悪役令嬢が大好きです!!
異世界転生ものや悪役令嬢が主役のお話を自分でも書いてみたくなり書いたらこんな感じになっちゃいました。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
「リディア コールマン!お前との婚約を破棄する!!」
王立学園の卒業パーティーは毎年王宮のホールで行われる。
豪奢な装飾に色とりどりの花、宝石のような料理が並び卒業生たちを祝福している。
パーティーには王族も列席し、卒業生に祝辞を贈る。
ところが突然、パーティー会場の一角で王太子が何やら大声を出し始めた。
相手は侯爵令嬢リディア コールマン。
王立学園きっての完璧淑女と名高いご令嬢であり、王太子の婚約者である。
「婚約破棄…とは、一体どういうことでしょうか…」
リディア コールマンは震える声を絞り出した。
そんなリディア様を、可愛い!今日も可愛過ぎる!!と王族席から見つめているのが私、王太子の妹であるガブリエル カルセオラリアである。
王太子である兄の婚約者として挨拶された時から、私はリディア様が大好きだ。
緩くウェーブした栗色の髪に少しキツめのぱっちりした同じ栗色の瞳、背筋はピンと伸び、柔らかな笑顔の彼女は8歳とは思えない程しっかりとした淑女だった。
病弱でベッドから出ることも難しかった私が寂しくないようにと、リディア様は王宮で王太子妃教育のある日は必ず私の元へ来てくださった。
ある時はお菓子を持って、ある時は絵本を持って、またある時はお手製の細かな刺繍がされたリボンを持って来てくださった。
成長と共に私が起きられる日が増えると、今度は勉強を教えてくれるようになった。
私がぐんぐん吸収していくのが面白かったようで、難しい勉強も教えてくれた。
王宮内を歩くことができるようになると、図書室に一緒に行くことも増えた。
お互い知らないことを知るのが楽しくてたくさん本を読んだ。
ちなみに兄様も最初は一緒に来ていたが、剣術のほうが楽しいと言ってすぐに来なくなった。
兄様は勉強が苦手なのである。
王立学園に入ってからも、リディア様は変わらず王太子妃教育のついでに会いに来ては色々教えてくださった。
学園のテスト期間は兄様も一緒に勉強したが、リディア様が自分よりできること、教えてもらうことが嫌だったようでいつも不機嫌だった。
リディア様はそんな兄様に気が付いてからは、テストで兄様より良い点を取らなくなった。
そんなこともありながらも、二人はそれなりに仲良くやっていた。
ーーーけれど学園生活最後の一年になって兄様は変わってしまった。
「知らぬふりをしても無駄だ!平民だからとエミリアをいじめるような女は私にふさわしくない!」
「ウィリアムさまぁ〜」
隣に立つ女は猫なで声に涙目で兄様にしなだれかかる。
平民ながら高い魔力を持つという理由で王立学園に入学してきたこの女、エミリア ロバーツ。
ある日突然魔力暴走を起こし、高い魔力を持つことがわかったエミリアは、いつまた魔力暴走を起こすかわからない状態は危険だということで王立学園に転入することになった。
王立学園は貴族のみ通うことが許された学園だ。
その為エリミアはロバーツ男爵家の養女となった。
「エミリア…許すまじ」
せっかくリディア様との素敵な思い出に浸っていたのに気持ちの悪い猫なで声で台無しだ。
そして兄様に続いて取り巻き達もリディア様に食ってかかった。
「リディア嬢、王太子殿下と仲の良いエミリアに嫉妬して酷い言葉を浴びせたこと、忘れたとは言わせない!」
「それからエミリアの教科書を破いたり、物を隠したりしたこともな!!」
「極め付けは事故に見せかけて階段から突き落とそうとしたそうじゃないか!元平民だからとなんでもしていいわけではないのだぞ!」
それぞれ好き勝手に怒鳴る。
リディア様は身に覚えの無いないことばかりでオロオロとしている。
「え…と、わたくしはそのようなことはしておりません…」
一部始終見ていた周囲の人たちも「リディア様がそのような事をされるはずがない」「エミリア様がいつもリディア様に突っかかってましたわ」とヒソヒソ話し始めた。
にも関わらず兄様達は続ける。
