はじまり
初夢の定義をご存知だろうか――と書いてすぐ「初夢は一月一日から二日にかけて見る夢で、」と書こうと思ったが、念のため下調べしておこうと思ってインターネットで検索すると、「十二月三十一日から一月一日」「一月一日から二日」「一月二日から三日」の三つの説があることを知った。しかしながらWikipedia「初夢」の本文にはこれらの説明にすべて[要出典]とあったから、そもそもこんなことはどうだっていいのだと気づいた次第である。
そんな私の初夢は何だったかというと、熊本を震源とする緊急地震速報がテレビに表示され、熊本県に隣接している福岡県に住んでいる私と私の家族は念のため座布団を頭にかぶりしゃがんで待機していたものの全く揺れを感じず、結局は緊急地震速報自体が誤報であった、というものである。座布団を頭にかぶっていたとき私は「どうか夢であってくれ」と考えていたのだが、まさしくそれは夢であった。
一月二日、起床したのは午前七時ごろである。これが正夢とならないように(正夢となっても誤報で済むからまだ良いが)神に願いつつ、出かけるためのカバンの整理を始めた。カバンをひっくり返して空にしようとしたそのとき、神からのお言葉(が書かれた紙)がひらりと舞い降りた。これは元日にひいたおみくじである。三社参り※のうち二社分は県内で済ませており、その両社でひいたおみくじがこれである。片方の運勢は大吉、【旅行】には「利益あり 行きて吉」とあり、もう片方の運勢は小吉、【旅行】には「いずこに行くも可」とのことだ。
この言葉を信じて今日からの一泊二日を過ごすのは熊本である。私の親戚に熊本に住んでいる人がいるわけではないのだが、家族ぐるみで熊本に向かうことがしょっちゅうある。少なくとも年に一回は行っている。何が目的で、というのは特になく、ただ熊本市電に乗ってアーケードを巡ったり、或いは熊本城を見に行ったりと自由な旅である。
なお今回は、熊本城の天守閣が完全復旧し、内部の公開が始まったこともあり、天守閣の最上階から熊本の街並みを望むことが目的と言っても良いのだろう。前回熊本城を訪れたときは、天守閣の外観はほぼ整っていて、天守閣の外から内部に向けスロープが設置されているところまで復旧が進んでいた。あとは内部の工事だけ、というところで内部の公開がまだ始まっていなかったので、とても楽しみである。
などとぼんやり考えながらカバンに荷物を詰めていると、予定出発時刻である八時半を過ぎたところであった。忘れ物はないかなと思い、なんとなく普段あまり使わないカバンをひっくり返してみたところ、そこには私が普段から使っている財布が入っていた。この状況に戸惑いつつ、また家族にせかされつつ、車に乗ったのが八時四十五分くらいのことだ。
※ これまた念のためと思ってインターネットで「三社参り」と検索したところ、Wikipedia「三社参り」によれば『特に福岡県を中心として九州地方・中国地方の一部で根付いた風習』とのことで、三社参りが全国的に行われているのではないのだと初めて知った。三社参りとは、『三つの神社を詣でる』ことを言い、特に西日本では『正月の初詣として、三つの神社を詣でることを指す』と書いてある。私が言いたかったのはまさにこれである。




