早まった一般化
よく晴れた日曜日の朝。
あーちゃんは、お父さんとお母さんといっしょに、近くの公園をお散歩しています。
「わあ、見て! ワンちゃんがいっぱいだ!」
芝生の上には、たくさんの犬たちが、気持ちよさそうにお散歩しています。
犬が大好きなあーちゃんは、大はしゃぎです。
「みんな犬を飼ってるんだね。うちも飼おうか?」
お父さんが笑って言いました。
それを聞いたあーちゃんは、ちょっと首をかしげました。
「それって本当? みんな犬を飼ってるの?」
「え?」
「だって、みーちゃんも、たっくんも、犬を見て泣いてたよ。犬が苦手な人も、けっこういるんじゃないかな」
お父さんとお母さんは、思わず顔を見合わせました。
あーちゃんはしばらく考えてから、ゆっくりと言いました。
「公園は、犬の散歩にぴったりの場所だもん。犬を飼ってる人が集まりやすいだけじゃないかな」
その言葉に、お母さんが感心したようにうなずきます。
「なるほどね。じゃあ、こう聞いてみよう。どうして公園には犬が多いのかな?」
あーちゃんは、自分の考えに自信がついたのか、胸を張って答えました。
「犬を飼ってる人が、よく来る場所だからだよ!」
すると、お母さんがにっこり笑って言いました。
「すごいじゃない、あーちゃん。“早まった一般化”っていう言葉、知ってる?」
「はやまった……いっぱんか?」
「うん。目にしたことや、少しの経験だけで『みんながそうだ』って思いこんじゃうこと。さっきのお父さんみたいにね」
お父さんは、ちょっと恥ずかしそうに頭をかきました。
「たしかに、公園だけ見て“みんな犬を飼ってる”って言うのは、早まった一般化かもしれないな」
そのとき、あーちゃんが思い出したように言いました。
「じゃあさ、『みんなあのおもちゃ持ってる! だから買って!』って、ぼくが言ったときも……」
お母さんがくすくす笑います。
「それも、早まった一般化かもね」
「でもね、お父さん!」
あーちゃんは勢いよく振り向いて、お父さんをじっと見つめます。
「たとえ“はやまったいっぱんか”でも、買ってくれるとうれしいな!」
あーちゃんのキラキラ目線に、お父さんぐらり。
「うっ……論理では……否定できない……!」