「リディア!嘘をつくな!!私達はいつもエミリアから相談を受けていたんだぞ!」
「優しいエミリアは、リディア様がこんなことをするなんて何か理由があるはずだから問いただすようなことはやめてと言っていた」
タイミングを見計らったようにエミリアは兄様の後ろでぐずぐず泣き出した。
「はー、見てられない」
私は王族席を立ち上がった。
「父様、母様。私の言った通りになってしまいましたね。お話していた通りに進めてよろしいでしょうか?」
父様はとても残念そうな顔をしていた。
母様は真顔で兄様達を見ている。
「はぁ。仕方あるまい」
父様の言葉を聞き私は王族席の手すりに近づき声を上げた。
一息付き、なるべく会場内に通るよう声を張る。
「リディア様はそのようなことをされていません」
私の声が会場内に響き渡り、一気に視線が集まった。
「ガブリエル、一体何を言っているんだ」
冷たい眼差しを向ける私に声を発したのは兄様だった。
「ですから、リディア様はそのようなことをされておりません」
重ねて私は自信たっぷりに言ってやった。
「学園にも通っていないお前に何がわかるのだ!それにエミリア本人がいじめられたと言っているのだぞ!」
「そうです。ガブリエル様がリディア嬢を庇いだてしたい気持ちはわかりますが、こちらには証言があるのです」
「関係のない方は口を挟まないでください」
兄様達はやれやれと言った様子だが、こちらにこそ証拠がある。
「リディア様には王立学園に入学してから王家の影が付いています。その日の出来事は全て父様と母様に報告されています」
「それは…っ!」
「ですからリディア様が仮にそのような事をされていたとしたら父様に報告されているのです。ですがそのような報告はありません」
兄様は信じられないという顔をしてこちらを見た。
「兄様にも影を付けたとの報告は上がっていたはずですが…?」
「だが!…だが、その目をかいくぐって行っていた可能性があるかもしれないではないか!」
「そっ、そうですぅ!それにその方達が嘘をついているのかもしれませぇん」
兄様の言葉に続けて王家の影が嘘を吐くなどとアホなことを言い出したエミリアからとうとう取り巻き達が一歩後ずさった。
エミリアの言葉にリディア様も可愛い顔を青褪めさせている。
青褪めていても可愛い。
周囲の人たちも、『え…この子何言っちゃってるの』という顔をしている。
私はそんな不敬な馬鹿の言葉はスルーして私は続ける。
「兄様が最終学年になってからは魔石も使用するようにしたのですよ。何やら怪しげな行動をしている者がいるとの報告がありましたので」
兄様はパァッと顔を輝かせ言った。
「やはりリディアが怪しげな行動をしていたのではない「エミリア様です」
兄様の言葉に被せ気味に言葉を返す。
「エミリア様が怪しげな行動をしていらっしゃるようでしたので、エミリア様にも影をつけました」
「え…っっ」
途端にエミリアの顔色が変わった。
「魔石を見ていただく方が早いでしょう」
魔石は記録媒体である。
映像を記録し、再生することができる。
城の魔道士を呼び、魔石を再生させる。
すると何も無かった場所にエミリアの姿が現れた。
『なんで悪役令嬢リディアは何もしてこないのよ!このままじゃ私の好感度が上がらなくてバッドエンドになっちゃうじゃない!』
爪を噛みひどく歪んだ顔である。
そしてパッと映像が切り替わる。
『もう!全然好感度上がらない!なんなのよ!!チッ、課金アイテムを使うしかないわ…惚れ薬も魅力の魔法もなんでも使わないと』
ニヤリと笑ったエミリアは出かける支度を始めた。
また映像が切り替わり、どこかの店になった。
『惚れ薬をあるだけちょうだい』
『はいよ!今なら魅力の効果がある香水も安くしとくよ』
店員が下卑た笑いですすめる。
エミリアも嫌な笑いを浮かべた。
『ふぅーん、じゃあ香水もちょうだい』
『まいどありー』
そして惚れ薬を入れた手作りのお菓子を兄様と取り巻き達に食べさせる姿、香水を振り撒き近づく姿までばっちりと残っていた。
時折、魅力の魔法らしきもので強引に距離を詰めるような場面もあった。
「そんな…これは、どういう…」
