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エデンハイド物語   作者: Franz Liszt
王国の章『水の都編』
30/51

第23節『水の都にご到着!』

 突如、水の中へ引き摺りこまれた白光祈騎士団(ルミナス・クロイツ)の団員たちは皆、驚きで溢れかえっていた。水の中でモガいたり、泳ごうとしたり、兎に角、水から出ようと必死だった。

 その中でも、今までに泳いだことも全くなく泳ぎ方を知らないアリスは大いに焦り、溺れる子供のように苦しそうにしている。だからゼクスは深い青に包まれながらも、すでに冷静さを取り戻していたので、急いで彼女の手を掴んで力強く握ってやった。

 そうすると安心するのかアリスは暴れるのをやめ、じっとゼクスを見つめた。水の中だというのに視界は全くぶれていない。薄紫の瞳が、ほんの少しだけ不安げと安らぎに揺れている。


 次にゼクスは自身の口元に空いている手をやり、もがもがと開けたり閉めたりして見せた。ゴボゴボと水泡が現れるが、要は呼吸ができると伝えたかったのだ。

 その真意を読み取ったアリスも、ようやく本当に安堵したようで握っていた手から力を抜いた。


 やがて明るい光が(まぶた)の上の方を刺激してくる。どうやらそろそろここから出られるようだ。先ほどからぐいぐいと体が上に引っ張られているのは、そのせいだろう。

 また暫くすると水面が見えてきて、押し上げられるような感触も消えた。ここまで来ればもう大丈夫だと判断したのかも知れない。

 しかし同時に息も苦しくなり始め、慌ててゼクスは水面の上へ出ようとしゃにむに腕と足を駆使した。その際に、アリスの手を引っ張ってやることも忘れない。

 一瞬だけ、彼女はまた暴れるかもしれないと思っていたが、そんなことはなく、いたって大人しく連れられてくれたので正直助かった。


 この甲斐もあって程なくして水面の上へ出られ、止めていた息を吐き出して肺の中へと空気を送り込む。包みを持っていない方の濡れた手で前に張り付いてきた白髪をかきあげて、ここがどこなのか知るべく辺りを見廻した。

 全く見覚えのない場所だった。

 隣のアリスはまだ荒い呼吸を繰り返している。長い黒髪が辺りに漂うように水に浮いていた。そして近くにはロイドやクレス、ソフィアも無事のようで――皆が顔を見合わせ、笑い合った。


 なんたって、ついに到着したのだ。


 ――水の都に。


 どうやらここは森の中らしいが、先程までゼクスたちがいたあの森とは違い、今いる湖の周りには煉瓦が敷き詰められており、更にそれを囲むように幾つもの円柱が立てられ、その上には御椀(おわん)のような形の大きな天井がある。雨水を湖の中へ入れぬようにという配慮なのかも知れない。よくよく見れば森の中にある木々や植物は シュレイグ王国で目にするものとは違う。


 完全にシュレイグ王国とは違う場所へと飛ばされたらしいと知り、ゼクスは深く感激した。わくわくな大冒険の始まりだと思ったからだ。


「どうやら、着いたようですね」


 満足そうに言って、ロイドは少し泳いで湖の淵から陸に這い上がろうと力を込めた。

 このまま水の中にいたら風邪を引いてしまうと、ロイドに倣うようにゼクスたちも陸へ上がろうとした――その時。


「……誰?」


 人がいたのかと思い、ゼクスがぎくりと身を強張らせて声のした方へと顔を向ければ、そこには何本もの花を束にして抱えた一人の少女が佇んでいた。年はゼクスとアリスより少し下くらいだろうか。明るい色の、ふわりと膨らませたような美しい髪に、どこか愛嬌ある顔立ち。人間と変わっているのは耳が尖がっているところぐらいだろう。

 それでも一般的には十分、美少女でまかり通りそうだ。

 そしてまた少女の着ているものは上下共に露出度の大きな服で、恥ずかしさからゼクスは目のやりどころに困った。

 思わず目を逸らすと、紫の瞳とぶつかった。

 次の瞬間、ぐいっと頬を(つね)られる。


「いへぇ! はにゃせよ! (いてぇ! 離せよ!)」

「ふんっ!」


 アリスはそっぽを向いてから、ようやく手を離した。そしてまたこの遣り取りは、クレスとソフィアの間でも行われていたのだった。さっそく尻に敷かれ……。


「あの……ここは水の都で間違いないですよね?」


 一人だけ冷静でいるロイドが、少女に問いかけた。しかし少女は大きな驚きをその顔いっぱいに浮かべ、完全に固まってしまっている。信じられないと、その顔が言葉より雄弁に語っていた。

 視線だけが交わり、しばし沈黙が流れる。


「……お邪魔しまーす!」


 痛いほどの沈黙に耐え切れなくなったゼクスが、そう声を掛けて都の中へ歩いてゆこうとする。

 それが合図となったようで、皆が動きを取り戻す。

 すると少女はやっとのことで声を絞り出した。


「な、なんで――」


 少女は震える身体を抱えている花ごと抱きながら、鼓膜が突き破るような大声で叫んだ。


「なんで、人間がいるの!?」


 あまりの大声にキンキンと耳鳴りのする耳を押さえながら、ゼクスたちは心の中で呟いた。


『水の都にやっと来たぜ、わくわくするぜ!』

『だ、大丈夫かしら……って絶対にまずいわよね』

『前途多難そうですね……』

『僕たち、ちゃんと帰れるのかな』

『あらあら、驚いたあの子も可愛らしいですわぁ……』


 と。

 人間はその性格によって例え同じ物事であっても、それに対する解釈の仕方が全くといっていいほどに異なっているようだった。

 このように白光祈騎士団(ルミナス・クロイツ)の面々はかなりバラバラだったが、一つだけ共通して思っていることがあった。

 それはこれより任務本番だということだ――。



いやはや季節の移り変わりは早いものです。

ようやく3年生になったかと思いきや、もう4月も終わりゴールデンウィークです。やほーっっ!!


といっても受験生である僕には、休日というものは存在しなく、同じように塾やら学校の課外やらがあって全くいつもと変わりません。


だけど少しは更新早めにできると思うので、どうかよろしくお願いいたします。いつもよりは書く時間があるはず……。


TOEICで700越えを目指し、2か月攻略問題集を解いているという全く受験勉強に関係のないことばかりしている、馬鹿なFranzより


TOEIC難しいです><

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