……前から思ってたんだけど、何で栞って新聞部に入ったの?」

 「笑わないでね」


  いつになく真面目な顔つきを見せる栞に、私まで思わず身構えてしまった。その言葉の先にあるものは何なのか。数秒間の間、私は黙って待った。


 「青春謳歌したかったの」

 「……は?」

 「皆で何か一つのものを完成させる!そういう青春を楽しみたかっただけ!!」


  栞は私に笑ってみせると、スキップをして前に歩いていってしまった。布良栞はやはりただ者ではなかった。誰よりも強く、そして誰よりも不思議な存在だった。


 「杏、私達だってあいつらに負けてはいられないよ!」

 「……当たり前でしょ!!」


  何やかんやで、結局私はこの部長が、後輩達が、部活が大好きでした。長い長い私のエッセイを読んでくれてありがとう。


 速水 杏

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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