兄様と取り巻き達が信じられないという顔でエミリアを見る。
リディア様も手で口を覆い、さらに青褪めていた。
うん、どんな姿も可愛い。
当のエミリアは真っ赤な顔で拳を握り締めプルプルと震えていた。
「なによこれ!こんなの嘘よ!!私はやってないわ!」
証拠が出てきても自分は悪くないと自信満々の姿勢に感心する。
そんなエミリアを畳みかけるように私は言う。
「エミリア様、残念ながら嘘ではなくこちらは証拠として既に認められたものです。お心当たりがあるのでは?」
エミリアはキッと睨みつけてきた。
「なんなのよ!あんたなんか名前も出てこないモブのくせに!モブらしく大人しくしてなさいよ!!私の邪魔をしないで!」
エミリアの態度に周囲がざわめく。
「皇女様に対してなんて言葉を」「やはりエミリア様が…」
ざわざわとする周囲に負けないように私は声を張る。
「兄様、あなたは無実のリディア様に対して婚約破棄を突きつけました。」
「まさか…俺は、そんな…」
未だに信じられないという表情で立ち尽くす兄様に私はなおも続ける。
「薬や香水の影響があったと思いますーーーですが元々リディア様に対して思うところがなければこのような事にはならないと魔道士も薬師も言っておりました」
兄様はへなへなとしゃがみ込み項垂れる。
「そうだ。俺はリディアに…嫉妬していた。なんでも軽々とこなしてしまい、俺を追い抜いていく。…いつだって完璧な淑女と言われていて。それに対して俺はいつも……」
「ウィリアムは悪くないわ!全部あの女が悪いのよ!!」
さっと兄様のそばにつき、未だに訳の分からない持論を叫ぶエミリア。
リディア様は兄様の言葉に驚いた顔をしていた。
うん、驚いた顔も可愛い。
「その女を拘束して」
衛兵に命じてエミリアを拘束させる。
「きゃあっ!何するのよ!!」
「お前がうるさくて話が進まない」
凍てつくような瞳で睨みつけると「ヒッ」と声を漏らして静かになった。
さて続きをと兄様に向き直ると後ろから父様が出てきた。
「ウィリアム、お前の婚約は家と家の国のための結びつきであった。それがわからなかったのか」
兄はガバッと上を向き父様じっと見つめるとぼたぼたと涙をこぼした。
「ち、ちうえ……申し訳ありませんでした。」
そう言葉を発すると震えたまま涙をこぼし続ける。
父様はため息をこぼし、会場内をぐるっと見やった。
いつの間にか母様も隣に居た。
「皆のもの、我が愚息がめでたい席でこのような騒ぎを起こし、大変申し訳ない。」
そう言うと母様と共に頭を下げた。
私も慌てて頭を下げる。
そして頭を上げると今度はリディア様に向かって言った。
「リディア嬢、いわれなき罪により迷惑をかけてすまなかった。」
リディア様はまさか王にそのように謝罪されるとは思わなかったようで、ピッと身体を強ばらせて緊張していた。
それでもさすが完璧淑女と呼ばれるだけあり、言葉を返す。
「へ、陛下に謝罪をいただくなど。とんでもないことにございます。」
そして深々ととてもきれいなお辞儀をした。
あぁ、リディア様は本当にとても美しい。
父様と母様はその様子を優しい眼差しで見遣るとさらに続けた。
「第一王子ウィリアムは本日をもって廃太子とする。またリディア嬢との婚約も白紙とする。」
一気に会場内が悪い意味で沸いた。
「廃太子とは」「なんということ」「では後継者は」など好き勝手に話し始めた。
そんな中で発せられた言葉に一瞬でシンとなった。
「は?廃太子?なによそれ!バッドエンドってこと?!意味わかんないんだけど!」
エミリアは感心するくらいにブレなかった。
父様はまた盛大にため息を吐き、衛兵に命じる。
「連れて行け」
「え、ちょっと何するのよ!」
離しなさいよーと叫びながら連れていかれる。
扉が閉まると父様はまた話し始めた。
「実は皆に伝えなければならないことがある。本来であれば成人の際に発表する予定であったが致し方あるまい」
「ガブリエル」
何を言うのだろうと皆が注目する父様に呼ばれ、隣に立つ。
「ガブリエルは幼き頃より病弱でいつ死んでもおかしくないと言われていた。それ故離宮にてひっそりと生活していた。派閥争いなどに巻き込まれ、政治の道具にされることを恐れた私と王妃は、王女として育てることを決めた。」
