第六条 隠し通路 中編
「見とれっ!能力強化…"速"撃"」ドォーン
一瞬だった。これまで手こずっていた鬼が、肉片となり、血溜まりができる。ーーグロい。
「うわぁっ」
ヒューレンがらしくもない声をあげた。
<ヒューレンも、一様鬼だしな…仲間が肉片になって、思うところも、あるんだろう……>
「ハンバーグみたいで美味しそうっすね!」
………なにこの子!?怖い!!!
<……なにこの子!?怖い!!!>
「フハハハっ、面白いことを言う鬼もいるもんじゃのう。長生きしててよかったぞい!!」
返り血でいっぱいになった、巨人の爺さんが、こちらへ笑いかける。
<……なにこの爺さん!?怖い!?>
「助けてくださり…ありがとうございます。」
勇気を振り絞って発言する。流石のヘルも、このやりとりを見たあとでは、自分がコミュ症であることを忘れたのだった。
「ほう…名はなんと言うのじゃ!?」
コミュ症を乗り越えたヘルに怖いものなど、返り血を浴びた巨人と、サイコパス鬼の娘以外にはそうそういない……いや、結構いるな。…とにかくっ、今のヘルにこの程度の質問は通用しないっ!!
「俺の名前は、へーー」ガサッ
「ちょっと、速い…ですよ!」
「!?」
後ろから現れたのは、二人の若い女の人。言動からして、巨人の爺さんの仲間と思われる。
<…オンナのヒト…?ナ…カマ?>
………ヘルは何を思い、何を考えているのだろうか。
正直言って、最近ヘルは、テンションがおかしくなってしまっていた。無理はない。
徹夜明けの学生のテンションが高くなってしまう現象と同じで、ヘルはこの一ヶ月、厳しい修行を乗り越えてきた。
今までろくに努力もしてこなかった人間が、死に物狂いで(途中で何度か死んだ)努力をした。
そんな中、突然修行が終わり、テンションは抑えられなくなってしまったのだった。
ーーしかし、前世も含め、何年ぶりかに、若い女性を見た。なぜだろうか、一気に自分が恥ずかしくなってしまったのだ。
え?ヒューレンも若い女性だって?
ナニイッテルノカワカラナーイ
「あ…その……え、えっと…」
<………どうすれば!?>
「え…あっ、え…えと…」
「ヘルさん、カッコ悪いっす…」
<あー!!もう!やけくそじゃあ!!>
「お…俺の名前は…ヘル…です」
※グリモワールからのお願い。やけくそとか言うくせに、全然大したことないヘル君。でも、これでも頑張ってる方なんです。だから、そっとしておいてください。
「……私はヒューレンっす!」
「フハハハっ、わしはエデッセじゃ。よろしく頼むぞ!この娘らは……」
返り血を浴びた巨人…エデッセが、声をかけると、おそらく仲間であろう女性二人も挨拶をはじめたのだった。
「エレックです。よろしくお願いします。」
普通の女の子。髪は比較的短く、どこか優しそうな目をしていた。背中にはギターのような楽器をせおっている。
ーーどうして、地獄に落ちたのかって?知らない方が良いこともあるんですよ。
[……ハックです…]
普通の…女の子……?髪は比較的長くーーいや、気になるのはそこじゃない。
<何、あれ?>
彼女…ハックの周りには半透明の画面が複数浮かび上がっていた。
「え…えっと…それ……なんですか?」
正直それが気になって、先へ進めそうにないので、勇気を出して聞いてみる。
[……ステアボードSY-245型…]
数ある画面のうちの一つに、四角いロボットのテキストが浮かび上がる。このロボットが、キーボードに書かれた言葉を読み上げているのだ。
<!?…ま、まさかそんな答えが返ってくるとは……想定外>
「それって……」
「しつこい男は、嫌われるっすよ!」
ヒューレンに正論を言われる。
<でも、男ならロマンを感じるのが普通!だから…仕方ない!俺は悪くない!!>
「フハハハっ気に入ったぞ!」
返り血も一通り拭き終わったエデッセが、こちらに再び笑顔を向けた。
ーー返り血のおかげで気付かなかったが、大きな古傷目の当たりに残っていた。しかし、一転エデッセは優しそうな笑みをこちらに浮かべていたのだった。
<悪い人達じゃ無いんだろうな…助けてくれたし!>
ヘルは、戦って勝てそうにも、逃げれそうにも……はたまた、逃げる気もないので、ひとまず信用することにしたのだった。
「立ち話もなんですし、移動しながら話しましょう!」
