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おそらく史上最強の遺伝子

 帰宅する我々。見送る塚田。


 塚田はこざっぱりとした笑顔で私達を送った。どうやら男まみれには、憑き物が落とすという効果も期待できそうだ。読者諸兄に塚田の清々しい笑顔を映像的にご覧いただけないのが大変残念ではある。塚田に元気が戻ったことは良いことと思われるが、ただ自棄やけになっているだけというのもあながち否定出来ない。


 さて、塚田邸を後にしようと玄関に降り立った私達の前に胡瓜きゅうりが立っていた。もとい。胡瓜きゅうりに酷似した人間が立っていた。


 どう見ても塚田である。


 登場した表現は間違いなく塚田であるし、以前似た様な文章を書いた記憶もあるのだが、でも塚田ではない。塚田は後ろにいる。なんとも奇妙奇天烈な話というのは自覚している。私が何を言っているかよくわからないが、要するに目の前と後ろに塚田が二人いるからである。


 救いを求めるように、他の独身貴族を見れば皆も目が点になっている。

 中村は、目をゴシゴシとこすり、何度も見直している。片岡はおもむろに素数を数えだしたが、「63……あぁ違えや」とイージーミスをしている。私のこの混乱をどのように文章化したらよいだろうか?塚田=塚田というわけのわからない方程式まで浮かんでくる。


 この2人の塚田は非常に良く似ている。私はいつもどおり才能が流れ出る脳をフル稼働させ、観察を始めた。そして結論が出た。後ろの塚田は収穫して時間を置いた塚田、目の塚田は数日間ぬかに漬けた塚田。


 ダメだ!ダメすぎる!俺の脳!


 後ろから「あぁ、父さんお帰り」という極々当然な、塚田の声が聞えてきた。他の独身貴族が、一斉に後ろの塚田を見、そして一斉にうなずいた。どうやら、そしてやはり塚田の父上であるようだった。そりゃあそうだ。塚田にここまで酷似していて、塚田の家に入ってくるのだから、父親くらいしか考えられない。


 頭の中とは言え、友人の父上に対してなんという無礼を働いたものか。なんだよ数日間糠に漬けたって、失礼にも程がある。せめてタイムマシーンが考案されて、三十年後の塚田が今の塚田の手助けに来た、という発想のほうがまだよかったと思う。


 私はタイムマシーンが考案されて、三十年後の塚田が今の塚田の手助けに来たのだと、想像してみることにした。


 目的はなんであろうか?嫁探しか?それとも男まみれの意趣返しであろうか?

 そんなことよりも、未来はどうなっているのだろうか。

 ホログラムで相手が現れる電子メールは実用化されているだろうか?

 まさか本当にバリアーで都市が守られているなんで事はあるのだろうか?


 私はさらに思考を進めていった。


 車は空を飛んでいるだろうか?

 東京都庁は巨大ロボになるのだろうか?

 他の庁舎と合体して、侵略者と戦ったりするのだろうか?

 全自動家事マシンは多分できているだろう。

 いやそんなことよりもメイドロボは


 私の頭にメイドロボという単語が浮かんだ瞬間、思考をやめた。何故かはわからない。人間が立ち入ってはいけない、戻ってこれなくなる、そんな領域に入ったことを本能が告げたのかもしれない。


 そんな私の思考をよそに、挨拶もそこそこに塚田の父上は家に上がっていった。後姿まで息子にそっくりであったが、頭髪の状態だけは私に似ていた。


 私達は意味も無く、そして自分勝手に疲弊し塚田邸を後にすることにした。


 独身貴族どもとの帰り、その道すがら。話題はやはり、あまりに似ている塚田親子である。簡単ではあるが、議事録風にまとめると以下のようになる。



【片岡】あそこまで似ている親子もそうはいない。遺伝子がんばりすぎだろ。


【林】双子でもあんなに似てないぞ。


【私】トレース疑惑。もしくはコピペじゃないのか。


【間宮】未来から来た未来の塚田なのかもしれない。


【中村】未来にはメイドロボいるかな?


【私】おーい。もどってこーい。


【間宮】緑髪以外は認めんよ。


【私】お前も戻ってこーい!


 なんともまぁ友人の身内に対して言いたい放題である。人は心にぎょしがたい鬼を飼っている、そう断言せずにはいられなかった。

 あとメイドロボ、私の周囲で認知されすぎだと思うのだがいかがだろうか。また緑髪のメイドロボに反応したあなたには、年齢がばれますよ、とご忠告申し上げておく。


 さて、ここまで書き進めてきて、読者諸兄、思ったことがあるだろう。おそらく私が思っていることと同じと思われる。


「塚田の妹、出てこねえのかよ!!」


 塚田父(偽)こと、ぬらりひょんのことはどうでもいいのである。ぬらりひょんの正体は何なのか、また動きがあり次第ご報告申し上げる。そんなことよりも塚田妹の方が重要なのである。私の人生にもっと瑞々みずみずしい果実を!甘々あまあましい果実を!

第八章 天邪鬼 -了-

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