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第三条 能力

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドクンッ ハァハァ

「俺はまた…死んだ…のか?」

「はい!すげーグロかったっす!」

「グロい……?どんな死に方だったんだ?」

ヘルは何か有益な情報が掴めるかと思い恐る恐る聞いてみる。

「舌を滅多刺しにされてましたっす!!」 

ヘルは人の死因を笑顔で答えるヒューレンに軽蔑の目を向けたあと、洞窟で見つけた紙を思い出した。

「なあ、ヒューレン、この紙を見て欲しーーーー」

<いや、頭お花畑のヒューレンに聞いても時間の無駄だし質問を変えるか。>

「えっと…等舌地獄に数と関係がある物ってなんかあるか?」

<紙には数字が書いてあったし、数と関係があると思うんだけど>

「え、数っすか?数だと…死亡回数計測所があるっす!」

ヘルの頭上に疑問符が浮かぶ。

「死亡回数…計測所?」

「そうっす、何年何十年も地獄にいると自分がなんで死んだのか、何回死んだのかすら分からなくなることがあるっす。だから、この死亡回数計測所が作られたんすよ!」

「その…死亡回数計測所って近いのか?」

「はい!30分くらいで着くと思うっす!でもヘルさんはまだ2回しか死んでないっす。だからわざわざ行く必要はないと思うっすよ。」

「2回か…」

ヘルは過去の死に方を思い出した。

<1回目は隕石、2回目は落下死…他には、舌も刺されたな。ん?なんで2回って言ったんだ?3回じゃ?>

「なあ、ヒューレン。俺の死に方を覚えているか?」

「もう忘れちゃったんすか!ヘルさんはおっちょこちょいっすねぇ!ヘルさんは落下で死んだのと舌を刺されて死んでたっすよ。」

「!!!」

<やっぱりだ…1回目の死に方をカウントしてない!あくまで地獄での死亡回数しか数えないのなら…あの紙の内容と辻褄が合う!正しい死亡回数が2、3、4と増えれば地獄での死亡回数は1、2、3となるからな…考えすぎかもしれないけど…やってみる価値はある!!!>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガダッ 僅かな希望を胸に死亡回数計測所へ向かうヘル達であったが、地獄の道のりは想像以上に険しかった。

「ハァハァ まだつかないのか…?」

あれから20分程歩き続け他のだが、ヘルはもうすでに汗だくになっていた。と、言うのも、道が平坦では無い地獄では歩くだけでも余計に体力を消耗してしまう。さらに、数年間引きこもりであったヘルには体力が圧倒的に足りなかったのである!

「もうすぐ着くと思うっすよ!」

一方ヒューレンは顔色ひとつ変わってない。自分より年下の女の子に体力で劣っていたことに恥ずかしさを感じながらも

「少し…休憩に…しませんか?」

と、言うしか無い始末であった。

「何言ってんすか?まだ歩き始めたばっかりじゃないすか?」

「……体力おばけは…お前だけ…なんだよ?……」ボソッ

「おばけじゃなくて

鬼っすけどね!」ドヤァ

何故かドヤ顔である。

「なんで…ドヤ顔なん…だよ!?」

「いいから行くっすよ!」

「……はい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜十分後〜

「ハァハァ やっと着いたぁー」

かれこれ三十分間歩き、たどり着いた死亡回数計測所は、地獄には似つかわしくない近代的な建物であった。

<死亡回数計測所って言うくらいだからもっと禍々しいものかなと思ったんだけど…>

「どうしたっすか?」

「いや、ちょっと考え事してただけだけど………」

ヘルの頭に些細な疑問が浮かんだ。

「そういえば、試練の達成方法って旗を取る事じゃなかったのか?」

「ああ、旗は一枚じゃ

無いっすよ。

全部で十枚くらいっす。」

「!?」

「あれ?言って無かったっすか?」

「………」

大事な事をすっ飛ばしたヒューレンに再び軽蔑の目を向けたあと等活地獄の平均クリアタイムを思い出した。

<何でこんなにクリアに時間かかるんだろうと思ってたけど、多分、初見殺しが多いからなんだろうな。言われてみればここに来るまでの間も旗みたいなのあった気がするし………>

「ヘルさん!ここまできたのに死亡回数計測所は見ていかないんですか?」

「よし、手分けして調べよう!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜数分後〜

簡潔にまとめると有益な情報は無かった。なぜなら、そもそも入れなかったからだ。順を追って説明すると、絶対に情報を手に入れるぞ!と、意気込んだのはいいものの、扉は開かなかった。鍵がかかっていたのだ。さらに、よく見ると(今日は定休日です。)と、書かれた紙が貼ってあった。