会場に居たほとんどの人間がきょとんとした表情になった。
リディア様も同様だ。
きょとんとした顔も可愛い。
父様は続けた。
「本来であれば既にこと切れていてもおかしくないガブリエルがここまで大きくなった。それはリディア嬢、あなたがガブリエルに良くしてくれたおかげだ」
突然自分の名前が出てリディア嬢はガバッとこちらを見た。
そしてとっても驚いた顔をしている。
周囲もリディア様に視線を向ける。
「え…わ、わたくし…?」
「あぁ、リディア嬢が王太子妃教育の帰りに寄ってくれるといつも楽しそうに話していた。リディア嬢と会うために頑張らねばと苦い薬を飲み、体力をつけようとリハビリも頑張っていた。本当にありがとう」
リディア様はじわじわと顔を赤くして俯いてしまった。
それでも消え入りそうな声で言葉を紡ぎ出す。
「…もったいないお言葉です」
照れた顔がものすごく可愛かった。
「リディア嬢のおかげでガブリエルは健康を取り戻した。成人の際に国民の前で再び紹介をと考えていたが致し方あるまい。」
期待の眼差しが王族席に向けられる。
「本日これより第二王子ガブリエルを王太子とする。」
一泊置き、わっと会場が沸いた。
「まさかガブリエル様が」「そのようなことがあったとは」とあちらこちらで驚きの声が上がる。
そして泣き崩れていた兄様は取り巻き達に手を取られ立ち上がると拍手をした。
まるで付き物が取れたようにスッキリとした顔で微笑んでいた。
兄様の拍手につられるように周りの者達も拍手をし始め、会場全体に広がった。
父様に促され、前に出る。
「第二王子ガブリエル カルセオラリアです。本日より王太子として国のため、民のために精進してまいります。」
わあっと歓声がおこる。
父様はサッと手を上げてまた話し始める。
「リディア嬢」
まさかまた名前を呼ばれるとは思っていなかったようで、リディア様はビクッとこちらを向いた。
「ひゃいっ」
驚いた返事が可愛い過ぎる。
私は思わず甘い笑みで見つめてしまった。
するとリディア様と目が合い、リディア様の顔が少しずつ赤くなっていった。
「先も申したようにガブリエルがここまで育ったのはリディア嬢のおかげだ。もし、リディア嬢が良ければ再び王太子と婚約してもらえないだろうか」
「わっ、わたくしてよろしいのでしょうか…?」
リディア様はオロオロと戸惑いの表情を浮かべる。
「その、わたくしはガブリエル様より年上ですし、先程まではお兄様であるウィリアム様の婚約者でしたし…」
「こちらこそ先程の騒ぎがあってすぐにこんな話をして申し訳なく思っている。リディア嬢の気持ちを第一に考えて決めてほしい。断ってもらっても構わない」
「え…っと」
リディア様は考えを巡らせているようだ。
悩んでいる顔も可愛いが、私は居ても立っても居られなくなりズイと父様の前に出る。
「リディア様!」
呼ばれたリディア様がこちらを見た。
「幼い頃、寝たきりの私に優しくしてくださってありがとうございました。勉強も教えてくださり、私は…私はずっと、ずっとリディア様をお慕いしていました!」
リディア様はポカンと口をあけて見上げていた。
やばいポカンとした顔も可愛過ぎるっ。
たまらなくなった私は思わず叫んでいた。
「リディア様が大好きです!!どうか私と婚約してください!」
シーンと会場が静まった。
父様は生暖かい顔をしていた。
母様は頬に手を当ててあらあらと言っていた。
兄様は驚いた顔をした後に、良くやったと親指を立てた。
ーーーリディア様は、ボンっと音がしたのではないかと言うくらい全身が真っ赤になって、口をハクハクとさせていた。
え、なにその表情見たことない、めっちゃくちゃ可愛いんだけど。
心の中で言ったはずの言葉が少し漏れてしまったようだ。
「わ、わたくしが…か、可愛い…」
そう言うとリディア様は顔を手で覆ってしまった。
父様は横目で私を見遣り、咳払いをするとリディア様に話し始めた。
「あー、ゴホン。リディア嬢すまない。離宮で育ったためにガブリエルはちょっと、その直接的な表現が多くてな。」
王に話しかけられたので慌てて顔から手を退けたリディア様はパッと顔を上げた。
