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何かを企てる男

 ゲームをする気力の無くなった私は、パソコンの電源をつけることにした。久々にSNSにて何かを行おうと思ったのだ。


 SNSを始めてから思ったことがある。それは「何をするわけでもなくただ眺める」という行動に、SNSは最適だということだ。友人の日記やコミュニティの動きをまったりと読んでみたり。あるいはニュースで情報を仕入れてみたり。そういった、ただただぼんやりとした行動に向いている気がするのだ。


 SNSでは「行動を起こす明確な意思が必要」というよりも、「ただなんとなく、そこで起こったことに反応する」の方がしっくりくる気がする。もちろんこれは私見である。読者諸兄にも「そんなことは無い!行動とは意思を持ってやるものだ!」というお叱りの声もあるかと思う。あくまで私見であることを、重ね重ねお伝えさせていただく。


 さて、SNSにログインした私は、やはり何をするわけでもなく、ぼんやりと画面を眺めてみた。私はそこで、不意に気がついたことがある。前回強制的、かつ、もはや逃げられぬ運命的に加入した、毒コミュのトピックスがやけに多く大きく動いているのである。


 以下コミュニティのトピックスを記す。


 「全国に広げよう、毒コミュの輪」

 「独身貴族公爵による独身ネットラジオ」

 「毒コミュ音頭をつくろうではないか」

 「リア充に隕石を降らせる方法を議論するトピ」

 「上手な唐揚げの作り方」


 とりあえず、目に付いたものを列挙してみた。これらのトピックスがやたらめったらに動いており、それはつまり、とんこつラーメンも真っ青な濃厚な議論が行われていることを示唆していた。なお、リア充に隕石降って来いは、私だけが思っていたわけではないのだなぁ、と思い少し安堵をしたことも追記させていただく。世の中は想像よりもも狭っ苦しく出来ているようである。


 もっとよくトピックスを眺める。何かの発見があるかもしれなかったからだ。トピックスは誰かが立てるものである。つまり誰かの意思が介在している。その意思を覗き込もうと思ったのだ。


 さて、さすがは元麒麟児の私であり、あることを発見するにいたった。どうやらトピックスは毒コミュの主である、TSUKADA(塚田)が率先して動かしているようである。まぁ塚田は、主であるのだから、盛り上げようという意思があっても不思議ではない。さすがは独身貴族男爵を拝命する男である。多分、鼻の下にたっぷりと髭を蓄え、シルクハットを被り、今頃エレガントな生活を送っているのであろうう。

 さらにつらつら眺めると、それらのトピックスは、ここ最近に立てられたものであるらしい。しかし奴は、独身貴族の活動を活発にさせたり、おいしい唐揚げの作り方を議論してどうしようというのであろうか。


 ここで、塚田との付き合いが長い私は、なんとなくピンと来るものがあった。どうやらヤツは何かを企んでいる、と思われたのだ。そもそもヤツが毒コミュを立ち上げたこと自体、何らかの企みがあったのではなかろうか。そう考えるのが自然である。

 それにしても、付き合いが一定年月を超えると、何かを感じることが出来るようになるものであり、我ながら感心する。年月を経た老夫婦が、以心伝心いしんでんしんとしか思えないようなやり取りをするが、それに近いのかもしれない。おおよそは傾向と対策であり、それは入試以外にも当てはまるのだが、男同士でそんな関係になっても全くうれしくない。


 ともかく、私は塚田に電話して、直接聞いてみることにした。携帯電話のメモリに登録されている番号を呼び出し、コールする。


 ルルル……ルルル……。


 数コール後、塚田は電話に出た。

 挨拶もそこそこに、私は単刀直入に本題に入り、何を企んでいるのか?と、問いただすことにした。


 「そうだなぁ、ヒントとしては、コミュニティのトップを見てみるよ。あ、これ以上は言わないから。勝手に想像してみろ。まぁ、えぇじゃないかえぇじゃないかえぇじゃないか」


 和菓子のCMにあったと記憶しているフレーズを吐いたものの、塚田の答えは明確なものではなかった。しかし、何かを企んでいることには違いないようで、また、どうやらトップにヒントがあるらしい。

 私は早速、毒コミュのトップを見る。そこには、こんな文章があった。


 「目指せ独身貴族1000人。1000人超えたら……今はヒ☆ミ☆ツ」


 1000人集まったら何かをやる。そしてそれは今はヒミツであるという。どうせろくでもないことだとは思うのであるが、大人数を集める必要がある以上、得たいが知れない感じを受ける。この男、貧乏神だけではなく鵺ですらあるようだ。


 それにしてもこの男、1000人の独身貴族を率いて何をするつもりであろうか。飛行船に乗って、英国ロンドンにでも奇襲を仕掛けようというのか。今のところ、すべては闇の中である。

第十章 鵺 -了-

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