第1節 『一つ目の嘘』
この世界には“ヒト”が存在した。
それを世界は、人間と妖精と呼ぶことにする。
妖精と人間は手を携えて、仲良く暮らした。しかしある時から、仲違いをしてしまう。
全ての発端は今より数千年前の出来事。
世界が捻くれていた事が、全ての元凶。
そんな捻くれた世界だから、妖精の守護者として神が生まれ、人間には――ただの人間の枠組みから逸脱した二つ目の種――『癒しの聖女』が現れた。
彼女は詩を用いて、あらゆる病を癒し、すべての者を助け、世界さえも救った。
そして聖女の出現と共に、彼女を守る三つ目の種――『剣痕を持つ者』が現れる。
彼らは剣の刻印を産まれた時より体に持ち、自身の体内からそれぞれの痕になぞらえた剣を取り出せ、それをもって無敵の力を誇った。
☆
ドタバタと階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。
すでにこの現象は日常のことだったので、ゆっくりと開きかかった瞳を、敢えてもう一度閉じ、その瞬間を今か今かと待つことにする。
バンッ! と音を立てて勢いよく部屋の扉が開き、ノックもなしに侵入してくる者。瞳を閉じながら、その者の姿を想像した。
長い闇色の髪に、紫色の瞳の彼女を。
「ねぇねぇねぇ! ちょっとリディ! 早く起きてってば!」
部屋の中に進入してきた彼女は、高いソプラノ声をあげると同時に、強烈な揺さぶりを掛けてくる。
ん? いつもだったら、もう少しだけ優しげに起こしてくれるのだが……。何かあったのだろうか。
「……ん。どうかしたのか、マリア?」
目を開きながら彼女の名を呼ぶ。
想像通りのヤツが目の前にいた。
瞳に映る彼女の名前はマリア、通称マリアンヌ・ステラ・エルトロンと言う。順序が逆だと言いたいところだが、実際に愛称の方が彼女の場合、主流なのだ。
マリアはこの俺、リディル・ヴァン・エルトロンの幼馴染ってやつで、かく言う俺もリディと呼ばれており、通称リディルであったりする。そしてさらに、姓が同じエルトロンなのは彼女の家族が俺を家族だと認めてくれたからであったりする。
まぁ、そんな些細な事、今はどうでもよいらしい。
「それがそれがそれがね! 大変で大変で、大変すぎなのよ!」
目をカッと見開いたマリアのヤツが非常にテンパッているので、俺はすぐに身を起こし、落ち着くように頭を撫でてやった。
こうやると大人しくなるから、ちょっと……いや、けっこう面白い。
「ちょ、ちょっと、リディ!」
「おう。まぁ、少しは落ち着けよ」
「あ……うん。……ってそうじゃなくて、大変なのっ!」
数瞬大人しくなったかと思えば、次の瞬間にはまた騒がしくなるマリア。表情がコロコロ変わる彼女を見ているのは、相変わらず面白くて飽きがこない。
が、撫でても落ち着かないとなると、これはマジに相当のことがあったのかもしれないな。
「ほう、大変なのか。で、どうしたんだ?」
内心のざわつきを無視し、可能な限り冷静に言う。
「うんとね。ほら、コレ!」
マリアがさっそく、手に握っていた手紙らしきものを俺の胸に押し付けてくる。かなりの力で握りこんでいたようで、その手紙らしき物体は完全に皺くちゃになっていた。
このままでは仕方ないので、手紙らしき物体を丁寧に伸ばしながら、何とか読める形に戻してゆく。
「なになに……え~、『汝、マリアンヌ・ステラ・エルトロンにこの度、癒しの聖女養成のための施設「グランエスト」への入学を要請する。シュレイグ政府より』。…………」
俺は思わず、手紙を持ったまま硬直してしまった。
「ね? ね? 大変でしょ!?」
しかしグッと顔を接近させてきたマリアのお陰で、その硬直から逃れる。
そのまま一秒、二秒と思考し――。
「マリア。イタズラなら、もう少しマシなことをやれよ」
