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夢を語らう是非

 ご存知の方もいるかと思うが、章の題名は「バク」と読む。


 バクとは豚のような体と象の鼻のような口をもつ哺乳類である。読者諸兄が一番最初にイメージされたのは、白黒模様がなんとも特徴的なマレーバクであろう。分からない方は、検索していただきたい。なかなかに愛らしく、しっかりとキャラ付けされている動物である。


 しかし。この物の怪日和という小説は、妖怪物の怪魑魅魍魎、悪鬼羅刹に恋愛亡者をとり扱う。つまり、冒頭で説明した動物としてのバクが登場するわけではない。妖怪物の怪としての獏。あの夢を食べる獏である。

 つまり本章は、寝るときに見る、夢を題材にしたものとなる。


 夢。なんとも甘美な響きである。

 現実ではないそこでは、あらゆることがなされる。皆様も様々な夢を見られたことがあるだろう。


 自分がヒーローになり、悪者をやっつける夢。

 意中の人が登場し、恋愛成就する夢。

 なんだかよく分からない、奇妙な世界を旅する夢。

 谷から落下する夢。

 なすびが登場する夢。


 とまぁ、夢の種類を上げればきりが無い。それこそ人それぞれ千差万別、いや、人によっても何種類も見るのであるから、それこそ夢の数は那由他なゆた彼方かなたである。


 本章は、私の見た夢を赤裸々に暴露することになる。つまりは私の夢物語が大筋である。「お前の夢物語なんぞ、聞いてもどうなるものでもないじゃないか、このカブトムシ!」という御仁は、今すぐ回れ右をしていただきたい。そしてカブトムシに罪は無いので、カブトムシに謝罪と賠償をしていただきたい。


 話を戻すが、無論読む読まないは読者諸兄の自由である。夢オチを認めない方だっているだろうし、読めと強制する事だってできないのだ。なので事前に警告だけはしておく。これは私の優しさアピールである。もしそれでも一向に構わぬ。読んでやろうではないか。という方のみ、本章をお読みいただきたい。


 それでは物語の始まりである。


「先輩、たまには飲みませんか?」


 笹山のこの言葉が事の始まりである。そう、あの狐と狸が争奪戦をやらかしたあの笹山である。かなり以前に登場をしているので、お忘れの方も多いかもしれないが。

 笹山については依然大雑把にご説明した。なので、その追記をさせていただく。


 私たちは大学のゼミで知りあった。

 私の所属していたゼミは、今風に言うならリア充の巣窟であった。イベントサークルや飲み会サークルに所属し、青春をこれでもか、と謳歌する学友達だった。もちろん絵に描いたような内向的でインドア派の私に溶け込める理由なんぞは無かった。

 しかし。笹山はそこに簡単に溶け込んで、中心となった。積極的に動き、周りとコミュニケーションをとる姿は、私の一種憧れだった。なぜ私がこの男と仲良くなったかはよく分からない。動きの早い笹山に巻き込まれる感じであったかもしれない。

 学生時代からリア充。そして今でもおそらくリア充。どこをどう切っても完璧に近い男である。


 その笹山からのお誘いである。別に断る理由もない。ご想像のとおり、私は相も変わらず暇を持て余し、そして弄ばれている。私の週末は、暇か物の怪に蹂躙されるのどちらかしかない。こんな人生まっぴらである。


「今は宅飲みが流行ですよ」


 その笹山の言葉に釣られ、笹山宅で飲むことになった。

 そして来る週末。酒とつまみを買い、笹山宅を訪問する。笹山の家は、そのリア充度合いと比例するように、綺麗でおしゃれ、そしてオートロックまでついているマンションであった。


「あ、先輩。どうもどうも」


 到着した私を招き入れる笹山。そういえば私はこの家に入るのは初めてである。しげしげと中身を見渡す。

 間宮部屋と同じように、広いリビングと一部屋があり、いわゆる1LDKというやつだ。そしてカウンターキッチン。内装も外面そとづらに負けないくらいおしゃれな雰囲気。そして、髪の毛一本すら落ちていなさそうな、清掃された室内。それはさながら、笹山の人生を象徴するかのような、清潔感のある室内であった。


 私は先輩ながら、笹山に対して敗北感と劣等感を抱いて仕方がない。私は何故こう生まれてしまったのか。いや、そこを呪ってはいけない。呪うのは自分の選択だけでなければならない。過去の自分のせいで、今の自分がある。しかし過去の自分を呪うと、今の自分も呪われるのではないか、と思うので止めておく。黒魔術にお詳しい方は、このあたりこっそり教えていただきたい。


 かくして酒宴は催されることになった。

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