「………」

「………」

<地獄に定休日ってなんだよ!!!ホワイト企業じゃねーかァー、>

「残念っすね、ヘルさん。疲れてる様子っすから今日は試練やめとくっすか?」

「………」

<確かにここで逃げるのは簡単だし、何より楽だろうけど、ここで逃げたら何十年、何百年も逃げ続けることになってしまう気がする…それに、地獄の思い通りにはなりたく無いしな!>

「俺は、やるぞ!だめかもしれないけど地獄の言いなりにはなりたく無いんだ!」

「ヘルさんならそう言うと思ったっす!ここから1番近い旗はあそこっすよ。」

ヒューレンが指をさす。その先には今までとそう変わらない険しい道のりと強くたなびく旗があった。

「頑張ってくださいっす!」

「ああ、頑張るよ。でもあんまり期待はしないでね!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

旗に向かい続けるヘルであったが、不気味な予感を感じていた。具体的には、この先の未来を左右する大事な分岐点に立たされている様な気持ちだった。

<"見えるに旗の対角線"って事は、真っ直ぐ旗に進んで行けば何かあるかもと思ったんだけど…>

おかしい。ヘルはこの数分間、鬼に一回も遭遇していなかった。それどころか鬼の姿すら見えていない。一回引き返した方がいいかな、なんて考えたところで、背後から音が聞こえた。

「ここに来たって事はノア様の手紙を読んだって事でいいんだよね。…驚いたなぁ………いやはや、運命とやらは実に面白い者だね。」

背後から話しかけてきたのは謎に包まれた人物、否、謎と書皮に包まれた本だった。

「え、えっと…」

「あ、自己紹介がまだだったね!!オイラはグリモワール、ノア様から命を授かれた、世界で一つだけの魔本だよ。」

「………」

「こっちが自己紹介したんだから、そっちもするのが礼儀じゃないかな?」

「………え、えっと、俺の名前は山口かけ…ヘルです。」

久しぶりの他人との会話に人見知りが隠しきれない。

<いや、まあ人じゃないんだけどね。>

しかし、ヒューレンとは初対面でも話すことができた。それは突然の死亡でそれどころじゃなかったからか、あるいは彼女の親しみやすい性格のおかげか、はたまた、その両方か。なんてくだらない事を考えている間にも気まずい時間は進み続けた。

<気、気まずい!前世でもっとコミュニケーション能力を磨いておくべきだった…>

こんな数十秒に及ぶ気まずい沈黙を先に破ったのは、魔本グリモワールだった。

「う、うん。引きこもりの君にしては頑張った方なのかもね…」

「わざわざ、それを言わなくても!いや、なんでそれを知っているんだ…?」 

「ふふふ、驚いたかな?」

あたりに響き渡る不気味な笑い声。突如として現れた謎の多い彼は魔本であるからに顔はない。でも、もし顔があるんだとしたら、それはそれは満足そうな顔をしてるに違いないだろう。

「僕の能力[鑑定]によるものだよ。実際に能力を見るのは、初めてかな?」

「の…能力…?」

「驚いた!…まさかあの娘は、そんなことも教えてなかったのか…」

ヘルはグリモワールの言葉に強く刺激を受ける。特に『能力』という単語に…

<能力?!能力って異能とか魔法とかそういう事だよね!>

駆は、前世の有り余った時間で多くのライトノベルを読んできた。もちろんその中には、異世界ものや、異能バトルものもある。そんな彼が、人智を超える力、『能力』を体験して、溢れ出る妄想を止める事は出来なかった。

<も、もしかしてだけど、ファイヤーボールとか、サンダーストームとか使えるって事だよね⁉︎やべぇーテンション上がってきたァーー>

「そ、それって魔法とか、使えるって事ですか?」キラキラ

……おや!?ヘルの様子が……!まるで人格が変わったかのように、声のトーンが上がり、早口になった。ついでに、目もキラキラしている。おめでとう!陰キャクソコミュ障は魔法クソオタクに進化した!

「え、えっと…魔法とも言えるかもしれないけど…」

案の定ちょっと引かれました。

「もしくは…異能!口から炎出したり、手から閃光出せたりできるって事ですか?」キラキラ

「う、うん。異能の方が…近いかもね…?」

訂正、かなり引かれてました。

「いいかい?能力っていうのは世界に一つずつしか存在しない、人智を超えた強大な力の事だよ。多くの人はこの力を使えずにいるはずなんだけど、ある一定の条件を満たすと、使えるようになるんだ。」

「…条件?」

「そう!例えば、愛しい人を失ったとか、自国を守るために罪なき人を大勢殺したとか、死なんて軽々凌駕する程の絶望を経験した先にあるものが能力だよ。」

「…………」

「……君は生前に一度だけ使ったことがあるみたいだね。」

「…え?」

言い忘れていましたが、出来る限り毎週土曜日に投稿し続ける予定です。……投稿できていない週があったら、なにか事情があると察してください。お願いします。

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