と言ってやった。ちょっとふざけが過ぎたな、バカでもこれが冗談だとわかりそうな内容だ。
すると顔を真っ赤にしたマリアは、俺の手から手紙を引っ手繰る。その際にクシャっという音がした。あ~あ、せっかく伸ばしたってのに。
「イタズラじゃないよ! コレはマジなんだって!」
マジときたか、ふむ。俺の専売特許であるはずの『マジ』が使われるとは……この様子だと、冗談ではないのかもしれない。
「……本当の本当に、本物なんだな?」
一応、念のため、確認を取る。
真剣な俺の表情を見て、マリアも気を引き締めた顔になり、黙ったままコクリと頷いた。
「……はぁ。マジかよ。お前に癒しの力なんてあったっけ?」
「うーん、よく分かんないけど、あるんじゃないのかな」
「まぁ、こうして手紙がきてるんだから、あるかもしれないか……」
癒しの聖女とは大昔に出現し、今尚この世界『シュレイグ』に存在する希少なヒトのことだ。そして決まってその聖女は女性であり、彼女らは詩を歌うことであらゆる傷や病を治し、一部の人々の間では救世主として崇められている。
崇めている宗教団体は狂っていると名高いのだが、割とどうでもいいことだ。
重要なのは、そんな癒しの聖女を養成するのが『グランエスト』と呼ばれる施設で、政府の何らかの調査によって適正があると見なされた者だけが、聖女候補としてそこへ半強制的に入寮させられるということで。半強制というのは、行くのは自分の脚で、しかし行かねば政府が強制連行しにくるという非常にムカつく制度だ。
この手紙は確かに政府からのもので、マリアがグランエストへ入ることを示唆していた。
つまりマリアはこの村を離れ、王都のさらに中心部にあるグランエストへ行かねばならないことを意味している。
彼女に例え――癒しの聖女たる力が無かったとしても、行かねばならない。そういう決まりだ。
「それでね、だから、私これから王都へ行かなくちゃいけないんだよね?」
不安そうな感情を浮かべたマリアが問うてきた。
長い付き合いなので、彼女の不安が手に取るように分かってしまう。
問い自体の答えは、『当たり前だ』で切り捨てることが出来る。
だが、それは出来っこない。
ならここは、俺も腹を括るしかないか……。
俺は元々孤児だった。昔から日々、この世界エデンハイドでは人と精霊と戦争を繰り広げているという現状だったが、戦争孤児というわけではなく、正真正銘、親に捨てられたようだ。
少しだけなら、その時の記憶がある。
俺はこの村の入り口で待つように言われ、いつまでも待っていた。
降りしきる雪の中で、たった独りで両親を待ち続けた。
しかし両親はそれっきり戻っては来なかったんだ。やがて体力の限界となり、俺は地面へ崩れ落ちた。そこからの記憶は目が覚めるまで存在しない。
目が覚めるとそこは見慣れぬ天蓋で、すぐ隣に女の子が椅子に座っており、彼女はすやすやと眠っていた。
やがて大人がやってきて、事の顛末を聞かされた。倒れている俺を女の子が発見し、その子の両親が運んでくれたようだ。
こうして俺はその日から、女の子の家に養子として迎えられた。
そして大きくなるにつれ、自分が捨てられた理由を知る。
その理由とは、俺が『剣痕を持つ者』――『ソードクレイター』だったからだった。ヒトではあるものの、厳密な意味で、人間でない存在として定義されるソードクレイターは、一部の人間たちには受け入れられていない。それはソードクレイターが非常に強く、一般の人々が何人束になっても敵う相手ではないからだ。人間は自らと違うものを恐れ、自らよりも強いものを嫌う。
この世界には、こういった差別が根強く存在している。
しかしこの家と、女の子と、その両親は、そんな俺を快く受け入れてくれた。最初はグレていた俺のそばに、根気よくいてくれた。見ていてくれた。話しかけてくれた。名を呼んでくれた。
