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第64話 動き出す悪意

 鍛治の道に進んだのは、リオンにとってよかったのか、悪かったのか。

 いや、本人が今、それでよかったのだと思っているのなら。周りからどう思われようと、よかったのだと思う。


 ラットは自分と同じだと思った。両親と旅をしていた頃は影の薄さから商人としては不利になると言われ、身体能力の低さから冒険者としても役立たずと煙たがられた。しかし、ラットは自分の在り方に答えを出した。


 そんな彼が今また剣をとり、不運に見舞われた少女のために力を欲している。以前とは違う。今度はラットたちがいる。力になってあげたい。


「ちなみに、色々な武器を使えるのなら、距離に応じて、持ち替えて戦うのはダメなの? ここ数日、魔物と戦ったみたいに」

「ラットがいれば、それでもいいのかもな」

「あー、常に持ち歩けないってことだね」

「そう。魔物みたいに、ある程度特徴がわかっていれば、最初からその武器で戦えるんだけど……。問題は魔族と戦うことになったときだよ」


 そうだ。目的は魔物の討伐ではない。今、危機に陥っているかもしれない仲間を助けにいくことだ。ここ、エレのいるフルーテンでは何も起きなかったからよかったものの、シールのところで戦闘になる可能性はある。その相手はおそらく魔族。魔物のように見た目の印象でわかることは少ないし、どんな能力があるかは戦ってみないとわからない。


 リオンは様々な武器を扱えるとはいえ、それら全てを常に持って戦うことはできない。邪魔になるし、その重さから足枷にもなる。魔力の低さをカバーするために、足枷をつけては本末転倒だ。


「ラットみたいにマジックバックを持ってたらいいんだけど、少ない数を持ち歩いたとしても切り替えがな……」


 弓にしても斧にしても未使用時は身体に括り付ける。激しい攻防の中で持ち替えるのは、あまり現実的ではない。


「それって俺も手に入らないかな? これから向かう魔法都市ってさ、最先端の魔法が生み出されているんだろ。マナベルみたいに売ってたりしないか?」


「確かにリオンにもあると便利だよね。だけど、魔法都市で手には入らないかな」


 このマジックバッグは単純な魔具ルーリックではない。


「これって単純な魔法が付与されているだけじゃないんだよ。ドワーフとエルフ、工芸と魔法に長けた種族が協力して、勇者パーティが持つ加護を付与したものだから」


 このマジックバッグは各種族間にあったしがらみをヒーロが取り除いたことにより、いがみあっていた種族が協力することで生まれた品だ。

 本来、加護という強大な力を貴金属でなく鞄へと付与するための工夫をドワーフが担い、エルフたちが総がかりで加護を解析した。


 マジックバッグ__

 この鞄はただ物が小さくなって入っているわけではない。鞄の中には〝空間創造〟で造られた異空間が存在している。だからこそ、空間は広く、どんなに鞄が揺れたとしても空間には影響がない。

 それに取り出し口には〝空間圧縮〟の加護が使用され、それなりに大きなものでも出し入れすることができる。さらに、〝転移門〟を合わせることで、取り出したいものを想像するだけで、対象物を掴むことができ、即座に取り出せるようになっている。これだけの工夫がこの鞄には施されているのだ。


 これは鞄だけではない。バンプガンやワイヤーロッドなど、勇者パーティの扱う武器は種族間の合作だ。だからこそ、絆の象徴といえる。


「となると、やっぱ一番得意でバランスがいい剣を主体にして、持ち運びがしやすい補助的ななにかを持つのがいいのかもな」

「銃とかあればいいんだけど」

「最近、地の国で流行しているやつだよな。たしかに目的にはあってるな」

「造れたりは?」

「どういうものか知らないことにはな〜」

「だよね。それに火薬も必要だったはずだしね」

「やっぱ投げナイフくらいが無難か~?」


 リオンの試行錯誤は続いていく。



 しかし、その裏で暗躍する者がいた__



「仕事、お疲れ様っ!」

「……誰だ……?」

「あら、あなたの恋人の顔を忘れちゃったの?」

「忘れてないさ。確かに顔はよく真似てる。たが、あいつは仕事場にまで押しかけたりはしないし、そんな喋り方もしない。騙す気があるなら、もっと調べたらどうだ?」

「忙しかったの! 一体どれだけ、いたと思ってるのよ。大変だったんだから」

「……いた?」


 女は姿を変えた。


「お前、魔族だな。どういうつもりだ? 他にも兵士がいる中にノコノコ現れて」


 休憩室。そこには見回りのために小隊のメンバーが集まっていた。


「戦いにきたわけじゃないわ。勧誘しにきたのよ」

「勧誘……。舐めているのか? 私が魔族につくわけがないだろう」

「お前たち、こいつを捕えろ!」


 部下に命令する。


 しかし……。


「おい!? 何をやっている!」


 取り押さえられたのは、その者だった。


「ふふふ……、ごめんなさい。〝勧誘〟じゃなくて〝誘惑〟だったわね……」

「おい! やめろ!!」


 女はその者に顔を近づけた__。



「これでやっと次の段階に進めるわ」


 マナベルが鳴る。


「あら、久しぶりね」

「……」


 どうやら仲間らしい。


「それにしたって、ひどいじゃない。一人でこ〜んなに働かせて」

「…………」


 女は不満を漏らす。


「ま、ちょっと想定外のこともあったけど、ちょうど次の段階に進むところよ」

「………………」

「わかってるわよ……」


 女は不敵に笑った。



「〝エレ・ホーク〟を殺すわ!」


【改訂版のご案内】


一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。

四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。


改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。


なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、

現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。


あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。


最後に、もしよろしければ何かしら反応などもいただけたら励みになります。

引き続き、『元勇者パーティのアイテム係』をよろしくお願いいたします!!


改訂版

https://ncode.syosetu.com/n5295md/

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