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第13話 ジャンク屋の実力

「決まったぁ!」

「見たか! 俺たちの実力!」


 弓使いと槍使いが背後で騒ぐ。


「戦い方に変化をつけるために、形状変化のルーンだったのね。やるじゃな……リーダー?」


 魔法使いが近くにいるのに、砂塵から目を離せない。


 決まった。

 そう、完璧に決まったはずだ。

 なのに、言いようのない、この不安はなんだ?


(な……まさか)


 砂塵の中で動く影。


(いや、そんなはずは……)


 瞬間、砂塵が霧散した。


「……!!」


 凍り付く。

 現れた少年に。

 傷一つ、ない。

 否、一箇所だけ。


(傷が浅い……あれを防ぎやがったのか)


 剣士の視線に気付き、少年の手が自らの頬に触れる。

 切り傷を確かめた彼は、唇を忌々しげに噛んだ。


「雑魚の分際で……!」


 貫くような殺気を浴び、真横へ咄嗟に逃げる。


「――ぐあっ!?」


 身体を裂く鋭い痛み。

 血飛沫を見ながら理解する。斬られた。攻撃を予期したはずなのに。


「うぐっ!」

「ぎゃあっ!」

「きゃああ……!」


 かろうじて持ち堪えた剣士の耳に、悲鳴が突き刺さる。霞む視界に、映る。斬撃を喰らい、倒れる仲間たちの姿が。


「うそ……だろ?」


 朦朧とする意識の中で、思う。


 強化水を飲んだ。

 足は軽い。

 耐久性も増した。

 攻撃とて、以前のように白か黒かではない。

 頭を使って色を混ぜ、多彩にした。

 成長した。遥かに。


 ……が、強い。圧倒的に。

 あの熊型の魔物――フレアベアとは比べ物にならない。


「化け……物め……!」

「人じゃないと言ったはずだが?」


 仲間たちの血を刀身から払い捨て、少年が近付いてくる。


「少し本気を出したらこのザマだ。どうやら、フレアベアを討伐したというのは、嘘だったようだな」


 破滅が迫ってきているとわかっていながら、何の構えも取れない。踏ん張り、崩れ落ちないようにするのが精一杯だ。


 終わるのか、ここで。

 伝説は、まだ始まったばかりなのに。

 こんな、序章で……。


 ――ドンッ!


(爆発音……?)


 視線を投げる。少年の背後、魔法使いが血溜まりに這い蹲りつつも手を伸ばしている。少年の足を止めた小さな爆発は、彼女の、苦し紛れの炎。


「まだ生きていたとはな」


 少年が身を翻す。散乱するガラクタを残酷に踏み砕いて。


「俺は女であろうとも容赦しない」


 殺気に直面した魔法使いは、ぶるぶると呟く。


「にげ……て……」


 己ではなく、剣士の命を想った一言が、歯を食い縛らせた。


「ぐっ、ぅう……!」


 しかし、足は言うことを聞かない。バランスを崩した身体は地べたに無様に埋もれ、少年をみすみす行かせてしまう。


「……め……ろ」


 意識を失った魔法使いへ、凶刃が振り上げられる。


「死ね」

「やめろぉおおおーーーーっ!!」


 剣士の絶叫を、



 ――ガキン!


 硬質な音が、かき消した。


 広げた眼の向こう。

 鉄鋼が、サーベルを受け止めている。

 ゴーレムの剛腕をもぎ取ったようなガントレットを装備しているのは――少女。

 ジャンク屋の店主が、無表情に立っていた。


 何度見ても、剣士の目の前で少年と対峙しているのは、ジャンク屋の店主だ。


「何だお前、こいつらの仲間だったのか?」


 一歩も引かぬまま、少年が訊く。

 店主が首を横に振る。そう。彼女は仲間ではない。


「なら、どいてろ」


 少年は興味が失せたように身を離すと、振り上げたサーベルで再び魔法使いを


 ――ガキン!

 剣士の叫びよりも早く、ガントレットが割り込んだ。


「だめ」


 サーベルを食い止めながら、店主が言う。

 剣士たちに客以上の関心はなさそうだったが、ただならぬ事態と判断して止めにきた、ということだろうか?


「邪魔するなら、お前から死ね」


 少年が店主へ殺気を向ける。


(やべぇ!)


いくら頑丈そうなガントレットを装備していると言っても、ただの少女である。剣士たち冒険者を圧倒した化け物に敵う訳がない。


「く……そ……!」


 助けなければ。しかし、身体が動かない。

 サーベルが店主を両断し――


「……!?」


 消えた。

 斬られたと思った店主が、忽然と、いなくなった。


 いや。

 いる。

 少年の後ろに。


(いつの間に……!?)


 少年も面食らったらしい。目を瞠りながら、それでも旋回し、店主に斬りかかる。



 三度、火花。ガントレットで防御した店主は、今度は素早く飛び退いた。



 かと思えば一気に距離を詰め、躊躇なく殴りかかる。

 店主はガントレットから噴き出す風圧を推進力に変え、風を切るように高速移動していた。その加速は、知らなければ一瞬消えたように錯覚させるほど。


 二発。三発。四発。サーベルと荒々しく格闘した後で、また遠ざかる。撹乱するように地面を飛び跳ね、再び突っ込む。この繰り返し。


(な、なんだよ、あれ)


 目の前の光景が信じられない。


(ジャンク屋の店主だろ……!?)


 だが、到底、一般人の動きではない。

 少年の舌打ちが響く。どこから来るのかわからない、先の読めない戦法は、やりづらいことこの上ないだろう。


「速さだけじゃないな。力もある」


 ふと、少年が構えを変える。


「こいつらよりはマシだな」


 底知れぬ笑みに、背筋がぞわりとした。


「だが、そんな動きじゃ、俺は倒せない」


 剣士の悪い予感は当たった。

 フェイント混じりの店主の軌道を、少年が捉えたのだ。


 一撃を躱され、隙のできた店主へ、サーベルが煌めく。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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