二
「この学園の分からない所は、婚約していてもそれを内緒にしている所よね!」
それは二年生に進級して直ぐのこと。
クラスメートの令嬢たちが話しているのを聞いた時、私も疑問に思った。
本来なら婚約者同士の交流の時間でもあるのにと・・その疑問を解決したのは、これまたクラスメートの子爵子息だった。
「何でも自分の心を鍛える為、らしいですよ。婚約者がいても気持ちは嘘つけない。そこで自分の心をいかに抑えるか!と聞いた事あります」
「それは・・男性側の話ですわよね?」
「・・・そう、ですね」
そう!令嬢の中には学園に在籍中に婚約者を見つける方もいる。
それは私のように下位貴族の令嬢にとっては相手を探す目的があるからだ。
それなのに好きになった方に婚約者がいれば、問題が起きるのではないか?
「そこで男性側が婚約者への気持ちを尊重出来るかが問題となります」
「隠れて遊ばれる子息もいらっしゃいますわ・・」
「その場合は令嬢の方からの解消が認められております」
知らなかった!
と、言うことは・・
「相手の不貞を知れば、婚約解消出来るのね!」
友人のシシィ様が叫んだ。
「アイツ、私が知らないと思って影で遊んでいるの!私も証拠が掴めないから我慢していたけど・・」
「シシィ様も婚約者がこの学園にいらっしゃるの?」
「アリーチェ様も!?」
私は頷く。この学園では相手を教えることはタブーなのだ。
私は名前も知らないシシィ様の相手で、婚約者の不貞を探す事になった。が・・
「そもそも私の婚約者は高位貴族だから、棟が離れているのよね・・」
シシィ様の婚約者は由緒ある伯爵家。
伯爵家はこの国には多くある為、国への貢献度や古いか新しいかでランクが決められている。
「噂は聞くのよ・・良く他の令嬢と一緒にいると。でもその事を聞くと 相談に乗ってもらっているだけ と言われてしまうの」
「シシィ様は本気で解消したいと思われるの?」
少し考えて頭を横に振った。
「本当は離れたくないの。学園を卒業したら結婚する事は決まっているから、在籍中の事は目を瞑ればと思う反面・・」
「そんな噂を耳にしたら落ち着かないですわよね」
そう、サリド様の話も違う棟にいても耳に入るのだ。次期侯爵で成績も上位。誰に対しても優しい彼はお嫁さんになりたい殿方の上位なのだ。
私には冷たいのに・・
彼から届く手紙はほぼ無いが、その代わり家庭教師だった夫人からは サリド様の隣に立てる成績を や、クラスメートから慕われる人望を、とか私への気持ちなど関係ない言葉が並べられていた。
それでも何か言われるのが嫌なので成績は常に上の下。上位はなかなか取れないのだが、私のクラスではトップの位置を守り続けていた。
そんなある日、一人庭園をあるいていると男性数人の話し声が聞こえてきた。
私は直ぐに踵を返しその場を離れようとしたが
「サリドはマリア侯爵令嬢とはどうするんだい?」
(サリド様?マリア様と言えば・・)
最近隣国から戻られた令嬢だとシシィ様から聞いた。何でも外交員のお兄様について隣国の学園へ留学していたと・・
「別に彼女・・マリアとはどうもありません」
「そうかい?彼女は明らかに君を狙っているよ?」
おそらく第二王子殿下か公爵令息か・・少し楽しそうに言っている。
どちらにしても棟が離れているから私には分からない事だった。
「知っているでしょう?私にはお金で縛られた相手がいると」
「!!」
ショックだった。
サリド様には好かれてはいないと知っていたが、そんな風に思われていたなんて・・
私はその場にいられず静かに校舎へと戻った。
自室へ戻った後もサリド様の言葉が頭から離れず、胸が苦しかった。
そんな私を見たシシィ様は優しく声をかけてくださったが、相手の素性を一切言えないので
「気分が優れなくて・・少し横になりますね」
と言い残し自分の部屋へ行きベッドへ横になった。
(そんな風に思われていたから、私との交流も避けていたのね)
その日から私はサリド様への手紙を書く事を止めた。どうせ書いても読まれていないだろうし、噂のマリア様ならば家格も釣り合う。
「そうよ・・もうお金の事も解決しているもの。相手が私でなくても・・」
その日を境に私からの接触は一切無くなった。
「あの・・お聞きしたい事があるのですが・・」
次の日、私は婚約解消の話をした子爵家の子息に声をかけた。彼は女性から声をかけられた事に驚いていたが直ぐに
「何でしょう?」
と、返事をしてくれた。
「男性側から婚約を解消するにはどうしたら良いのでしょうか?」
「えっ?」
そう、私が考えた事、それは・・
「女性側から解消出来るのなら、男性側からも出来るのでしょう?女性は何をしたら相手から婚約を解消されるのでしょうか?」
もうサリド様を自由にしてあげよう。
私の気持ちは固まった。




