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時期

作者: 雉白書屋

 調査船ノモス号の乗組員たちは、長い航行の末、ついに知的生命体が存在する惑星を発見した。


「……そのはずだったんだが」

「船長、やはりどこももぬけの殻のようです」


 宇宙船を町の近くに着陸させた一行は、さっそく調査に向かった。しかし、どの家も空き家同然で、人影は一つも見当たらなかった。


「汚れ具合からすると、つい最近まで生活していたようだが……。いったいどこへ消えたんだ?」

「他の町の住人に襲撃されて連れ去られたんでしょうか?」


「いや、家の素材は木と土、家具も木製と、確かに高度な文明ではなさそうだが、殺伐とした雰囲気はないな。町の入り口に柵すらなかっただろう?」

「そうですね。争った形跡もありませんし、じゃあ、伝染病とか……」


「町の病院に全員が集まっていると? ありえなくはないが……」


 乗組員たちは警戒しながら町の中をさらに進んでいった。

 やがて、一際目立つドーム状の大きな建物を発見した。入り口をくぐると、ひんやりとした空気が漂い、内部は薄暗い。すぐ目の前に地下へ続く階段が伸びていた。乗組員たちは頷き合い、慎重にその階段を降りていった。そして――


「せ、船長……」

「ああ、いたな……だが、これは……」


 広々とした地下空間には、何段にも積まれた木製のベッドが整然と並んでいた。その上には、この町の住人と思われる人々が横たわっている。


「死んでいるわけではなさそうだな……」

「ええ、どうやら眠っているだけのようです」


「無理に起こすのは気が引けるが、状況を確認する必要があるな」

「あっ、船長、ちょっと待ってください。船に残った乗員からの通信が……」


 通信を受けた船長は静かに頷いた。


「……なるほどな。冬眠というわけか」


 宇宙船のレーダーが捉えた情報によれば、巨大な寒波がこの町を覆おうとしているらしい。それも惑星全体に及ぶ規模だという。今から他の町を探したところで、どの町も似た状況にあるだろう。

 そう考えた乗組員たちは宇宙船へ戻って地球本部へ報告を送り、指示を仰ぐことにした。


「本部の命令はこうだ。我々もコールドスリープに入り、住民が目覚めた頃に交流を図れ、とな」

「ははは、起きたとき、なんだか親近感が湧きそうですね」

「寒波は厄介ですが、この星はかなり資源が豊富なようです。本部はなんとしても植民地化したいのでしょう」

「寝坊しないように気をつけないといけませんね。カッコがつきませんもの」


 寒波が去る日を計算し、タイマーをセットした乗組員たちはコールドスリープ装置に入った。

 静かに眠りにつき、長い冬が明ける日を待つ。


 やがて、寒波が過ぎ、ついに住民との対面の日が訪れた。


「ひゃー、なんだと思ったら、他の星から来たのかあ」

「らしいな。うちらと交流したいんだなあ」

「ああ、それより、みんな腹を空かせてる。これも早く運ぼう」

「ぜひ、仲良くしたいな。こんなにたくさんの貢物を置いていってくれたんだから」

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