そして――家族になってくれたんだ。
今の自分があるのは、ひとえに彼らのお陰だった。
この俺が存在してもいいのは、いてもいいと……いや、そこにいたいと――心底そう思え願えるのは、マリアの隣だけだ。
父さんにも母さんにも、案外泣き虫なマリアを頼むといつも言われてもいる。
だからさ……。
だから俺は、目の前のマリアのリラ色の瞳をジッと見つめ、言い放ってやるんだ。
「マリア。お前が王都へ行くのなら、俺も行ってやる。俺は――『ディシディア』に入るよ」
「……え!? 本当に?」
途端に嬉しそうな顔になるマリアに、俺は自然と口元が綻ぶのを止められなかった。
だってしょうがないだろ。彼女の笑顔には、今までで勝てた試しが無いのだから。そしてこれから先であっても、一生勝つことはないだろうと知っているのだから。
「もちろん。これから騎士になるってのに、二言は許されないだろ?」
「う、うん」
癒しの聖女の養成所があるように、剣痕を持つ者にも養成所――騎士養成所『ディシディア』が存在した。それは政府が強い剣痕を持つ者を集めるためでもあり、また正しい力を剣痕を持つ者に教えるためでもあり、そして最強の剣痕を持つ者に『癒しの聖女』を護る役目を与えるためでもあった。
そしてまたディシディアへ入学し、無事に卒業をした剣痕を持つ者は剣の騎士と呼ばれた。
剣の騎士は一般の人々にも、その力を正しく使う者として歓迎されているし、聖女を護る絶対の存在として敬われている。
でもまあ、これすら一種の差別体系でもあるのだから悲しいことだが。
「父さんと、母さんにはもう言ったのか?」
本当の両親ではないが、そう呼んで欲しいと、“父さんと母さん”には言われていた。それは本当に嬉しくて、暖かくて、幾千と感謝しても感謝しきれないほどの恩が彼らにはある。
しかし父さんも母さんも、恩などと言ったら怒るだろう。
だからこそ、俺はマリアが望むのなら、彼女に付いて行きたい。
どこまでだって――自分の意志で。
「ううん、まだ言ってない……」
「そっか、なら今から言いに行くか?」
「うん、そうだね。……リディは?」
少し遠慮がちに俺の名前を呼ぶマリア。独りでは心細いのだろう。普段は横暴で傍若無人な彼女は案外に寂しがり屋で、怖がりだったりするのだ。
「もちろん、一緒に行くが?」
だから惚けたように、当たり前のようにこう言ってやると、マリアは満面の笑みを送ってくれた。
やはり彼女は、笑顔が一番可愛い。
「うん!」
こうして二人で、階段を降りていった。
「――というわけなの」
マリアが両親に事情を説明している間、俺は手持ち無沙汰にただその光景を見守っていた。
そして説明が終わると、父さんと母さんはこちらを向いて、
「リディ。マリアは貴方も一緒に行くと言っていたけど、本当なの?」
と尋ねてきた。
母さんはいつも優しげな表情をしていたが、今日ばかりは悲痛な面持ちをしている。
無理も無いだろう、もう二度と娘に会えないかもしれないのだから。聖女候補に選ばれるとは、そういうことだ。
そして俺自身も、もう二度とこの村へは帰れないかもしれない。
だが――。
「はい。俺もマリアに付いて行き、騎士養成学校に入学したいと考えています」
そう俺が答えると、母さんは余計に悲しそうな顔つきとなった。
ごめん、母さん。
心の中でだけ、謝っておく。
「そうなの……。貴方まで行ってしまうのね……」
「母さん、大丈夫だろう。私は正直なところマリアだけでは心配だったが、リディが一緒であるなら何も心配していないよ」
父さんが、母さんを慰めるように言う。自分のことを買ってくれているのは嬉しいが、俺が父さんの期待に応えられるかどうか心配だった。
