とあるクズYouTuberの後悔
クズが主人公のお話って書いた事無いなー。
という思いから誕生しました。
良かったら読んでもらえると嬉しいです
俺は斎藤裕貴。登録者数100万人真近の人気YouTuberだ。ユッキーというあだ名で親しまれている。
ちなみに俺は顔がよく、トークも得意で同居人である、如月香織に動画の編集をさせていた。
初めは自分でしていたのだか、面倒になり、空いた時間で生配信をやりたくて誰かいいコマになる奴を探していたところ、優秀な者しか入れないゼミに所属する可愛いが、男慣れして無さそうなバカっぽい如月に目をつけたのだ。
最初は断ってきたが、俺の顔とトーク術で何とかしてみせると思っていたが、なかなか苦戦した。家賃などは全て俺が持ちだからと言ってなんとか口説き落とす事に成功した。
如月は思っていた以上に優秀で俺の目指せ100万人に対して、動画の長さに対してCMの量が多いだの、人気のある動画ばかり撮るのではなく人気のない動画も取るべきだ。と意見してきたが、まあ、収益は減るが、登録者100万人の為、その指示通りにすると1ヶ月で10万人の登録者を獲得した。
これで90万人越え。俺は如月に感謝していた。
「目標まで後10万人どうしたらいい所思う?」
俺が顔を近づけて如月に聞くと、
「ちょっとグッズの価格が高いと思う。今までのはそれまでの値段にして、次からは良心的な値段にしたらどうかしら」
とか言ってくる。
はぁ?俺のグッズだぞ!俺の顔がそんなに安いと?ふざけるな!
この一件で俺は如月に対して不満を持つようになった。
そして、ある日の生配信で俺は俺をバカにした報復も兼ねて如月がイヤホンを付けてiPadで動画配信を見ているのを実況しだした。
「ただいま、同居人画像を見ながらニヤニヤしててまじキモい」
それに対する視聴者のコメントは
『マジで、キモすぎる』
『キモすぎて草』
など完全に悪ふざけたコメントが次々と流れ、投げ銭する人数も増える。
これはいける!そう思った俺は、定期的にその配信をしては同居人である如月を嘲笑っていた。
いつしか配信はヒートアップし、同居人の声までマイクで拾い
「まじウケるんですけどー」
など皆で嘲り笑うというのが習慣化されていた。
そして、斬新で面白いと見に来る視聴者も増えてきた。
そんなある日、
「ねえ、私の声、勝手に拾って配信で流してるらしいじゃん?止めてくれる?」
そう、如月が俺に意見してくる。
「はぁ?タダで家住んでんのに文句言うわけ?ってかこれで登録者数増えてんだから別に良くね?」
その言葉に如月は明らかに不機嫌になり、あろう事か登録者100万人真近の俺に
「これ、立派な犯罪だから。今度やったら許さない」
と意見してくる。
はぁ?皆楽しんでんのになんで水差すようなこと言ってんの?登録者も増えてるし、需要があんだよ!何も分かって無いくせにこの100万人真近のYouTuberゆうき様に意見してんじゃねーよ!
そう思いながも
「ごめん!もうしないから許して」
と俺が顔を近づけ懇願するような素振りを見せると
「分かった。もうしないでよ」
そう言って許してくれる。
全くバカな女だ。まあ、扱いやすくていいんだけど。
そう思い、俺は同居人の言葉など無視してその配信を続けていた。
とにかく、ウケがいいのだ。止められるはずがない。
そんなある日の生配信で
『同居人の顔みたーい』
というようなコメントがたくさん流れてきた。
ここで視聴者の不満を買う訳には行かないが、流石に顔出しは本人の許可がないとなと思い、
「ちょっと許可とってくるわ。皆、許可おりるまでちょっと声だけだけど聞いててよ」
この言葉にコメント欄が浮き足立ち凄いスピードでコメントが流れて行く。
やっぱ、皆の需要に答えてこそのYouTuberでしょう。
そう思い配信部屋とリビングの扉を開け、わざと声が聞こえるようにし、リビングに居るだろう同居人に声をかける。もちろん、コメントの流れを確認するため、自分のスマホからも配信をチェックしている。