「い、いえ。その…恥ずかしかっただけですのでお気になさらず…」
最後は消え入りそうになりながらまた顔を赤くして俯いてしまった。
しかしすぐにまた顔を上げて声を出した。
そして息を吸うと凛とした表情で言った。
「婚約をお受けいたします」
父様と母様は顔を見合い、頷くとリディア様にありがとうと言った。
私は居ても立っても居られないと慌てて王族席から下へ降り、リディア様の前に立つ。
「リディア様、ありがとうございます!リディア様にふさわしい婚約者になれるよう努力します!」
鼻息荒くそう告げるとリディア様は破顔した。
「こちらこそよろしくお願いいたします。ガブリエル様」
とても、美しい笑顔だった。
その笑顔が自分に向けられている。
嬉しすぎた私はリディア様を抱きしめていた。
「ひゃっ」
驚いたリディア様の声がしたが気にせず抱きしめた。
会場内はからはおめでとうございますとあちこちから声が上がり、明るい音楽が流れ始めた。
私は早速リディア様をダンスに誘った。
◇◇◇◇◇◇
卒業パーティーの後、エミリアの処遇や、取り巻きと兄様の今後についてを決める話し合いなどが行われ、しばらく城は忙しかった。
エミリアは魔力を暴走することがないよう魔道具をつけられて修道院送りとなった。
未だに『私は悪くない!悪役令嬢が悪い!』などと言っているらしく、かなり戒律の厳しい修道院へ入れられたらしい。
兄様は王家の直轄地を管理することになった。
成人までは父様の弟である叔父上について領地経営を学ぶらしい。
取り巻き達の処遇はは各家にまかせることになった。
そして私は王太子となり、忙しい毎日を送っている。
勉強だけでなく公務もこなさればならなくなり、それでも元々病弱だったのできちんと休みを取ることも義務付けられた。
今日は休みなのでリディア様とお茶会をする。
卒業パーティーが終わってから会うことができなかったのでとても嬉しい。
リディア様が来たと報告を受けて急ぎ庭の四阿に向かう。
そうそう、今までは王女として生活していたが、王太子となってから長かった髪をばっさりと切り、ドレスはスラックスになった。
この格好もリディア様に初めて見せるのでめちゃくちゃ緊張している。
四阿が見えてきて心臓がドクンドクンと早鐘を打っている。
一度止まりおかしいところがないかと確認する。
お付きのメイドにも確認を忘れずに。
クスクスと笑われたが気にしていられない。
深呼吸をして四阿に向かう。
近づく人影に気がついたようで、リディア様が立ち上がり礼をする。
「どうぞ楽にして」
私が声をかけるとスッと顔を上げたーーー瞬間リディア様は「ふぇっ」と声を上げてピャッと後ろに下がった。
顔を赤くしながらリディア様は言う。
「が、ガブリエル様…?」
「どうかなこの格好。似合う?変なところはないかな?」
両手を広げてリディア様に質問する。
しかし私の質問に答えは返ってこなかった。
リディア様は顔を真っ赤にしてぽーっと私を見つめる。
「あの、リディア様…さすがに照れます」
はにかみながら声を出すと、ハッと気づいたリディア様は勢いよく謝った。
「も、申し訳ございませんっ」
「そんなに見惚れるほどカッコ良くなっていましたか?」
私はニッと悪い顔をしてリディア様を揶揄った。
しかし揶揄ったつもりが爆弾を返された。
「はい…とてもすてきです」
恥ずかしそうに言うリディア様が可愛くて、愛おしくて私は悶絶することになった。
悪役令嬢と呼ばれた少女は、とても可愛いらしく、愛らしい完璧な淑女だった。
そしてーーー
誰がなんと言おうと、悪役令嬢が大好きです!!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
悪役令嬢もの(?)を初めて書いたので、読み終わったらなんか違うって気持ちになった方もいらっしゃるかもですが、書いていてめちゃくちゃ楽しかったです。
いつか続きを書きたいなと思うくらい、リディアとガブリエルが大好きになりました。
累計2000PVありがとうございます!
嬉しすぎて新作を書いています。
早く投稿できるよう頑張ります!!