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第一話
城下町、朝日が上る頃。
小さな一軒家。
目を覚まして、ゆっくりと窓の外へと目を向けた。
「............」
目に映るのは白銀の世界だ。
空から降る雪は、昨日の夜から一度も止んではいないのだろう。
少女が空を見上げると、灰色の雲がどこまでも続いていた。
いつになっても止まぬ雪は、食料不足へと繋がり、毎日の不安が人々の心を蝕んでいる。
少女に不安を与えまいとする両親の笑顔も、しかしそれを隠し通すことは出来ていなかった。
毎晩次に目が覚めたとき雪の止んでいることを期待して、毎朝それを裏切られる。
少女の瞳に宿る光は弱々しい。
希望を抱くには、少し、疲れてしまったのだ。
ゆるやかな絶望で少女の心はいっぱいになる。
ベッドの上で膝をつき少女は目を閉じた。
両手を顔の前で組み、遠くそびえる塔に祈りを捧げる。
少女は願う。
どうか、父と母が心から笑えますように。
笑える日が来ますように。
両親の、本当の笑顔が見たいんです。