エレックが発言する。に、しても、賑やかになったなぁ。
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コツッコツッ
「ーーで、ここに来たっすよ。」
エレックの提案でヘル達は、ここまでの経緯を伝えていた。もちろん、ヘルは言葉に詰まって、何も言えなかった。そこで、ヒューレンが変わってくれたのだ。
<ありがとう!ヒューレン!!>
「なるほどな…わしの能力強化や、エレックの放電は、"能力"によるものか……」
<エデッセさんが能力使ってたのは知ってたけど、エレックさんも能力使いとは!?怖ーい。>
[……能力を使用できる人物は僅か……力が大きすぎると……能力に…飲み込まれる…]
「「「!!?」」」
ここに来て初めて、ハックが口を開く、彼女の口から吐き出された言葉は……正確には、画面の中のロボットから吐き出された言葉は、ヘル達に動揺を生んだのだった。
「え、どう言うことです…か」
エレックが、怯えた声を出す。無理はない、実際、ヘルの足は子鹿のように震えている。
ーーそれでいいのかヘルよ。
[……あなた達は…大丈夫……]
「フハハハっ、何だっ、心配したぞ!」
「え、ええ。」
ハックの言葉とエデッセの大きな笑い声で、不安は吹き飛ばされた。
「あ、そうだ!どうして、エデッセさん達はここに来たっすか?」
「話せば長くなるのじゃが、ーーー」
それから、エデッセさん達の、経緯を教えてもらった。
簡潔にまとめると、
謎の男に殺された。
死んだら地獄だった。
知能のほとんどなさそうな
鬼に名前をつけられた。
3人が出会った。 協力しよう!
地下のダンジョンの
ようなものを見つけた。
行ってみよう!
って感じでした。
「なるほど、そうだったんすね。」
[………これ…]
一通り話し終えたところで、ハックから、紙をもらう。
「この通路だか、ダンジョンの地図じゃ。凄いじゃろ!ハックが作ったんじゃ。」
確かに、すごい。ダンジョンのゴールや道のりだけでなく、トラップのある場所や、敵の多い場所まで載っている。
「でも、どうやってこれを……?」
「ハックさんは、すごいコンピュータスキルを持ってるんです。このダンジョンの情報は全て、ハッキングしてあるそうですよ。」
<何この子!?怖い!!!>
「見てくださいっす!もうすぐ着くっすね!意外と楽勝でしたっす。」
<ヒューレンよ、フラグを作るなフラグを、>
「ほおー、なかなかに広いのお!」
辿り着いたのは大きな部屋だった。ここを越えればゴールまで一直線である。
[…感知されました……]
「「え……?」」
[……走って!]ドォーン
後ろから出てきたのは巨大な鬼。エデッセを凌ぐほどの巨大と、4本の腕はまさに"鬼"。斧や剣を所持しており見るからに、強さは今までの鬼の比ではない。
<ほーら言った!?フラグ回収!!!>
鬼の出現と同時に、周りの扉が、シャッターのように閉ざされていく。
<エデッセさん達3人は、前方にいるから、なんとか逃げられそうだけど、後方にいる俺とヒューレンは間に合わない!……なら、最後ぐらいかっこよく…>
「……逃げろ!ヒューレン!!」
「今逃げてるっすよ?」
<……そう言うことじゃないんだよなぁ>
「『磁界・反発』!!」
磁力の反発する力を利用し、ヒューレンを外へ逃す。その反動で、ヘルは後ろに大きく吹っ飛ばされれたのだった。
「うがぁぁああ"」
部屋に響く、鬼の叫び声。ヘルはその声に負けないように、大きく叫ぶのだった。
「かかってこいヤァ!!!」
『ヒューレンの技紹介』
『磁界・反発』
支配する磁界内のあらかじめ磁力を、持たせておいたもの同士を反発させる技っすよ。いやー助かったっす。
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今回から、急に人数が増えましたね。出来るだけ口調を変えたり、説明をつけたりして、誰が話しているか区別するつもりですが、誰か話してんのかわからない!と、言うようなことがあった際は、コメントで教えていただけると幸いです。
あと、ゴールデンウィークの間、やることが無いので小説を投稿できるペースが少し上がると思います。
え?お前受験生だろって?
ナニイッテルノカワカラナーイ
それではまた磁界!ではなく次回!!