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物の怪日和(モノノケビヨリ)  作者: 白房(しろふさ)
第九章 化猫ふたたび
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SNSと加藤と私

 現在の日本でなおかつ普通に生活をしていれば、SNSをご存知ではない方のほうが少ないかと思われる。。

 あえてざっくりとご説明すれば、「インターネット上で色んな人とコミュニケーションが取れるサービス」と認識している。

 そこにはコミュニティがあり、メッセージのやり取りが行われ、人々が語らい、出会う場所なのだ。


 なお、もっと詳細なご説明をしたいところだが、紙面に限りがあるので、ここまでとさせていただく。

 なおこれは、面倒だからそうしているわけではないことを、皆様に強くお伝えさせていただきたい。


 加藤の話は、大方が惚気話のろけばなしであった。

 やれどこに行っただの、何をプレゼントしただの、彼女はこういう人だの。まぁ当然といえば当然の話しである。

 加藤と会っていない十年間、どのようであったかは存じ上げない。しかし独身貴族公爵を拝命するほどの傑物けつぶつであるから、そこは推して知るべきである。いずれにしても毒の沼地にはまり込んだ小鹿のようであったろう。


 そして、惚気話のろけばなしが出るというのは、大方順調に恋愛は進んでいる、ということでもある。喧嘩が絶えぬのであれば、ここは大方愚痴の吐き捨て場のはずだ。なんとも羨ましい話である。

 私は適当に相槌をうちながら、その話を聞いていた。私は加藤と彼女さんが幸せに愛をはぐくんで欲しいねと願い、そして早く話が終わり、ついでに加藤に隕石降ってはこないかね、と懇親の力を込めて願った。


 少したって、私の願いは一つだけ叶った。

 惚気話が終わったのだ。残念ながら隕石は降ってこなかったが、あまり多くを望んでは罰があたると言うものである。御伽噺でも言っている。欲をかくと碌な結果をもたらさないのだ。


 話が終わり、私はヒョーと細いため息をついた。

 そして加藤はこう切り出した。


 「お前もSNS、やってみるかい?」


 読者諸兄には、いまさらSNS?と笑われるかもしれない。しかし私は古いタイプの人間なので、インターネット上でコミュニケーションをとる、ということに違和感を覚えるのだ。そのため現時点ではSNSを利用していない。


 また各種メディアで報道される、「インターネットを媒介にした恐い事件」の印象が強すぎるのも二の足を踏ませる要因だ。無論、ほとんどの事件がインターネットを媒介にせずとも、起こりえる事件であることはわかっている。

 インターネットなんぞはただの通信道具にしか過ぎない。包丁の例を出すまでもなく、ただの道具であり、後は使い方だけである。


 しかし、大きいものは目に付くし、そして鮮明に覚えているものである。SNSに興味はあるのだが如何いかんせん、である。


 加藤の誘いに、私はまごまごしてしまった。

 興味を捨て去ることも、不安に飲み込まれることも出来ない。これは、やるともやらないとも言えない、どっちつかずな日本人的思考であるように思われる。


 さらに加藤は続ける。

 「既にやっている中村以外の独身貴族も、今回始めるぞ」


 自分が幸せだと考える人は、幸せの押し売りでも始めるものなのか。

 まさか独身貴族全員誘っているとは思わなかったし、その全員始めるとも思わなかった。内弁慶な独身貴族であっても、やはり結果を残している加藤の言葉は重かったのかもしれない。


 結局数分間加藤とやりとりをした。そして加藤の「今は結構閉鎖的だから、むしろいいかもしれないなぁ。現実での知り合いとつるむ、掲示板くらいに考えればいいんじゃないかな」という言葉で私は決断をした。


 SNSを始めよう、今さらながら、ではあるが。


 このことでよくわかったのである。色々な理屈をこねくり回しても、どうやら私は恐ろしく人見知りで小心者なのだろう。見知った人が周りにいれば、こういった決断もできるのである。


 私は、加藤にメールアドレスを教え、招待状を手配してくれるよう頼み、加藤はこれを快諾した。


 加藤から送られてきたメールにより、私のSNS人生はスタート幕を上げることとなった。

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