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Main chapter1「ノーバディ」

どうもはじめまして、貧弱です。

こんな作品に時間をかけるのも無駄なので、駄作だと感じた方はすぐに指かマウスカーソルをバックのとこにもってってください

空を見上げた。

海鳥を追いかけるかのように雨雲が空を侵食していく、風は音を鳴らしはじめ、次第に冷たい雨水をポツポツと身体に打ち付けてくる


「DMT2、雨が降っているぞ、ポッドへ戻れ」


こちらに声をかけたのは軍服を着た女性だ、名前は分からない。ただ、命令には従わなければ処分されてしまう、彼女の言葉に従い「基地」と呼ばれている場所へとテレポートを始めた、基地に転送される直前に周りを見渡すと安心感のある見慣れた街並みが目に入る。

破壊され尽くした港と、崩壊してしまった建造物が。


……


転送が完了した、基地のとある部屋内に飛んだわけだが部屋というには余りにも殺風景で、寝転がるスペースもなく窓も家具も台所も物入れも何一つだってない、あるのはただ一つ「DMT2」と書かれた大きなカプセルのみ。自分はこの中に入って就寝する、ひどい時はこの中で一日を過ごした、呼び出されるまでずっと動けない。

数年前まで自分は人間だった、今の体は人間のものではないらしく基地にいる彼らによると未知の素材で形成されているらしい、肝心な自分の見た目はというと人のシルエットは保っているものの鉄くずの集合体にしか見えない、もっと言えば鉄が集まって人の形を作っているみたいな……とにかくそんな見た目である。どうしてそんな体になったのかも分からない、「自分は人間」というのは分かっていても「どんな人間」かわからない、つまるところ記憶喪失だ。言葉は話せるが人間には何も伝わらなかった、というのも、こちらが日本語を喋ったとしても通常の人間にはどこか遠い国の言葉に聞こえるんだとか、その遠い国はおそらく存在しないのだが


《コールDMT2、直ちにフェアルへ転送せよ》


呼び出しだ、テレポートを使いフェアルへと転送を開始した。フェアルというのはさっき居た街だ、色々と街としての機能は失っているものの人は住んでいる、言葉が通じない自分にも優しく接してくれたり空気がおいしい場所へと案内してくれたりと、たまに設けられる自由行動時間を無駄にすることがなかった


「こんにちはDMT2」


港へ転送が終了した後すぐに声をかけてくる男性が1人、やはり軍服だ、言葉で返せないため男性に頭を下げると「顔を上げて」と焦ったような声が聞こえるためすぐに頭を上げる


「えっと……コミュニケーションをとるのは難しいから一方的にこっちが話すことになってるんだ、ごめんね」


なんだかんだでお世話になっているためそのくらいの条件は飲む、紙などに文字を書くのが一番いいのだが、あいにく用意してくれていないみたいだ


「DMTの意味、覚えてるかな?Danger Monitoring Target、君に英語が伝わるか分からないから単語で言うと危険、監視、対象になる、僕らが基地と呼んでいる場所に君を縛り付けてたのも、未確定な部分が多くて危険な存在かもしれない君を監視するためなんだ。といっても君に危険性がないのが最近いろんな所に認められててね」


男性はそのまま続けた


「何が言いたいのかだけど、つまり君の名前……というよりDMTという番号が変わるということを伝えにきた、LPWGっていうのになったんだ、意味は───」


唐突に口が止まった、それどころか「しまった」というように男性の顔が固まった、なにがいけなかったというのだろうか?もしかして自分に話してはいけない内容だったか?


「意味は教えちゃだめだった、忘れていたよ」


なるほど、事情は分かったが意味不明の一言に尽きる、まぁ何年か自分を様々な方法で収容してきた彼らのことだ、なにか事情があるに違いない


「そして番号が変わっただけじゃない、上層部の提案で君に世界を旅してもらうことにしたんだ」


旅というと……自由?狭く窮屈なところでもう過ごさなくていいということか。

内心喜びつつも男性の言葉を遮ることなく耳に入れ続ける、とはいえあまりに突然な報告だったため腰が抜けてしまいそうだ


「君に私物は無いから今すぐにでも出発してもらうんだけど、旅のお供というか……通訳を付けさせてもらうよ、君の言葉や声は難解でとても会話ができたものじゃないからね」


まてまて、言葉がわかる人がいるのか、今までのコミュニケーション手段は手紙などのメッセージしかなかったのに。

今の体に人間の内部器官があったのなら間違いなく涙を零していたことだろう、通訳ということは会話もできるはず、言葉を発して会話のキャッチボールができるのがここまで嬉しかったとは


「そうそう、君に1つだけ旅の課題が出てる、「通訳を守りつつ歩を進めよ」だってさ。以前行ったテストの結果、君は瞬発力、身体能力、力の強さ……その他、どれをとってもどんな軍人より優れていた、それを踏まえたうえでの「守りつつ」だと思うよ。通訳の子はこの町の門にいるはずだから探しに行っておいで、その子を見つけたらあとは任せる、宛のない旅を楽しむといいよ」


背中を押される、押された勢いで数歩歩いて振り返ると男性が親指を立てて清々しい笑顔を作っていた、その笑顔が「楽しんでくるといい」の笑顔なのか「やっとコイツに会わなくて済む」の嬉しさによる笑顔なのか、自分ではもう判断ができなくなってしまっている。

相槌を打つように……あるいは別れが惜しいとアピールするように、こちらも鉄くずの親指を立てて足を廃墟の街へと伸ばすのだった



~~~



街の人たちは相変わらずだった、「どこに行くの?」と聞かれ、すかさず紙とペンを手渡されたため「旅に行く」と書くと、街中の人がわらわらと集まった


「外は危険な場所もある、これを持って行きな!」


少し肩がこりはじめたらしいおじさんからナイフを手渡された、物騒なので首を横に振って要らないと断る


「お腹がすいたらこれを食べるといいよ」


漁師の妻から新鮮な魚(生きている)を渡された、流石に生だと腐るので紙に書いて「要らない」と断る


「これおいしいよ、あげる」


遊び盛りの少女からどんぐりを渡された、頭を撫でてやったら少し怖がられたみたいで、どんぐりを無理やり押し付けて母親の後ろに隠れてしまう


あとは移動用の車だったり武器になるものだったりありがたいけどかさばるものだったり、とにかくいろいろなものを譲ってくれた、流石に貰うのは悪い上にそんなに荷物を持てないのでほとんどのものは断ってしまうが、街から一歩踏み出すまでたくさんの優しさを貰った、これで十分だ、少なくとも今は。


そして現在、門の前。石造りの道と草が生えた景色の中に小柄な三つ編みの女の子がポツリと立っている、美しさすら感じる茶髪とそのスーツ姿は「仕事」を連想させた。この子が通訳か……、とにかく声をかければこちらに気づくはずだ、呼吸を整えて、意を決して、これから旅をするのだと覚悟を決めて、言葉を作った


『vaxA6k, /d,chhvdnvkl』


こんにちは、と、自分はそう言った、伝わってくれ。


「……あ」


女の子はこちらに気づいて、言葉のボールを投げ返す


「こんにちは、これからよろしくお願いしますね!」

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