根源の石
「オレとルカは、これに答えがあると思ってる」
「……その、石にですか?」
「そう。さっき言ったよね。これをアルヴェールでは、ラピス・ラビリエと呼んでる、って。つまり、天秤の石。ラピス・ラビリエは賢者を測る……試す石だと言われているんだ」
「賢者を試す……?」
不穏な言葉だ。試して、賢者として認められなかったらどうなるのだろう。そこまで考えてはた、と思い当たる。
ジェームズ・グレイスリーの地下洞窟。あの牢に囚われていたひとたちは、魔力に自信があってきたはずだ。そこには──あの【天秤の石】があった。ラピス・ラビリエが賢者を定める石だというなら、もしかしてあの地下洞窟に囚われていたひたとちは、あの石によって試された後だったのではないか。
「まさか」
その推測に思い至った私が息を呑むと、テオがまつ毛を伏せて肯定した。
「エレインも気がついた?……そうだよ。彼らみたいになる」
「だけど、あの石は魔力と瘴気を吐き出すだけの石なんですよね!?賢者としての資質を試しているなら、どうしてあんな機能が」
「なぜだと思う?でも、きっと、もうエレインは気づいていると思う」
テオの確信を抱いているような声に、私はまたしても忙しなく思考を働かせる。
(あの石が正しく、賢者の資質を測るものなら……)
なぜ魔力と瘴気を吐き出すの?
あの時。私が地下洞窟で、ブラウグランツに触れた時。強制的に魔力が流れ込んできた。瘴気ではなく、いえ、そもそも、瘴気と魔力が同じ石から出てくる、なん、て……。
「──」
目を見開いた。思い出したのだ。
ファーレと出会った日の夜。野宿をしながら、交わしたテオとの会話を。
『アルヴェールでは仮説を裏付ける検証が長年続けられていた』
この検証って、何のこと?
もしかして──テオの、妹のこと?
どうして、今の今まで忘れていたのだろう。
思い返せば思い返すほど、テオは大事なことを言っていた。点と点が線で繋がるような感覚。
感覚が冴え渡り、考えずともどんどん思考が進んでいく。勝手に、答えを追い求めるかのように。
『この寓話は、各地に伝わっているものの、細かい部分はかなり異なっているようだ。アーロアのように王朝を興した、と終わっているところもあれば、賢者は禁を犯し、罪を償うために自ら土に還ったとするものもある』
賢者を英雄とする伝承もあれば、賢者を悪とする言い伝えもある。一致しているのは、賢者という単語だけ。
『もともと魔力は、聖なる気をまとっていると考えられている。【魔を祓う力】と言われているくらいだ。瘴気は、魔力を汚染し、その力を反転させる』
魔力を汚染し──構成要素が反転したものが、瘴気だとするなら。そのどちらをも吐き出す石は。
『オレの考えでは、古の賢者、とはいわゆる供物の役割があったのではないかと思う』
賢者には膨大な魔力が宿っている。その力が全て、反転したら?
ごくり、と息を呑んだ時。答え合わせをするように、テオが言った。
「オレは、ラピス・ラビリエには魔力を瘴気に。そして、瘴気を魔力に反転させる力があると、そう思っている」
王女の虚弱体質の理由/35話参照。
書籍特典情報出ました。よろしくお願いします。
✰ゲーマーズ:向日葵
└テールの話をするエレインとファーレの話
✰書泉:エレインに似てるひと
└テオの妹の話をするエレインとテオの話




