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第25話 勇者の剣技

「――ラット!!」


 視線の先を見ると、眩い光。


 (攻撃!?)


 飛んだばかり。

 足場がない。

 次の足場は?

 まだ先。

 躱せない。

 狙われた。

 絶対に躱せない瞬間を!


 これは……!!


<防げ――エアウォール!>


 割り込んだ風の防壁が閃光を弾き飛ばす。

 無傷で到着した塔の裏に隠れ、言った。


「助かったよ、ヒーロ」

「この距離と絶妙なタイミングの狙撃、そして、ラットを捕捉する観察眼――ロックか!」

「間違いないね」


射手は、仲間、ロック・スネイク。


「手まで貸すとは……」


 ヒーロの気持ちもわかる。口裏を合わせるだけでなく、その力まで貸すなんて。


(一体、何があったの、ロック)


 寄越されたのは、返事ではなく、煌めき。


<撃て――リ・エアショット!>


 閃光の軍勢を、ヒーロは無数の風の弾丸で迎え撃つ、__相殺する。


(今は考えてる場合じゃない)


 矢面に立つヒーロに話しかける。


「ヒーロ、転移門を使えない以上、開けたここじゃロックが有利だ。謁見の間に騎士が集められてたおかげで、この辺りには敵が少ない。撒いた騎士たちが追い付いてくる前に、下に降りて逃げ道を探そう」


 頷くヒーロ。


<放て――リ・ソル・エアレイ!>


 ロックへと放たれた無数の風のレーザーは、攻撃ではなく、目くらまし。ロックの視界が塞がれている内に、二人揃って塔の下へと駆け降りた。





 謁見の間、大勢の騎士たちが立ち並び。さらには、塔の周囲にも大勢の騎士たちが囲うように配置されていた。ここまでの念の入れようだ。当然のように城門は閉じていると考えていた。だが、


 遠目に見える城門は、意外にも封鎖されていなかった。


「開いてるね」

「罠かもしれない。慎重に行こう」


 ヒーロを先頭に、城門へ用心しながら接近していく。


(いるね……)


 ヒーロが真っ先に存在を捕捉する。やはり騎士たちが待ち構えていたのかと警戒を強める。

 さらに近づくと、風に混ざり、喋り声が届く。


 ……が、実際に確認した彼らは、想像と違って剣を抜いてはいなかった。


 剣を、運んでいる。荷車で。


「あれ……武器?」

「そうか、納品だ。チャンスだ、ラット」


 納品のため、偶然にも門を開けていたようだ。

 ヒーロが駆ける。


「おい聞いたか、勇者が逃げたそうだぞ!」

「やはり国家転覆は本当だったんだな。反逆者め!」

「急いで城門を閉めるぞ。こっちに来るかもしれない」


 騎士たちが、飛び出すヒーロに気付いた。


「な、勇者!?」

「食い止める! 早く城門を!」


 先頭を買って出た一人が剣を瞬時に抜く。

 騎士の攻撃、しかし当たらない。


<流し>


 剣を流すように躱された彼は胴体へ刀身を逆に打ち込まれ、地に沈む。


「この……っ!?」


 二人目の剣が天高く弾かれた。


やぶれ


 武器を失い無防備となった彼も、刀身を叩き込まれる。


「うおおおおっ!!」


 三人目がどうにか斬りかかろうとするが、遅い。


<閃>


 踏み込んだヒーロが、既に騎士の身に一閃を喰らわせている。彼は、攻撃さえできずに散った。


 それからも、その場にいた十数人の騎士たちを、ものの数分で無力化していった。


 ヒーロの剣はケンドウをベースに、彼がこの世界で生き抜くために編み出した剣術。本来であれば、ベースがあるとは言え、新たな剣術を編み出すなど簡単にできることではない。しかし、彼はやり遂げた。圧倒的なセンスの塊……天才。それがヒーロだ。


「連絡が回る前で助かったな」


 聖剣を鞘に収めながらヒーロが事もなげに呟く。


「いつ見ても、強いね」


 あれだけいた騎士たちを風のように仕留めた。殺さないよう、力を絶妙に加減して。見事というほかない。


「大したことないさ。行こう!!」


 それを鼻にかけることもせず、ヒーロは進む。

 城門を潜り、王城からついに抜け出した。


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