「ねえ、顔出し頼みたいんだけど、もちろんいいよね?」
この俺、登録者数100万人真近の顔の良い人気YouTuberに言われれば喜んで承諾するはずだ。
「は?何言ってんの?嫌なんだけど」
返ってきた言葉は予想外のものだった。
「えっと、聞き違いだよね?もう一回言うね、顔出し、してくれるよね」
今度は顔を近付けて言ってみるが
「だから、嫌だって言ってんでしょ?それに私、今から家帰るし」
返ってきた言葉に耳を疑う。
「聞いてないんだけど?」
「言ってないからね」
俺はチラリとスマホを確認する。
コメント欄は
『修羅場キター!』
『同居人常識無さすぎで草』
『同居人こえー』
など賑わっている。
盛り上がってるならまあ、安心だな。
そう思っていると、
「大体、あんたさー、私に無許可で勝手に配信に声のせるわ、止めてって言ったのに止めないわでそんなやつの言う事、なんで聞かないといけないわけ?」
スマホのコメント欄の流れが一気に変わる。
『え?あれ、無許可だったの?』
『流石にねーわ、ユッキー』
『普通に犯罪なのでは』
などといったコメントが凄いスピードで流れて行く。
まずい!俺はそう思うが、同居人の言葉は終わらない。
「じゃ、帰るんでそこ、どいてくれる?」
その言葉にはなんの感情もなかった。
俺はその時になってようやく自分の本当の気持ちに気付く。
俺はいつの間にか同居人いや、如月を好きになっていたのだ。
俺のグッズに対する怒りは、如月にとって俺はその程度の人間。そう言われたようで憤ったのだ。
だが、気付いた時にはもう遅すぎた。
如月の心は完全に離れ、俺を過去の男として処理して捨てたのだ。
この登録者数100万人真近のこの俺を。
「あ、最後に言わせて貰うけど、あんた、自分勝手過ぎんのよ。大体私がここに来たのもあんたが言質取った音声証拠として持ってるからとか言って私を脅してきたからだから。顔がいいのとトーク術で騙されて分かったって言ってしまった私にも非があったから応じたけど、あれも勝手に無許可で人の会話録音してたって事よね」
グサリその言葉は俺の胸に大きく突き刺さる。
感情のない声が追い討ちをかける。
「じゃ、帰りますのでそこをどいて頂けますか?」
敬語……
俺の事、本当に捨てるのか?
この登録者数100万人真近の顔のいいおれを?
コメントなんて確認する余裕などなかった。
いや、配信していることさえ忘れ、
「お願いだから、考え直してくれ!」
俺は必死に懇願していた。
「あのですね、人を自分の人気取りのツールに使うような人の家にこれ以上いたくないんです」
もう完全に敬語で話している。
そして、ツール、その単語がまた俺の胸を抉る。その通りだったからだ。
如月は何も間違った事は言っていない。正論だ。それを淡々と敬語で言われる。しかも相手は好きな子だ。
「あの、あなたは背が高くてそこに居られると邪魔なんですけど」
邪魔……
俺は登録者数100万人真近でいずれ超える男だぞ?しかもこんな顔のいい男、他にいないぞ。その俺に邪魔。
泣きたくなってくる。そこまで如月に愛想を尽かされていたなんて思いもしていなかった。
「じゃ、帰るんで」
俺を上手に避け、如月は玄関へと向かう。
俺は慌てて後を追う。
「行かないでくれ!俺は君が好きなんだ!」
俺の渾身の叫びに
「自分が好きな相手にあんな仕打ちするんですか?ツールにするだけではなく、私の事、家政婦扱いしてましたよね」
家政婦扱い
確かに俺は、如月にそういう扱いをしていた。
それでも!
「悪い所は全部なおす!だから行かないでくれ!」
「いや、だからそういうのもういいんですって。どうせこの会話も配信されてるんですよね?視聴者が逃げないよう必死なのは分かりますが、そんな嘘までついてどういうつもりなんですか」
嘘……
如月は俺が嘘をついていると?
