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【書籍化&コミカライズ】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。  作者: ごろごろみかん。
三章:寓話の相違

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遠慮配慮、忖度不要の楽しい人生満喫中

クリストフ先生が回復魔法を唱えると、見慣れた──懐かしい光がその場を包み込んだ。そして、その光が収束したあと。確実に、足の痛みはマシになっていた。


「失礼」


ふたたび、クリストフ先生が触診する。足首を伸ばされたり、指圧されたりするが、先程のような激痛は襲ってこない。


「おお…………!!」


初めて魔法を見たひともこんな感動を抱いたのだろうか。それほど感激している私に、クリストフ先生がにっこり笑っていった。


「全治二週間です」





その後、クリストフ先生に添え木を巻いてもらい、松葉杖を用意してもらった私は、それをついて立ち上がってみた。


「立てる……!!」


感動していると、クリストフ先生が使った消毒液やら包帯やらをしまいながら言った。


「無理をしたら悪化しますからね」


「分かりました。大丈夫です。今度こそ完治させてみせますわ!!」


そしてもう!!怪我はしたくない。

私が決意を固めていると、テオが言った。


「それじゃ、オレは部屋に戻るけど。エレインはどうする?」


「あっ。私も戻ります!今後のことを考えたいですし……。テオ、このあと少しお時間ありますか?」


尋ねると、テオは首を傾げたが「いいよ」と答えてくれた。

松葉杖……使うのは初めてだ。慣れないながらも、なかった時よりは断然マシ。そして、足の痛みもかなり落ち着いていた。そろそろと動き出すと、歩きやすいようにテオがエスコートしてくれる。その配慮に感動しながらも、私はルカの研究棟を後にした。





研究棟の階段をおりながら、私はしみじみと言った。


「テオ……って、ほんとうに王子様だったんですね」


「何?急に」


もっともな反応である。だけど、いまいち実感がないというか、現実味がないというか。出会いが出会いだったからだろうか。

テオのことは、なんだか分からないけど、私を助けてくれた心優しきお兄さん、という認識だった。

そのため、彼が実は隣国アルヴェールの王族でしたー!と言われても「ひえー!」となるだけで、いまいち現実味が薄いのである。


だけど流石に、というべきか。このノクタリス城に来てからは、テオと、ロイ殿下という存在が紐づき始めた。

まだ、違和感があるところはあるけれど。


「テオは、謎の多いひとだっていう話ですよ!」


「それをいうなら、エレインも大概だと思うけど。あ、ここ段差急だよ」


テオの気遣いに感謝しながら、私は最後の一段を降りた。


「ありがとうございます。……私は、確かになかなかハードな人生を送っている自覚はあるんですけど。でも、ぐうぜん出会ったお兄さんまでがそうだとは思いませんでした。人生、色々あるものですね」


「達観した物言いだね」


「それは──まあ、一度は死んだ身ですからね!」


前世と今世、合わせて二度目の人生だ。だけどテオは、エレイン・ファルナーとしての死を言っていると思ったのだろう。薄く微笑んだ。


「頼りになるね、エレインは」


「…………本気で言ってますか?」


思わず、まじまじとテオを見上げてしまう。それに、テオが首を傾げた。さらりと、彼の銀髪が揺れる。綺麗だな、と思う。月並みだけど、絹糸みたいだ。月夜の下で見たら、もっと映えそう。ノクタリス城──ノクタリスは夜を意味する言葉だ。だからか、そんなことを考えてしまった。

そこで、いや、と思い直す。


「テオは、月が似合いますよね」


「…………」


テオが物言いたげに私を見る。だけど、私はそれに構わず、テオとの出会いに思いを馳せた。


「最初に会ったのが、夜だったからでしょうか?」


「知らないよ。というかそれ、ほかでは言わない方がいいよ」


いつも以上にぞんざいな言い方に、私は顔を上げる。テオはやはり、物言いたげに私を見ていた。不満そう、と思った私はその理由を考察した。そこで、ハタとひとつの推測に思い至った私は、口に手を当てる。


「も、もしかして失礼な言い方でしたか?やっぱり太陽の方がいいですか?太陽みたいって言った方が嬉しいですよね??」


月と太陽なら、太陽に喩えた方が気分がいいものなのだろう。恐らく。だけど今のは、決して悪い意味で言ったわけではない。テオは、纏う雰囲気が不思議で、現実味がなくて。そこまで考えた私は、まさに的確な単語を思いついて、ぽんと手を打った。


「夢!そう、夢みたいなんですよ、テオは」


「また、よく分からないことを言うね……」


ちょっと疲れたように言う。今のテオは、少しだけ現実味がある。私は頷きながら言った。


「幻みたい……っていったら、失礼かもしれないんですけど。なにかの拍子にふわって消えてしまいそう、というか。霧の中で出会ったひと、みたいな感じというか……。そう!生々しくないんですよ、テオは」


「よく分からないけど。褒められてるのかな、これって」


ため息まじりにテオが言うので、私は大きく頷いた。


「もちろんです!これはなかなかの個性ですよ。少なくとも私は、テオみたいなひとは見たことがないですし」


「確かにオレも、エレインみたいなひとは見たことないかな。妹に似てるって思ったけど、エレインは妹以上にお転婆そうだし」


「おて…………」


十七の、しかも貴族の娘だったにも関わらずその評定というのは、あまり良くない気がする。


(そ、そんなに野生児みたいな真似してたかな……)


ちょっと。そう、ちょっと、貴族令嬢(エレイン・ファルナー)であった時より多少、思っていることを口にするようになっただけで。

遠慮とか、配慮とか、忖度とか。しないようになっただけで。


そこで私は、テオに言おうと思っていた話があったことを思い出した。

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