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聖彩の泉  作者: Sunder
3/3

火種

ルイフは今日、朝早くから競技場にやってきた。

今日の試合は非常に重要であり、城内で行われる最終試合への最後の出場枠を決めるものだった。


最初に入場したのは、昨日自信満々だった男、ミューズだった。

彼は高級なシルクのローブに身を包み、知的な雰囲気を漂わせていた。しかしよく見ると、その服には金属の装飾が施されており、文弱そうな外見の奥に攻撃的な本性が隠されていることがわかる。


「祖国シルケールを代表して来た。真の音楽の都がどこか、思い知らせてやろう。」


「ミューズのために!」

彼に同行してきた二人の従者が叫んだ。


そして、その対戦相手として歩み出てきたのは、なんとまたしてもパグだった。

より上位の試合へと進むために、彼はまたチームを変えたようだ。


「俺は戻る。あるべき場所へ。」

パグは、誰にも聞こえないほどの小さな声でつぶやいた。


審判が登場し、グネスの貨幣「花幣はなぺい」を取り出して投げた。

コイントスの結果、パグが先攻となった。


先攻の利点は、曲の流れを主導できることだ。

後攻側には補償措置があり、キロ大聖堂の規則では、配給される聖泉の濃度が5%高くなる。


パグは聖泉を一気に飲み干し、愛用のバイオリンを取り出した。

紅の聖泉の力が彼の体内に流れ込み、瞳、爪の内側、そして皮膚の下の血管までもが真紅に染まった。


パグは現在最も高齢の有名選手であり、かつて天才バイオリニストとしてその名を馳せた男だった。


デビュー戦で数々の国内タイトルを総なめにし、もちろんキロ大聖堂を含む最高水準の大会でも、名だたるベテラン選手たちを次々と打ち破った。


「撃墜王」「悪魔」――

そんな異名で呼ばれる彼は、対戦相手に演奏の機会すら与えずに打ち負かすことで知られていた。


通常、試合とは互いに音楽を高め合うことで華麗な旋律を生み出すものだが、パグの演奏は常に短く、対戦相手が反撃する前に決着をつけていたのだ。


今日、彼は再び“かつての自分”を取り戻す必要があった。

彼の手は産業機械のように正確無比にバイオリンを操り、赤い紋様がモアレのように地面へと広がっていく。


「これが、かつての世界準優勝者の実力か……!」

ルイフは思わず声を上げた。


ミューズはその演奏を聴き、喜びと狂気を浮かべた笑みを浮かべた。


「いいね。俺のデビュー戦にはこれくらいの実力が必要だ。」


ミューズは従者たちに指示を出し、琵琶と笛で伴奏を始めさせた。

攻撃的な高音が、パグの音楽に絡みつき、地面に描かれた動物の鱗や角を模した紋様を侵食していく。


パグの音楽が生み出した火炎を帯びた紋様は、ミューズの演奏によって徐々に美しいシルクとスズランの花の模様へと変わり、やがて完全に支配された。


パグは悔しさを滲ませ、低く潜む旋律へと変奏を施した。

地面の模様は脈打つ血管のように変わり、彼自身の赤い色がそこに溶け込んだ。


不吉な赤い模様が周囲を覆い、スズランとシルクは枯れ、崩れ去っていった。


ミューズの従者たちは呼吸を荒げ、不安と緊張が広がっていった。


演奏を続けるパグだったが、彼の身体から色彩は失われ、地面の模様へと完全に溶け込んでしまった。

規定により、ミューズが聖泉を飲む権利を得る。


ミューズは聖泉を一気に飲み干し、瞳は真紅に染まり、髪の毛の先までもが赤く爆ぜた。


彼は激しく指揮を執り、潜んでいた旋律を力強く引き上げ、重厚な力強い音楽へと変貌させた。


誰の目にも明らかだった――

ミューズの反撃が、今、始まったのだ。

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