三百分の
子供の頃から不器用で、折り紙がまともに折れた試しがない。そもそも折り方が覚えられない。
結果、誰かが折る時に一折りごと真似するのだけど、それでも頭が首より長くなり、くちばしは丸まり、羽は不格好に広がった。
「今時千羽鶴? もらっても処分に困るよね」
そんな冷たい声を背に糸でつないだ三百羽鶴は、入院中の後輩には意外に喜んでもらえた、のだけど。
「なになに、千羽は手術に間に合わないから三百羽? あっこれ折ったの先輩でしょ」
ケラケラ笑った後輩は、手術前夜の絶食中でも爆睡だったそうで。
「先輩の鶴、へにゃってたけど意外と飛べてた」
夢の中、つづら折りに飛ぶ鶴は、それはそれはきれいだったよと後になって教えてくれた。
第10回 毎月300字小説企画、お題は「つなぐ」でした。