しかしマリアだけは何が何でも、危険な目に遭わせたりしない。これだけは命を賭けて誓っている。
「それって、どういう意味よ、お父さん!」
自分だけでは不安だと言われ不満だったのか、腰に手を当てたマリアが父さんを問い詰めている。
それを「はははっ」と、豪快に笑い飛ばす父さん。
さすがだ。
父さんの笑顔に釣られるように、自然と皆が笑顔になった。
俺もいつか、父さんのように、そこにいるだけで皆が笑顔になれるようなでっかい存在になりたい。
だから俺は――
「父さん。俺、剣聖になって、絶対にマリアを守ります」
自らの覚悟を示した。
剣聖とは剣の騎士の中でも最強の者に与えられる称号。そして大抵の場合、その剣聖は自らが望んだ聖女の護衛に就くことになる。それがたとえ、候補であっても選び放題だ。
といっても歴代の剣聖たちは大抵、聖女の中の聖女――『到達者』に着くのだが。
しかしそもそも俺の場合、剣聖の域にまで強くなるという事が今しがたの言葉の真意である。
つまりこのことをここで言うという事は、最強の存在がマリアを絶対に守り抜くということの何よりの誓いだった。
「ああ、リディ。お前ならなれるさ。なんたって、俺の息子なんだからな!」
こんな無茶なことを言っても、豪快な笑顔でそう言ってのけ信頼してくれる父さんに、少しでも近付きたいって思う。
そしてこんな俺のことを息子と言ってくれる父さんに、その期待に、絶対に応えてみせると心に深く刻み込んだ。
「はい!」
「でも、リディってヘッポコじゃない」
父さんと拳を突き合わせている、そんな良い雰囲気のところで、空気を読んでないマリアンヌがいらんことを言ってきた。
コイツには前々から思っていたが、もう少し空気というものを読んで欲しい。
「うっせぇ! それは俺が本気になったことがないからだよ!」
といっても、確かにヘッポコと言われても仕方がないが、それでも納得できるかという問いには、ノーだった。
実を言うと、俺はこの村であった喧嘩の類において、一度も勝ったことがない。
村の大将みたいなヤツといつも喧嘩をしては、負けていた。でもこれにはちゃんと訳がある。断じて、俺が弱弱なわけじゃないぞっ!
「へぇー、ほぉー、そうでございましたか。ヘッポコ剣聖様」
そんな心の中の言い訳など露知らず、目に付くのは性悪聖女候補者のニヤけた顔。
「くっ、マリアァーッ!」
怒りの沸点を突破したので、席を立ちマリアを追いかける。
しかしマリアも伊達に俺と長い付き合いをしているわけで、そろそろ襲われると思ったのか、すでに席を立って家の外へ飛び出していっていた。
もう一度、一応言っておくが、俺が一度も本気を出した事が無いというのは本当だ。
本来、剣痕を持つ者である俺が一般人に後れを取るわけが無いのだ。そもそもが規格外の存在でありのだから。
しかし剣を出して本気で闘えば、その迷惑は父さんや母さん、そしてマリアへ返ってくる。そのことを俺は熟知していたし、それだけ、剣痕を持つ者と一般の人との溝は大きく深いのである
。
マリアを追いかけて外に飛び出ると、そこは白銀の世界だった。
雪が舞い、幻想的なまでに白い底を形成している。
そういえば、俺が初めて助けられてこの家に来たのも、こんな白銀の日だったな。この寒い中で、凍え独りでいた俺を優しく暖めてくれた家族。
そんな家族を護ること。それこそこの俺が剣の痕――剣痕を刻み込み、剣痕を持つ者として生れ落ちた意味だと思うから。
呪いであったはずの痕に、今は感謝したいほどだ。
「おい、待てってマリア!」
「やだよぉーだっ! リディが捕まえるまで、絶対に待たないからねぇ!」
そりゃそうだわな……。
しかしまぁ、相変わらず元気なヤツだ。寒くて犬も丸まって寝ている冬の早朝に、マリアはそれほどの厚着をせずに外を走りまわっている。
