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プロローグ
そう、あれは確か、小学校の卒業文集に書いたんだ。
「大人になったら絶対に小説家になる!」って。
作文コンクールでは、賞を総ナメ。
学級新聞だってお手のもの。
アイツは面白いものを書くって、周りからいつも高く評価されていた。
家でも学校でも、暇さえあれば物語を書いて、クラスメイトに読ませていた。
早く続きを読ませてと何人にもせがまれたっけ。
そんな私には、他になんの取り柄もない。
書くこと以外に他人に勝てることは何一つなかったけど、文章を書けるってことは、自分の中の最大級の希望だった。
気がついたら「自分は小説家になるんだろうな」と思うようになっていたのは、ごくごく自然なことだったのかもしれない。
そんな私、妃野文香24歳。
現在の職業、ゴーストライター。
人生、そうそううまくは運ばない。