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物の怪日和(モノノケビヨリ)  作者: 白房(しろふさ)
第十一章 だいだらぼっち
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三十路の尖兵

※本作「だいだらぼっち編」は、小説家になろうでも活躍中の、きょうげん愉快さんにネタをいただきました。感謝。


きょうげん愉快さんのページ→http://mypage.syosetu.com/63983/

 ハーピバースデー 三十路~


 ハーピバースデー 三十路~


 ハーピバースデー ディア間宮く~ん


 ハーピバースデー 三十路~



 「間宮君おめでと~!」


 (パチパチパチパチ…)



 ここまでで分かっていただけるかと思うが、今日は間宮の誕生日会である。私たちもとうとう三十路の仲間入り、その尖兵が間宮なのである。

 孔子先生曰く、三十のときたつと言う。学問などの基礎がきちっとして、一人立ちができるようになるということである。つまりは一人立ちのときだ。

 しかし間宮はすでに自立していると言わざるを得ない。某私大にて学問は修めているし、職にもついている。さらには親のすねをかじるのを良しとせず、親元を離れて絶賛一人暮らし中である。

 そう考えると独身貴族の中で、一番社会的にまともなのは間宮なのではないかと思われる。少なくとも無職の片岡よりはまともであることは明白だ。比べるまでも無い。


 間宮誕生会の列席者は、独身貴族たるいつもの面々。

 三十路を迎えた間宮をはじめ、塚田、林、中村、片岡、そして私。いずれ劣らぬ傑物どもである。元独身貴族である加藤を呼ぼうかとの話もあったのだが、やはりここは現職の独身貴族のみで行うこととなった。加藤がいては、嫉妬の炎で誕生日会がゴウゴウと火の車となり、地獄変となりかねないからである。


 さて現在の状況を少しご説明しよう。


 場所は間宮の部屋。あの間宮に似つかわしくなく小奇麗で、そして間宮に似つかわしい冷蔵庫の置かれているあの部屋である。また凄惨せいさんな事件、かまいたちの夜が行われた場所でもある。死人こそ出ていないものの、精神的被害は甚大じんだいであり、あれほど凄惨な事件は新聞に載るレベルである。


 部屋の真ん中には机が置かれており、豪勢な食事が所狭しと置かれている。

 間宮が大食漢ということもあり、机の上には間宮の好物が溢れんばかりに配置されている。

 ローストチキン、ローストビーフ、ステーキ、から揚げ、チキン南蛮など等である。これらは先ほどまで我々独身貴族が丹精をこめて総菜屋で購入した品々である。しかし肉に特化されているような気がしてならない。まぁ誕生日会である、このくらいでちょうどいいのであろう。

 なお今回、独身貴族の集まりであるが、牛丼は無い。さすがに誕生日会に牛丼はいささか場違いすぎる。誕生日くらい男地獄から抜け出してもよいではないか。お釈迦様もそのくらいの目こぼしはしてくれるであろう。


 そして誕生日会といえば、ケーキである。祝うところにケーキは欠かせない。

このことに異論のある方はいないであろう。無論間宮の誕生日を祝うこの会もにもケーキは登場する。それは現在、机の真ん中に鎮座ましましている。そしてその上にはぶっとい蝋燭が三本突き刺さっている。これは間宮の精神年齢が三才と言うことを表しているのではない。一本が十才を表しているのだ。視覚的にも三十路であることが一目瞭然である。


 最後。プレゼントである。これも誕生日会を構成する要素として異論のある方はいないであろう。

 誕生日会とはすまわち。豪華な食事。蝋燭の刺さったケーキ。そしてプレゼントという三つがそろって初めて成り立つ。

 今回は、独身貴族の面々により趣向を凝らしたプレゼントを用意した。無論この趣向には私も参加している。

 しかしながら、プレゼントの贈呈は最後、クライマックスの時にである。現在は外の塚田の車に封印されている。渡すときが楽しみであるが、まずは食事を平らげようと相成った。


 もっちゃもっちゃ……。


 眼前に広がるは肉の林。酒池肉林の酒池がないものだと思っていただきたい。それはローストチキン、ローストビーフ、ステーキ、から揚げ、チキン南蛮などで構成された林である。カロリーを計算するだけでも頭が痛い。


 私たちは食事をしている。これは揺るぎない事実である。しかし、普通食事の擬音は「むしゃむしゃ」や「ぱくぱく」である。または「もぐもぐ」というのもあるだろうか。しかし卓上に肉類しかないせいか、食事の擬音がこのようになる。なんとも汚い音である。三十路をひかえた地獄の亡者どもが、肉をむさぼかじりついているのである。牛丼こそ無いものの、やはりここは男地獄なのかもしれない。お釈迦様のお許しは出なかったのかもしれない。


 間宮はその巨躯相応の肉好きである。例えば、餃子屋では餃子定食に単品で餃子を頼む。ダブル餃子であり、そしてそれは稀にトリプルになる。ただの餃子好きのような気がしないでもないが、間宮の肉好きの語るには紙面がどれだけあっても足りない。これくらいでご勘弁願いたい。


 以前にも書いたが、間宮の食べっぷりは、それはそれは凄まじいものである。掃除機で軽いゴミを吸い込む。そんなイメージをしていただきたい。これを擬音で表すなら「ずおおおおおおお!!」である。噛んではいるのであろうが、飲み込んでいる、というほうがしっくりくる。


 間宮のその食べっぷりに気負されながらも、他の独身貴族はそれぞれ思い思いに肉を口に運んでいる。もっちゃもっちゃ。


 六人の口から、肉の咀嚼音が部屋いっぱいに響く。


 今のこの世は健康志向である。

 バランスのよい食事をしましょう。自然食品を食べましょう。成人病を予防しましょう。

 今現在の我々は、それに公然と反旗を翻している。それら健康志向とはまったく真逆の食生活である。肉に特化した加工品を、これでもかこれでもかと口に運んでいる。成人病に全力で邁進する所存。槍を持ち、馬にまたがり敵陣に一気駆け。そのくらいの気概で独身貴族まっしぐらである。


 それ相応の時間が経過し、我ら、いや、言葉正しく使えば、主に間宮により肉が片付いた。

 当初「ここまでの肉はちゃんと片付くのであろうか」と思われたが、そんなものは杞憂であった。肉の林は綺麗さっぱり無くなった。

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