しょうがないなぁと思いながら、彼女を捕まえることに本腰を入れた。
彼女がああ言ったからには、こちらが捕まえない限り、本当に待ちそうもないし、家に帰りそうにもなかったからだ。
そして――辿り着く。約束の場所へ。
「……マリア」
その約束の場所で、彼女は佇んでいた。
どうやら、最初からここへ来るのが目的だったようだ。それならそうと言えばいいものを。案外、マリアは不器用なヤツなので、しょうがないかもしれないが。
俺は雪の絨毯を踏みつけながら、待つ彼女の下へ進んでゆく。シャリシャリと雪の結晶が砕ける音が響く。
マリアと俺以外の誰もいない空間では、結晶の砕ける音だけがよく響いていた。
俺と彼女の約束の場所とは、大きな木が一本だけ立っている丘の上で。
きっと世界中のどこよりも、彼女との思い出が詰まっている場所だ。
「ここに来るのも、最後になるかもしれない……よね?」
「ああ、そうだな」
大木に手を当てながら、ゆっくりとこちらを振り向いてきたマリア。黒髪に白い雪片が付いている。
俺が彼女に近付いてゆくと、マリアは瞳を閉じて、何かを待っているかのようなポーズをとった。
しかし生憎と、俺には何を彼女が待っているのか全然分からなかった。
だから取り敢えずマリアの頭を撫でて、ついでに髪に乗っかっている雪の欠片を落としてやる。頭を撫でると、いつも彼女は全身で喜ぶのだが、言う事は決まって嫌味で。
それなのに今回は、全く反応が違った。
マリアは怒りと思われるオーラを全身から放ち、「そうじゃないでしょっ! リディっ!」と、乱暴に言葉を吐き出した。
息遣い荒く、彼女の白い息が俺からでもよく見てとれる。どうやら本当に怒ってしまったようだ。
何が違ったのだろうか……?
「……はぁ。もういいよ。別にアンタに期待してたわけじゃないのよ、このヘッポコヘタレ!」
本当に、マリアが何を期待していたのか、それすら分からない。
それなのにヘッポコヘタレ呼ばわりは、大変遺憾だったが、ここは逆らわないほうがいいことを長い付き合い上、知っている。
だけど、彼女の不満げに膨らんだ頬っぺたを、突っついてみたい衝動には駆られた――マリアの頬っぺたは非常に柔らかいのだ――が、やると殺されるのは目に見えているので、やめた。
「ふぅ、それにしても寒いな……」
だから話題を変えるために、そう呟いた。
それに対し、依然として呆れたような、釈然としないような顔をしながらも、マリアはしっかりと答えてくれると思うから。
「…………む、わざと話題を逸らしたな。うん、でもまぁ、そうだね、冬だもん、やっぱり寒いよ。……でもね――」
これだけの言葉で、俺と彼女には分かってしまう。
「だな、こうすれば寒くない」
互いにほぼ同時に手と手を触れ合わせ、しっかりと握り合った。
僅かな隙間すら埋めるように、しっかりと互いの指を絡ませた。
その瞬間、確かな彼女の温もりが伝わってきて、とても幸せな気分になる。
きっと今の俺は、この世界で、誰よりも温かいところにいるのだろう。
「あったかいね、リディ」
「ああ。あったかい」
「昔、この木に彫ったコレ。これを見るのも、これで最後なのかな……」
マリアがコレというのは、この大きな木に刻まれた落書きのことだ。
昔――幼い頃に、俺と彼女で刻み込んだ、永遠なる約束。
『ずっと、一緒にいよう。何があっても、ずっと一緒にいよう。』。
俺と彼女の――最初で最後の約束だ。
そして俺が彼女に吐いた、一つ目の嘘となる言葉である。
この章は昔話というか、番外編って感じです。
稚拙な文ですが、読んでくださると、取り敢えずFranztは跳んで喜ぶと存じます。誤字脱字・感想とうとうありましたら書き込んでやってください。
ではでは~
急に卒業したことが寂しく思えてしまいシンミリしているFranztより