七 サリド視点
「僕が贈ったドレスを着てくれたんだね。とても嬉しいし、すごく似合っているよ」
「あっ、ありがとうございます」
彼女は最初に僕が贈ったドレスに身を包まれていて、とても綺麗だった。
彼女の事を想い創らせたドレス。サイズは同室で従姉妹のシシィに頼んで内緒で測ってもらった。
(もちろんサイズは知らない!ちゃんと封筒に入れてもらったからね!)
シシィは僕の母方の従姉妹で、偶然にもアリーチェ嬢と同室になった。
僕の提案を最初は嫌がっていたが、彼女の性格を知るといつの間にか一番の親友になっていた。
「あの・・どこに向かっているのでしょうか?夜は両親と会う事になっていまして・・」
「それなら心配は要らないよ!ディナーに招待したからね!」
「てっ?えっ?そ、そうなのですか?」
慌てる君も可愛いね。 そんな事を思いながら
「もちろん僕たちは婚約しているんだし、近いうちに僕にとっても親になる方達だからね!」
アリーチェは顔を真っ赤にしながら口をパクパクしている。
そんなにパクパクしていると食べたくなるな!
そんな事を考えていると我が屋敷へと到着する。僕は彼女をエスコートしながら屋敷にいる両親の元へ案内した。
「ようこそアリーチェ嬢。とても素敵な令嬢になられたね」
「ええ本当に。こうして二人が並んでる姿が見られるなんて・・食事まで時間があるわ。部屋を用意させたから休んでちょうだい」
「ああ、もう少ししたら君のご両親も来られるから」
僕たちは両親に礼をして部屋から下がった。
緊張で身体が震えているアリーチェ嬢を部屋まで案内し扉の前で立ち止まる。
「話は食事の後でも良いかい?そろそろご両親とシシィ達も到着するから」
そう言えば彼女は黙って頷いた。
食事会と顔合わせは無事終わりシシィ達は帰らせた。彼女の両親にも客間を用意してそちらで休んでもらう事にした。
子爵家からしたら我が家の客間も落ち着かないらしくホテルへ行くと言ったが、僕の両親がそれを阻止した。
そうするとアリーチェも帰ると言いかねないからと、無理やり泊まってもらったのだった。
疲れを取るためにお風呂に入ってもらい、僕の私室へ来てもらった。
本来なら結婚前の男女が夜に男の私室なんて・・と思ったが、結婚する事は決まってるし絶対に手は出さない!と皆に誓いを立て(させられ)た。
「寒く無いかい?」
そう言って彼女にストールを掛けた。
部屋は暖炉で暖めているが、寝巻にガウンだけでは僕の心も揺らぎそうだった。
「どこから話せば良いのかな?」
そう言いながら目の前にティーカップを置く。
彼女と初めて会った日、実は彼女に一目惚れをしていた。
あの言葉は彼女によそ見をして欲しくなくて、また自分も努力するから一緒に頑張ろう!と言う意味だった。
なのに僕は病に罹った。
生死にかかわる病で、もしかしたらそのまま逝ってしまうかも知れない大病だった。
僕が彼女に知らせないで・・と、お願いしたばっかりに、返事も寄越さない最低な婚約者となった。
幸いにも病は五年で完治したが、体力も学力も無い自分が恥ずかしくやはり黙っててもらう事にした。
それがいけなかった・・更に最低男の名に拍車をかけてしまったから・・
学園に入る時友人のハンズが
「僕の爵位のせいで彼女と棟が離れてしまう」
と、相談された。
「だったら僕と身分を交換しないか?幸いにも学園では婚約者は伏せる事になっているだろ?それに彼女は僕の顔を知らないから、入れ替わってもバレないよ」
ハンズは伯爵家だが割と新しい爵位のため、高位貴族とはならなかった。
お互いに婚約者の側にいられる。
そんな軽い気持ちで入れ替わったのに、こんなに後悔する事になるなんて・・
とにかく彼女の俺に対する評価は下の下。
婚約解消まで狙ってると知ると正直冷や汗が出てきた。
彼女に自分を相手にして欲しいと伝えれば、僕に被害が行く事を心配してくれた。
ああ、もっと早く本当のことを伝えれば良かった・・
本気でそう思った。
彼女が自分の事で泣いていると自然と抱きしめていた。
何度も何度も、本当のことを告げようとした。でもこの関係が壊れることを恐れてしまった。
「それほどに僕は君のことを想っていたんだ」
彼女の目を真っ直ぐ見つめる。
彼女も黙ったまま僕の話を聞いている。
「騙すつもりは本当に無かった。ただ、君の側にいたくて、君を守りたかっただけなんだ」
語尾がどんどん小さくなる。
彼女はまだ言葉を発しない。
許してもらえないかも知れない。
今も婚約を解消したいと思っているのかも知れない。
「私は・・」
彼女が言葉を発したと同時に僕は顔を上げる。
なぜか彼女は笑っていて・・
「サリド様が貴方で良かったと本当に思っています」
「えっ?」
ふふふと笑う。
「今だから正直に言いますね。私、サリド様と婚約を解消したかったのは、貴方とお付き合いしたかったからなんですよ?」
恥ずかしそうに話す。
「話してても楽しくて、安心できて、家格も・・今は違いますけど、とにかく一緒にいて気持ちが楽だったんです」
「・・それは、僕自身のことを?」
アリーチェは真っ直ぐ僕を見つめると、しっかりと頷いた。
「貴方様とお会い出来なかった日は、ずっと貴方様の事を想い浮かべていました・・貴方様をお慕いしてました」
恥ずかしいですね・・と、赤くなった顔を手でパタパタと風を送っている。
「怒ってない?僕を軽蔑していない?」
「怒ってもいませんし、軽蔑なんてとんでもない!貴方様は私を守ってくださいましたから!」
ああ、彼女は本当に・・
「アリーチェ嬢、いやアリーチェと呼んでも?」
「もちろんです!サリド様」
「ありがとう、アリーチェ」
軽蔑されても仕方がないと思っていたのに許してくれた貴女。
これからは僕が君を守ります。
命を賭けて貴女を・・貴女の笑顔と共に・・
僕は、僕たちは引き寄せられるように抱き合うと、初めての口づけをした。
次で完結です!