頭の中が真っ白になる。
どうして信じてくれないんだ。
その考えで埋め尽くされる。
「あのですね、私がされた事を自分がされたらどう思いますか?」
その質問にハッとする。
自分がされたら?考えた事もなかった。
でも、考えなくては、考えないと如月は去っていってしまう。
そして、考えた結果
「嫌だと思う」
かろうじて口から出すことが出来た。
「そうでしょうね。それだけの事をしておいて謝る所か、好きだの考え直してくれだのよく言えますね。じゃ、帰るので」
彼女の声はどこまでも静かで俺の心をぐちゃぐちゃにする。
「一度だけ、一度だけチャンスを貰えないか?」
俺は必死に彼女に食らいつく。
「嫌です」
即答。しかも敬語。
「じゃ、そういう事で帰るんで」
打ちのめされている俺など気にもせず、如月はドアノブに手をかける。
「待ってくれ、如月!」
俺は如月に向かって叫んでいた
「は?あんた、今私の名前出した?これ、配信されてるんでしょ?何考えてんの?マジで訴えるわよ?私の苗字珍しいからすぐ特定班がわたしの事を特定するでしょうね」
その言葉に自分の失言によって如月に迷惑がかかる所か完全に嫌われてしまった。俺はズルズルとその場に座り込んだ。
「まあ、言ってしまった事は仕方がないからその後対応を考えるとして、私、見たい生配信あるから帰るね、じゃ」
見たい生配信その言葉に俺はすぐさま反応した。
「配信って誰の!?」
「あなたに答える義務はありませんけど」
どこまでも如月は他人行儀だ完全に壁を作られている。
「俺も一緒に見る!」
そう答えると、如月は大きなため息をついた後、こう言う。
「本気で言ってます?あなた、生配信中でしょ?視聴者は?視聴者大事にしない配信者なんて最低。それを言うならせめて配信終わらせてから言いなさいよ」
グサリ
如月の正論という名の刃が再び俺の心を抉る。
「分かった」
俺はヨロヨロと立ち上がり、配信部屋へ向かう。
そして、視聴者にこう言った。
「ごめんね、待たせちゃって。彼女来れないんだってなんか違う話題でもしよっか」
そう言った後、ガチャというドアノブを下げる音が聞こえ、ガチャンと扉が閉まる音がした。
俺は視聴者を大事にしろという如月の声に従ったのだ。これでいい。
すると、画面上のコメントには、
『配信止めていいから早く彼女追いかけな』
『配信止めればいいだけなのに、何彼女よりこっち取ってんの!?』
『これは無いわー』
など非難のコメントがゆっくりと流れている。
「視聴者大事にしろって言われてそんな事できないよ。第一もう、彼女は俺に見切りつけてるし」
と力なく答えると
『バカじゃない?彼女は配信終わらせてから言いなよって言ってただけで配信続けろとは言ってないでしょ』
『そうだ彼女はお前が配信止めて自分の所に来てくれるって思ってたんじゃ無いか?』
『自分と配信どっち取るんだって事か、把握』
などコメントが流れて来る。
俺は愚かにも如月が最後に差し出してくれた手を振り払ってしまっただけでなく、また如月を傷つけたのだ。
今更どんな顔をして合えばいいのか。
今、配信止めて如月を追っても彼女を切り捨てた事実は変わらない。
自分の愚かさに打ちのめされ、ぐったりとしてしまう。
何も話せない。話す事など見つからない。
登録者100万人真近の顔のいい偉そうな普段の俺の姿はどこにも無かった。
俺は、最後の最後まで間違えたのだ。なんて愚かで滑稽なのだろう。
自嘲するように笑うと涙が出てきた。
もう、恥も外聞もどうでもよかった。
すると、コメント欄が止まった。
そして、再び動き出す。俺は黙ってそれを見ていたら
『そういえば、最近CM少なくなって見やすくなったよね』
『あー、CM少なくなってチャンネル登録したってのも見た』
『CM多くて金儲けの事しか考えてなくて気に入らなかったけど最近は好感持てるってのもあった』
『グッズも良心的な値段になって買いやすくなったよね』
『そうそう、それで金儲け主義やめたみたいだからチャンネル登録したってコメントも見た』
『動画のクオリティも上がったよね』
『あー、それコメ欄に書いてるやついた』
『最近、昔やってた企画の復活やってたじゃん!あれ嬉しかったなー』
『分かるー、密かに好きだったんだよねー』
『あのさ、それって同居人さんが来てからとか?』
『いやいや、もしそうならユッキーまじ最低』
『だよねー』
など盛り上がっている。全部如月が言ったこと、やったことだ。
俺はコメントなんて読んでなかったから全く知らなかった。
俺が気にしていたのはチャンネル登録者数とベルの数だけだった。
俺はさらに落ち込む。
『今からユッキーの恋愛相談塾開こうぜ』
見かねたからかそんなコメントが。
『お、いいね、いいね!俺も付き合う』
『私も付き合う』
といったコメントが流れて来る。
こんな俺のためにみんなありがとう。
気がついたら号泣していた。
かつての偉そうなゆうきはそこには居なかった。
その生配信という名の塾は明け方まで続いた。
そして、俺はそこで言われた誠意を見せて謝罪し、行動で信頼を回復していくしかないという最終結論を実行する事にしたのだった。
それで彼女が戻ってくるかは分からない。でも、今の俺にはそうすることしか出来なかった。
俺は伝わるまで誠意ある対応、行動を続けるつもりだ。
以前、編集の仕事に少し関わっていた事もあって
YouTuberを題材にしてみました。
クズの男が後悔し、名誉挽回する話とか好きなものでそんな感じになってます。
モヤッとした終わり方ですが、たまにはこういうのもありかなと。
短編だからこそできる事だとも思ってます。
読んで頂きありがとうございました。




