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第12話 形状変化のルーン

 宿屋で宝物を無事に見つけたラットは、魔機屋へ急いで戻っていた。


 店主に早く見せたい。稀有な代物だ。

 さすがの彼女でも、出会ったことはないだろう。風に吹かれる頬がにやける。彼女に有意義なひと時を、少しでも提供できれば。


 ふと、すれ違った。


 視界を掠めた純白に引かれ、盗み見る。

 雪を連想させる長い白髪を、いつか、どこかで見たような。


 ……いや。

 この独特な雰囲気は、覚えている。


 反転する。


(どこで出会ったかな?)


 この街での知り合いではない。

 勇者パーティと旅をしていた頃の、知り合いだろうか?

 冒険者……には見えない。

 であれば、商人の娘か?


 いずれにしろ街を点々としているならば、怪我をした仲間の情報が、今ここで得られるかもしれない。剣士たちには申し訳ないが、捕まえて確認すべきと判断した。


 脇道へと進む少女。

 走る。

 追いかけ、曲がる。


(いない!?)


 どこにも見当たらない。

 消えた。

 雪のように……。

 






 襲いかかってきた閃光を、キィン、と咄嗟に斬り払った。


「へえ。まさか防ぐとはな」


 冷や汗を流す剣士の目の前で、少年が嗤っている。サーベルを握って。


 散らばる思考を手当たり次第かき集める。


 店の前。

 転がるジャンク品。

 扉を閉める音。

 立ち止まる少年。

 風の匂い。

 靡くマント。

 傾く重心。

 反射する光……

 迫る刃……!

 抜いた。


 奴が、振り向きざまに、サーベルを一閃したのだ。


「……おい」


 視線を少年に留めたまま、背後の仲間へ話しかける。


「はい!?」


 重なる弓使いと槍使いの裏声。


「強化水を飲め」


「まっ、ままままどうすい!?」

「てか何なのこの状況!?」


「……二人とも、リーダーの言うことを聞きなさい」


 魔法使いだけが、剣士の考えをわかってくれる。

 弓使いと槍使いはあたふたと、魔法使いは冷静に。指示に従う三人の気配を感じながら、自身もポーチから取り出した強化水を飲む。飲みながら、少年に話を振る。少しでも時間を稼ぐために。


「礼儀知らずにも程があるんじゃねぇか?」

「どうやって勝ったのか教えろ、と言っただろう?」


 少年がサーベルを不敵に構え直す。


「こうして試すのが、一番手っ取り早い!」


 閃光が疾る。


「っく!」


 紙一重で斬撃を弾く。

 攻撃の終わり、反撃のチャンスを見逃さず、少年へと放たれる矢。


 が、当たらない。

 死角から放たれた弓使いの一矢をサーベルは容易に斬り捨て、剣士の心臓へ再び突進する。


「でやぁああーっ!」


 槍使いが横から飛び出す。

 直後、斬られた。あっさり避けられて。

 魔法使いの炎すら、少年は背後に軽やかに舞って躱す。


 剣。槍。矢。魔法。

 強化水で能力を極限まで向上させ、四対一で迎え撃っても、ことごとく弾き返される。


「この程度の実力でアレに勝てたのか?」


 切り傷が増えていく剣士たちと違い、少年はどこまでも涼しい。


「なぜだ? 前の戦争で怪我をしていたのか……?」


 猛攻を捌く片手間にブツブツと戯言を呟く余裕すらある。


「手を抜いてるわけじゃないだろ? 俺を人と思っているのか? 安心しろ。俺は人じゃない」


 くだらない冗談まで。


「もっと必死になれ。さもなければ――殺すぞ」


 その発言は、本気だ。


「ッおい、やるぞ!」


 剣士の合図に、全員が腹を決めた。


「うおおおおーっ!!」


 地を蹴り、少年へと斬りかかる。


「ハッ、自棄になったか?」

「なんてな!」


 寸前、伏せた。

 剣士の代わりに飛びかかるのは、砂塵。


<舞い上がれ――ブレイズ!>


 魔法により発生した突風と、それにより舞い上がった砂塵が、少年の逃げ道を塞ぐ。


「馬鹿め。こんな砂埃で止められるとでも……ッ!?」


 地面に足を取られる少年。狙い通り。


「必殺、落とし穴ツクール!」


 砂塵に行手を制限された少年の足元に、槍使いがアイテムを叩き付けた。地面は流土となり、少年の足が次第に埋まっていく。


「おまけ!」


 弓使いがすかさず網を投げ、少年を捕捉する。


(今だっ!)


 立ち上がると同時、振り上げる。――ぐにゃぐにゃとしなる、魔力で纏われた透明な刀身を。


 ルーンを発動させた剣を、抜き放つ。

 唸り、暴れ回る剣。否、〝鞭〟。

 空気を縦横無尽に喰い荒らし、少年へと噛み付く。 砂塵の死角から。


 笑みが込み上げる。

 完璧だ。


 不規則な軌道の鞭ならば、読まれにくい。さらに死角から攻撃すれば、回避も難しい。


 万が一避けられたら?

 リーチの長さを利用し、手にでも足にでも巻き付けて動きを止めればいい。


 攻撃力増強のルーンでは真似できない、変幻自在さ。

 これこそが、地味な形状変化のルーンを選んだ理由。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった」

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と少しでも思っていただけたら、

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しばらく連続投稿予定です。

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