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ヤンデレ  作者: 呉武鈴
6/6

見解

―もう5日か…―

俺、川神宗一郎が考えたのは既にいなくなって5日になる友人の山下亮とその恋人の榊原由香、そして亮の幼馴染の春日忍の行方だった。クラスの女子共は『愛の逃避行』や『駆け落ち』など下らない妄想をしているが俺は納得しない。第一にたかが一高校生である山下亮と榊原由香がそこまでする必要がない。ましてやそれでは春日忍の行方は説明できない。第二に俺は山下がそんなことできないのを知っている。山下はかなりの常識人だ。たとえ一時的な衝動に駆られてもすぐに思い直すだろう。第三に山下の家には財布、携帯は置いてあった。つまり一度家には帰っている。家に侵入出来る者が拉致をした可能性が高い。しかし誰がそんなことをしたんだ。俺の中の仮定では春日忍が最も黒に近い。春日は山下の幼馴染だ。そのため一番山下の油断を誘い易い。理由も山下が榊原由香に告白してOKをもらい恋人になったことに嫉妬したと言えば少し強引だが説明がつく。だが春日が榊原も一緒に拉致ったことは説明がつかない。山下と一緒に拉致る必要がない。ほかっておけばよか

った筈だ。……理解できない。

「また何一人でブツブツ言ってんだ?」

「ねぇ、購買にパンでも買いに行かない?」

どうやら少しばかり声に出てたらしい。だが恥ずかしさはない。聞かれてたのが女子共だったらさすがの俺も恥ずかしいが友人である笹倉茂、堺司の二人なら俺の癖も知っているからいい。

「分かった」

菓子パンは糖分が多く、頭を働かせるにはもってこいだ。

「太一はどうする?」

「ごめん。屋上で美琴が待ってるから」

「そうかよ。俺達より女かよ」

「堺も大切な人が出来れば分かるよ」

永倉太一には最近彼女が出来た。どうやらあの時に長谷川美琴の壊れかけた心を直すことができたみたいだ。あの二人なら問題ないだろうと思いながら立ち上がった時に二人の相談が頭の片隅に引っかかった。

笹倉は最近家の外では常に誰かの視線を感じると言ってた。そういえば学校ではよく後輩の真鍋茉奈が近くにいるな…。今度探ってみるか。

堺は毎日迷惑メールが送られてくると言ってたな。そのせいで今週だけで三回メアドを変換してたな…。メアドが変わってもすぐに確認出来る…。

うちのクラスメートがやってる可能性が高いな。

―…そういえばもう一人来なくなった奴がいたな。名前は確か…―

「司、最近お前が相談してた奴の名前はしってるか」「相談してた本人だから知ってんにきまってんだろ、那波樟葉だよ。最近休みがちだけどな。それがどうしたんだ?」

「聞いてみただけだ」

「川神はいつも変なことに興味をもっちゃうからね」「否定はしないが肯定も出来ないな」

自分でも少々異質だと分かっている。だが分かっているから何だというのだ。

―いかん、考えがそれた―思考を戻す。

いきなり学校を休むのは悩み事がある年頃の女子なら分かる。だが那波樟葉は悩みはないはずだ。あっても学校を休む程ではないはずだ。では何故?風邪でもひいたならまだ分かる。しかし何故学校に連絡が無い?

―…那波樟葉が休みだした日に何があったかが解れば簡単に分かる…―

そこで一つ思い出した。

―確か那波樟葉は一人暮らしだったはず―

一度見舞いという形で様子を見に行くか。しかし何処に住んでいるか分からない。…しょうがない、那波の友人達に聞いて回って見るか。



放課後。俺は那波のよく話してた女子から家の場所を聞き、目的の場所に歩いていた。

―オゾン荘…誰がこんなふざけた名前をつけたのだ…また思考がそれた。もう少ししっかりしないといかんな。

目的の場所であるオゾン荘に着き、大家はクラスメートと言っただけで通してくれた。

―これじゃ何処の誰かわからなくても入れるな―

那波の部屋である5号室に着きドアをノックするが中から返事はない。それどころかドアノブにはうっすら埃すら被っている。

少々考えてから俺はドアノブに手をかけた。さすがに鍵は開いてなかったがそれぐらい想定内だ。俺は持って来た針金を鍵穴に突っ込み鍵を突っ込んだ。やはりタイプが古いため簡単に開いた。

「川神宗一郎です。お邪魔します」

一様何かあるといかんので自分でも間の抜けた最低限の挨拶をしながら部屋に入っていく。だが部屋の主である那波樟葉の返事は聞こえない。それどころか一つも電気がついておらず全ての部屋からは人の気配が感じられない。

玄関から数歩行ったところで鼻に親しみがありながら不快な―鉄錆の臭いがした。

―この部屋か…―

臭いが一段と強くなった部屋のに那波がいることは想像出来る。しかしどんな姿をしているかまでは想像出来ない。ここまで鉄錆臭いのだ。最悪の結果も覚悟しておかないとならない。


ギィィィィ


まるで何年も使われてないような音をたててドアが開いた。ドアの向こうに仰向けに倒れていたのは既に腐敗を始めている那波の姿だった。

「…最悪の結末か」

予想より酷い殺られ方だった。両手にはびっしりと五寸釘が打ち付けられ、腕はズタズタに斬りつけられていた。さらには胴は胸から骨盤にかけて切り開かれ臓器は五臓六腑にぶちまけられていた。唯一顔が傷つけられてないのは死ぬ寸前まで恐怖と苦痛に歪む那波の顔を見るためだろう。

「…最悪の結末か…ヘドがでる」

那波の姿にではない。ここまで殺った犯人にである。早めに警察に連絡すれば犯人が捕まるかもしれない。とりあえず那波の横に正座し黙祷を捧げる。数秒後、俺は携帯を取り出して何枚か写真をとり、電話をかけた。

「もしもし…あぁ俺だ。…そう、殺人だ…そうだなぁ40万でどうだ。…分かった今から向かう。あぁそうだ雪奈さんにお茶はいらないって言っておいてくれ」

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