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9/12

終わる場所


離町、テルフタイオス



街の外観は

正直言って荒れ果てている。

遠くには火の手が回っているのが、夜だからかよくわかる。

家の建築様式はあそこと一緒だ。

この世界はどうやら中世あたりの生活型で良さそうだ。

尤も、この地域が特殊である可能性も念頭に入れるべきではある。


敵は今のところ見えない。

とはいえ何体かはサーチアンドデストロイを二人によってされている。

わざわざ叙述する必要性がない程だが、かと言って油断はできるわけではない。

『グビィェ…!』


刀でサクッと脳天突き。

このように角などから突然出てくることなどいくらでもある。


ところでこの街の化け物たちは異常に弱い。

更に言えば街というほど化け物共が少ない。

かつては大勢の人間が住んでいたはずである。家は腐っても石造り。更に大量にあるわけであるし、この街は軽く東京ドーム3個分くらいはある。

現代日本のように過疎化が進む地域であるのか、はたまた強大な何かに殺された場合も懸念しなければならぬだろう。


『グビィエ!』『グビィエ!』

2匹。


グラが刀を構え、攻撃をしよう

と、したところで突如背後からから斧が飛ぶ

「うお!」


危険極まりない。


斧はそのまま鞭のようにしなり2体の化け物を斬首する。

そして勢いそのまま戻っていく。


「それ…怖いからやめてって…」

「いいじゃない。しんでないでしょ?」


心構えってもんがあってだなぁ…とグラは愚痴をこぼした。


言いつつも当てもなく歩き回る。

というか、ふたりとも迷っていた。、


『グビィエ』『ィエ』『グビィエ』『ィエ』

角の先から化け物の声がする。

二人は様子を探るため、気づかれないよう建物の影に隠れた。


レギーナは飛び出していきそうになるが、グラは慌てて止める。

「この前舐めないって言ったばっかだろ?」

「ご、ごめん」

グラは、うむ、とうなずき化け物の方に視線を向ける。


化け物共は四体。燃えた木の前で踊っている。街の所々が燃えているのはコイツラのせいであるのだろう。


しかしよく見れば踊っているというと語弊があった。

燃えた十字架の前で…


「…ッ!」





化け物共の前に肉体を捻り込むグラ。


一体目の頭を縦ににぶった切り、抵抗して来たニ体目を足で蹴り飛ばす。


後ろから斧が飛んで来る。

ニ体目はレギーナに任せて良さそうだ。

三、四体目は呆然としている。

グラは手前の化け物の首に焦点を合わせた。

片方の首を落とし、杖のように刀を地面の煉瓦の隙間に刺す。

それを軸にして、反撃される前に最後の一匹を蹴り飛ばす。

刀を抜いたところで、倒れた最後の一体の頭を潰した。



「ねえ!急に飛び出さな…い…で………」


パチパチと燃える木の前で佇んでいた俺の横にきたレギーナが眉をしかめる。

「すまん。耐えれなかった」

目の前には黒焦げた女性の遺体があった。

全身は炭化し、頭髪などもすでに燃え尽き、性別などももはやわからなかった。


つまりそういうことだろう。

―――魔女狩り。

化け物共の頭に魔女と判断できるほどの脳みそがあったとはもちろん思えない。



「お、お母さん?」

木の向こう側から白い髪の少女が飛び出す。

「お母さんからどいて!」



少女は近くに居たグラを突き飛ばそうとするが、グラは少女に飛ばされるほど体は細くはない。

構わず名前を聞いた。


「君は?」

「……ルー」

「いい名前だね」


少女は睨みながら答える。

体には切傷の跡らしきものが服の隙間に見える。


「ごめんね?でも俺達はね?……違うんだよ…」

「…じゃあ、おじさんたちの仲間?」


まさかあのおっさんであろうか。

二人にあの豚の化け物の処理を押し付けたあの。


「そのおっさんどこにいた?!」

「ヒィ!!」

「ばか!怖がらしてどうすんのよ!

いい?あの人は私達を殺そうとした人なの。だから教えてくれない?」

「…おじさんについて知りたいの?」

「うん」

「じゃ、じゃあ、私のペンダント探し出してくれたらいいよ……おしえてあげる。どっかに落としちゃったの…」


おっさんの情報はほしいのが二人の本音である。

それに、この街の化け物たちはそこまで強くない。

引き受けても問題ないだろう。


「わかった。だいたいどこらへんで落としたんだ?わかるか?」

「えっとね……多分あの家」

そう言ってルーは目の前にある大きな家を指差す。


目の前には屋敷。

外から見ると2回階層になっている。


「じゃあ行ってくる」

「私はこの子見とくわね」

「了解」



そう言ってグラは館の扉を開く。

どうやら何もいないようだ。



――ゆっくり探して良さそうだな…


入って直ぐ、目の前には広間があり、両隅から上に向かって階段が伸びている。その広間と階段の上の廊下から部屋の扉が見えていた。

吹き抜けの構造なので、部屋数などはわかりやすい。

下の階には左右それぞれに2部屋。正面に3部屋。

上の階には階段の分があるためか、横はそれぞれ一部屋ずつであった。



    『ウキー!』

「うきー?」

猿である。


猿の手元を見ると赤い宝石のついたペンダントを持っている。

「あ!!あった!」

「ウキ!?ウキーーー!!」


声に驚いたのか猿は逃げてしまう。


右から階段を登って手前の部屋に入る。


グラは逃がすものかと、

床に小細工を仕込み、急いで階段を駆け上がる。



バン!!

ドアを叩き開く。

二階の右手前は子供部屋のようだった。


と言っても勉強用などではない。


ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ……

ぬいぐるみで覆い尽くされている。

あくまで()()()()のようだ。



「っち、面倒な…」



そうは言いつつ丁寧に探す。

この中世のような生活形態でここまでの人形とはやはりここの持ち主は相当な富豪であったのだろう。尤も、すでに化け物になっているかその腹の中であるほうが確率は高い。




犬、狼、鳥、豚、犬、鳥、狼、狼、鳥、……………

羊、うま、猫、兎、……

ミミズ、犬、鳥……「ん?ミミズ?…まぁいいか」

蛇、ライオン、猿。


「いた…!」


猿はまだ見つかっていないと思っているのか、荒い息のまま隠れている。

グラは自分がまだ気づいていない風を装って猿に近づいていく。



……

………

…………

今だ!!!

ジャンプしていたぬいぐるみの中に突っ込む!

取った!


『ウキ!!』

声は手元から……いや、後ろ!?!


手元を見れば掴んでいるのは豚のぬいぐるみ……

怒りで顔を赤くするグラに猿は真っ赤なケツを叩いたあと出ていった。

そして……『ウギ!!ウッギャーー!!』


一階の穴にハマった。

「ふ、ふふふ、ふっははははははぁ!馬鹿め!こうもあろうかと仕掛けておいたのさ!!」

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