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【書籍化&コミカライズ】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。  作者: ごろごろみかん。
三章:寓話の相違

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都合のいい作り話、ってやつ


「それなら……ジェームズ・グレイスリーがやろうとしていたのは、瘴気の拡大?」


何人も連れてきては魔力を吸わせて、魔力を瘴気に反転させているのだとしたら。彼の目的はどこにあるのだろう。一瞬混乱しかけていると、テオが冷静に言った。


「いや、ジェームズ・グレイスリーの目的は、確かに賢者の作成(・・)だと思う。ブラウグランツを、アルヴェールでは【天秤の石(ラピス・ラビリエ)】と呼んでいると、彼が知っていたのかまでは定かではないけど。賢者の力があれば、瘴気は封印できると踏んでいたんじゃないかな」


じゃあ、やっぱり地下洞窟に囚われていたひとたちは、ブラウグランツ──ラピス・ラビリエに試された後だったのだろう。

そこで私は、ふとセドアの街で呼ばれていた伯爵の別命を思い出した。顔を上げて、テオを見つめて尋ねる。


「賢者喰いの伯爵という二つ名は……」


「賢者という言葉を餌に、ひとを集めて食い物にしていたからじゃない?」


そういう……こと。

ラピス・ラビリエがほんとうに、瘴気を魔力に、魔力を瘴気に反転させる力を持っているなら、今社会問題ともなっている瘴気問題の解決策がわかったということになる。瘴気を消すために必要なのは、天秤の石であるラピス・ラビリエと、その石に認められた賢者……。


(今の私には、賢者としての資格がない……)


石に手をかざした時に、一時的に魔力が戻った。石に貯蓄された魔力を吸い上げたからだろう。

だけどあれは、失敗するリスクが高い。

MGSが適合していない以上、他人の魔力を吸収するのは自殺行為だ。

前回は、気分の悪さだけで済んだけど、次もそれで済むとは思えない。ファーレも、死んだかと思ったと言っていた。死んでいてもおかしくなかったのだ。


(それに──ブラウグランツから吸い出した魔力も、二回魔法を使ったら消滅してしまった……)


恐らく、私の魔力回路自体に異常があるからだ。今の私は魔力を生み出せないから、使えばその分減っていく。単純な引き算だ。


「……よく分からないけど、その伯爵ってひとは熱狂的な賢者ファンなのかもね。だから、自分の手で生み出したかった、とか」


私たちの話を聞いていたルカが考察するように言った。彼はハンカチに包んだラピス・ラビリエをビーカーの山から離れた場所に置くと、またテーブルの上の片付けに戻った。テーブルの上は乱雑にものが色々と置かれている。

ケヴィンと私が訪ねる直前まで何かしらの研究を進めていたのだろう。

何となしにルカの動きを見ていると、テオが言った。


「そもそも、寓話には相違があるという話は、以前エレインにしたよね」


私は頷いて答える。ちょうど、その時の会話を思い出していたから。


「オレとルカはこの数年ずっと、アルヴェールだけではなく、各国の寓話についても調べてきた。書物を取り寄せてね。それで分かったことがある」


「どの寓話にも、賢者が出るということではなく?」


以前テオが言っていたことだ。私の言葉に、しかし答えたのはテオではなくルカだった。


「それもそうだけど、それ以外にも気になることがあるよ。たとえば、各国に伝わる寓話。あれにはどうして、相違があるのだと思う?」


ルカはテーブルの上に乱雑に並んでいたフラスコやらビーカーやらを整理し終えたのか、ふたたびスツールに腰を下ろしながら私に聞いてきた。

それに、私は口元に指を当てて思考をめぐらせる。


「それは……国が異なれば、民族神話も混ざるから、とか」


「それもあるかもしれないけど」


ルカはひとつ前置きをして、言葉を続ける。


「でも、それにしても方向性すら違うのはおかしいよ。とある国では、賢者を生贄に。とある国では賢者を英雄として崇めてる。賢者を悪として書かれている寓話もある。ここまで統一性がないのは逆におかしい」


ルカの言葉にケヴィンが「ふむ」と頷いた。


「確かに……バラけすぎですね」


「でしょ。だから、それにヒントがあると思ったんだよ。ね」


ルカの視線の先は、テオだ。テオはまつ毛を伏せて同意を示すと、さらに話を進めた。


「母の──母国のサクレリア国に連絡を取って、秘密裏に文献を見せてもらうことがかなった」


サクレリア国……聞いたことがある。北西の端にある小国で、アーロアとは縁が薄い。サクレリア国は、歴史が古く、今の王朝が樹立されてからは三千年以上が経過しているという。

私の知るサクレリア国の情報はそれくらいのものだ。つまり、まったく知らない。

テオは本棚に背を預けると、腕を組んで話を続けた。


「サクレリア国で、特別に宝物庫を見せてもらった」


(あっさり言うけど、それってとんでもないことなんじゃあ……)


テオのお母様はサクレリア国の王族だったのだろうか。

気になるけど今聞くことでもないか。話の腰を折ってしまう。そう思っていると、テオが顔を上げた。

そして、思いもしないことを口にする。


「……そこで、古い文字盤を見つけた。学者を呼んで話を聞いたら、意外な情報を得た」


「文字盤?それに、意外な情報って?」


尋ねると、テオは挑戦的な笑みを浮かべ、答えた。


「つまり、寓話はただの物語じゃなく──実際に起きた、史実(・・)だったってことだよ」


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