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第18話 心くすぐる試作品

ここまで読んでいただきありがとうございます。もうしばらく連続投稿します。

 城門へと続く長い行列。

 並びながら摘まんだ昼食。

 膨れた腹を抱えながら、城門での身分証確認を待つことしばし。ようやく、出番が回ってきた。


「ミル・テクノ。職業は……魔機師? ああ、ジャンクを造る物好きか。よし、通れ」


 兵士から許可を得たミルが歩き出す。


「どうぞ」

「おわっ!?」


 身分証を続けて見せると、兵士は肩を跳ね上がらせた。


「くそ、きちんと並べ!」


 きちんと並んでいました。

 そう伝えたところで、相手にされないのはわかりきっている。


「ラット・クリアノート、次からは割り込まないように」


 帽子のように罪をかぶり、立ち止まるミルの後を追う。肩を並べ、城門を潜る。


「目立てるアーティファクト、造る?」

「今すぐ!!」


 アーティファクトの一言に条件反射で食い付き、


「…………見てみたいけど、いいかな」


 我に返り、断った。


「どうして?」


 ミルは訊いてくる。存在感さえあれば、見つけてもらえるし、認めてもらえるのに、と。


「目立たないからこそ、できることがあるから」


 何でも、使いようなのだ。

 風に連れられてきた香ばしさが、意識を前へと引っ張る。満腹でも思わず鳴りそうになる、よく焼けた肉の匂い。


「ほら、見えてきたよ、ミル」


 はっきりとしてきた陽気な音楽に出迎えられ、入国する。


「風の国、ヴィントラントの首都――翠嵐の城塞都市、ヴィントホーゼだ」





 城壁の向こう側に一歩入れば、そこは別世界。


 呼び込みを競い合う露天商。

 食べ歩きを楽しむ男女。

 風車を持って駆け回る子供たち。

 人波の途切れぬ城下町を見守るのは、絶えない風。

 優しい番人が笑い声をくまなく届けるおかげで、ヴィントホーゼの昼はいつでも祝祭だ。



「勇者はどこ?」


 歩きながら辺りをきょろきょろと見回すミルの横を、獣の耳と尻尾を揺らす少女が通り過ぎる。王都まで来ると、獣人族の姿も目新しくない。


「勇者は夜にしか会えないんだ」

「……夜行性?」

「あはは、昼も元気だよ。事情があってね」


 話すのは、勇者と会ってからでいいだろう。


「ひとまず、鍛冶屋に行こう」

「武器……、作るの?」


「アーティファクトだよ」


 ヴィントミューレを出発寸前に魔機屋で救った、直せそうなアーティファクト。旅の過程で二人で少しずつ修理してきたが、中には残念ながらお手上げの物もあった。


「直すのが難しい、特殊な造形のパーツがあったでしょ? 鍛冶屋に依頼すれば、修理、もしくは特注で新品を造ってく……ミルー!?」


 ばびゅんとミルが槍になる。


「待って……!!」


 追いかけるが、背中は止まらない。行くなら早い方がいい、ということなのだろう。合理的だ。


「そっちはスラム街ーーーー!!」


 ――方角さえ間違っていなければ。





 何とかミルを捕まえ、最寄りの鍛冶屋へと入った。


「おう、らっしゃい!」


 髭を蓄えた、いかにもといった風情の店主が歓迎してくれる。

 カウンターに一番乗りしたミルが、取り出したパーツたちを机上にゴトゴトと落とす。


「んん……? 何だこりゃ、ルーリックか?」


 魔導具ルーリック魔導機械アーティファクトの元になっているものだ。間違えるのも無理はない。が。


「いや、それにしては複雑だな……まさかアーティファクトか!?」

「そう」


 さすが最新の情報が集まる王都だ。昔堅気の店主も押さえている。


「嬢ちゃん、ずいぶんと珍しいものを持ち込んできたな!! こんな量は俺も初めてだ。何に使うか、詳しく説明してくれねぇか?」

「これは……」


 店主も珍しいものが見れて、少し興奮気味に話している。

 ミルが説明している間、ラットは店内を散策することにした。ヴィントホーゼは慣れた街だが、この鍛冶屋を訪れるのは今日が初。新鮮だ。


 広い店内を歩き回っていると、ふと武器の陳列棚の一つが目に留まる。


「……刀!?」


 刀が、陳列されている。

 

(模造品じゃない、本物の刀だ……! 本来は特注でつくるもののはずなのに、何本も……!!)


 刀は使用するのに技術が必要な武器であるため、需要が低く、一般的な剣のように陳列棚に置かれるようなことはない。入手方法はただ一つ、鍛冶屋に特注で造ってもらうこと。それがどういう訳か普通に店頭に並んでいる。


「え、初級!?」


 第二の衝撃を受けた。


 武器にはランクがある。初級・中級・上級・特級。右にいくほど高性能であり、高価になる。

 初級はお手頃価格な分、切れ味が鈍い、重心のバランスが悪い、歪んでいるなどの欠陥を抱えており、見た目も簡素だ。とにかく安く、最低限武器として使えればいい。それが初級だ。

 だが、目の前の刀は明らかにその定義から外れている。刀は特注で造るため、たしかに初級というランクで造られるようなものではない。この刀も例に漏れず、いや、それどころか上級としても問題ないほどしっかりと造られているように思える。


 刀だけじゃない。ギザギザしたものからクネクネしたものまで、様々な刀身の剣が並んでいる。


(こっちはエクスキューショナーズソード……こんな処刑人用の武器まで!?)


 特殊な冒険者職の武器だけではない。特殊な一般職、それに使用される武器までが陳列されている。


(それにしても、この刀身……一切のムラがない。滑らかで、鏡のように光を反射してる……)


 これが初級? 本当に? 上級ではなく?

 手に取ってみると、一般的なものと比べ、重心がどこか違う。


「これはまさか……」

「ガハハ、そりゃ弟子の試作品だよ!! うまいもんだろ? ものはいいんだが、需要がないからそこに置いてんだ」


 店主が答えを教えてくれた。


「やはりそうでしたか!!」

「おっ、気づいていたのか。それに気が付くなんて、兄ちゃん、目利きだね! どうだい? 弟子に会ってくかい?」

「ぜひ、会ってみたいです!」


 優れた腕前はもちろん、それ以上にこだわりを感じさせる。オタク心がそう語りかけていた。


 快諾した店主は、店の奥へと首を向けた。


「おーい、お客さんだぞー!」

「おーう!」


 返ってきた声は、予想以上に若々しい。走り寄ってくる足音に胸が高鳴る。現れた鍛治師は、なんと。自分と、そう変わりない年頃の青年だった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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しばらく連続投稿予定です。

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