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結界。その先に

 加藤について詳細に記す。

 なお今回の紹介は、加藤の内面がお下劣星人である以上、多少卑猥で猥褻かつ猥雑な言葉が出てくるので事前に申し上げておく。ご注意されたし。読みたくない方はこの部分を飛ばしていただきたい。


 本題に入る。加藤についてである。

 加藤のルックスは独身貴族の間にあって、場違いなほど恵まれている。

 生まれながらに軽い茶髪でほんのり少し天然パーマ。オシャレパーマをあてたような感じをイメージしていただきたい。そして目も大きくクリッとしていて、かわいらしい印象を与える。大雑把にジャニーズ系といえば分かりやすいだろうか。背は低めで細身な体型も、その見た目の可愛らしさを上昇させているといえるだろう。


 そんな見た感じで独身貴族に入るというのはなんとも筋違いではないか、と思われた読者諸兄も多いであろう。

 しかし、加藤はそんな見た目とは裏腹に、どず黒い欲望を抑えられない男なのである。どす黒い欲望とは、以前にも少し書いたがAVに関する欲望なのである。なお、AVとはあの猥褻なアダルトビデオであり、愛らしい動物がふんだんに盛り込まれたアニマルビデオではない。


 この男、好きな女性のタイプにAV女優を公言するほどAVが好きなのである。まぁそれだけならどうということもないかもしれない。問題はそれを隠そうともしないことだ。例えば。合コンで女性と出会い、好きなタイプの話になったとしよう。定番の話題である。そこで女性は加藤より聞いたことの無い名前、AV女優の名前を聞くのである。そこからが加藤の独壇場。いかにそのAV女優が素晴らしいかの布教活動が始まる。顔の造形からはじまり、スタイル、そして艶っぽい演技まで全部まるっとひっくるめて。それを男女問わず、である。

 つまり加藤は、女性と出会った第一印象が高い部類。しかし第二印象が最底辺な部類の入るのだ。まぁいきなりセクシャルな、しかも自慰行為に関する話が出ればさもありなん、である。

 あるレンタルビデオショップでは、あまりにもAVばかりを借り、しかも常に限度枚数まで借りるので「キング」とあだ名をつけられるほどの男なのだ。そういう意味では中村に近い。特化している方向が違うだけだ。


 さて、悪いことばかり書いたので少しフォローも入れておこう。私を含め、独身貴族も健康で健全な日本男児である。雲や霞で性的欲求が発散できるわけも無く、ごく当然にそれを猥褻なDVDなどで発散する。そんな時、これぞまさに加藤の出番である。魔女の釜にてあれやこれやを煮込んだような我々の猥褻な欲求を、女優、シュチエーション、そして我らの体調すらかんがみてハードなものソフトなもの、硬軟織り交ぜて猥褻なDVDを紹介してくれるのである。そしてその全てに外れが無い。この加藤と言う男、AVのソムリエと言えるのである。「お客様。本日はこの女優の二年物が入っております」「うむ。それをもらおうか」というやり取りが、あるような無いような。

 ここまで書いて思ったが、全然フォローになっていないような気もするが、読者諸兄気にせずお願いいたしたい。

 まぁ加藤とはそんな男なのである。

 加藤といえばAV。AVといえば加藤、我ら独身貴族のなかで色欲を司る男は伊達ではない。独身貴族中、最も実用的な男とも言えるかもしれないが。


 そんな男に彼女ができたのである。これは一大事である。加藤の彼女さんは、菩薩か仏かそれとも聖母か。


 現実に話を戻す。

 加藤を発見した私は、式神どもに現在の居場所をメールする。もちろんその間も、加藤と彼女さんを尾行するのも忘れない。スタスタと前を歩くリア充と、その後ろから食い入るような視線を送る非リア充な独身亡者。同じ時間軸、同じ空間にいるのにこの差はなんであろうか。詳細に考えると二割ほど死にたくなる。残りの八割は生きる意思である。生きると決めた人間には美しさが宿るというが、果たして私は美しいのであろうか。


 そんなことを考えていたら程なく後ろから声をかけられた。

 私のパートナー、塚田である。なおパートナーと書いたが人生の伴侶、という意味ではもちろん無い。少しでもそんなことを考えた人がいたら、今すぐ鹿に追いかけ回られていただきたい。そして奈良行きの電車は自己負担でお願いいたします。それこそが罪の償いなのだ。

 話を戻すが、合流を果たした私たちは尾行を続ける。


 少し歩くと加藤たちはあるショップに入っていった。

 そこはまた可愛らしい猫をモチーフにしたキャラクターグッズの店であった。店先から内装までが大多数のピンク、そして少しブルーこれでもかと溢れており、男二人で入るには非常にハードルが高い。式神である我々には結界が張ってあるかのように入ることが不可能であった。

 即座の式神どもにメールを送る。「対象は結界が張られている場所に入っていった」と。


 仕方なく店の外で待機する我々。

 おそらく中では加藤と彼女のきゃっきゃうふふ、軽やかで甘い会話が弾んでいることだろう。やれこれがかわいいだの、やれこれは似合うだの、そんな会話をしているに違いない。加藤爆発しろ。今すぐ大急ぎで慌てず騒がずゆっくりと爆発しろ。


 そんなこんなで加藤達がショップから出てきた。手に袋をぶら下げているとところをみると、何かを購入したようである。

 少し離れて尾行する我々。

 すると、またもや後ろから声をかけられた。

 声の主は中村と間宮であった。どうやらここで交代をしろ、という意味であるらしい。それにしてもよくこの場所が分かったものである。具体的な場所は示していないのに、結界というフレーズだけで推理したとでも言うのであろうか。このあたり、間違いなく脳みその使い方を間違えている気もするが、まぁいい。それも瑣末な問題である。

 軽くタッチし、後番へ譲ることにする。間宮、中村。後をよろしく。

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