第25話 勇者の剣技
「――ラット!!」
視線の先を見ると、眩い光。
(攻撃!?)
飛んだばかり。
足場がない。
次の足場は?
まだ先。
躱せない。
狙われた。
絶対に躱せない瞬間を!
これは……!!
<防げ――エアウォール!>
割り込んだ風の防壁が閃光を弾き飛ばす。
無傷で到着した塔の裏に隠れ、言った。
「助かったよ、ヒーロ」
「この距離と絶妙なタイミングの狙撃、そして、ラットを捕捉する観察眼――ロックか!」
「間違いないね」
射手は、仲間、ロック・スネイク。
「手まで貸すとは……」
ヒーロの気持ちもわかる。口裏を合わせるだけでなく、その力まで貸すなんて。
(一体、何があったの、ロック)
寄越されたのは、返事ではなく、煌めき。
<撃て――リ・エアショット!>
閃光の軍勢を、ヒーロは無数の風の弾丸で迎え撃つ、__相殺する。
(今は考えてる場合じゃない)
矢面に立つヒーロに話しかける。
「ヒーロ、転移門を使えない以上、開けたここじゃロックが有利だ。謁見の間に騎士が集められてたおかげで、この辺りには敵が少ない。撒いた騎士たちが追い付いてくる前に、下に降りて逃げ道を探そう」
頷くヒーロ。
<放て――リ・ソル・エアレイ!>
ロックへと放たれた無数の風のレーザーは、攻撃ではなく、目くらまし。ロックの視界が塞がれている内に、二人揃って塔の下へと駆け降りた。
*
謁見の間、大勢の騎士たちが立ち並び。さらには、塔の周囲にも大勢の騎士たちが囲うように配置されていた。ここまでの念の入れようだ。当然のように城門は閉じていると考えていた。だが、
遠目に見える城門は、意外にも封鎖されていなかった。
「開いてるね」
「罠かもしれない。慎重に行こう」
ヒーロを先頭に、城門へ用心しながら接近していく。
(いるね……)
ヒーロが真っ先に存在を捕捉する。やはり騎士たちが待ち構えていたのかと警戒を強める。
さらに近づくと、風に混ざり、喋り声が届く。
……が、実際に確認した彼らは、想像と違って剣を抜いてはいなかった。
剣を、運んでいる。荷車で。
「あれ……武器?」
「そうか、納品だ。チャンスだ、ラット」
納品のため、偶然にも門を開けていたようだ。
ヒーロが駆ける。
「おい聞いたか、勇者が逃げたそうだぞ!」
「やはり国家転覆は本当だったんだな。反逆者め!」
「急いで城門を閉めるぞ。こっちに来るかもしれない」
騎士たちが、飛び出すヒーロに気付いた。
「な、勇者!?」
「食い止める! 早く城門を!」
先頭を買って出た一人が剣を瞬時に抜く。
騎士の攻撃、しかし当たらない。
<流し>
剣を流すように躱された彼は胴体へ刀身を逆に打ち込まれ、地に沈む。
「この……っ!?」
二人目の剣が天高く弾かれた。
<破>
武器を失い無防備となった彼も、刀身を叩き込まれる。
「うおおおおっ!!」
三人目がどうにか斬りかかろうとするが、遅い。
<閃>
踏み込んだヒーロが、既に騎士の身に一閃を喰らわせている。彼は、攻撃さえできずに散った。
それからも、その場にいた十数人の騎士たちを、ものの数分で無力化していった。
ヒーロの剣はケンドウをベースに、彼がこの世界で生き抜くために編み出した剣術。本来であれば、ベースがあるとは言え、新たな剣術を編み出すなど簡単にできることではない。しかし、彼はやり遂げた。圧倒的なセンスの塊……天才。それがヒーロだ。
「連絡が回る前で助かったな」
聖剣を鞘に収めながらヒーロが事もなげに呟く。
「いつ見ても、強いね」
あれだけいた騎士たちを風のように仕留めた。殺さないよう、力を絶妙に加減して。見事というほかない。
「大したことないさ。行こう!!」
それを鼻にかけることもせず、ヒーロは進む。
城門を潜り、王城からついに抜け出した。
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